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2021年4月28日【イベント】

クルマに乗ったまま街中でETC決済、「ETCX」サービス開始

山田清志

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ETCソリューションズの中村英彦社長

 

ETCソリューションズは4月28日、駐車場や店舗など高速道路以外の施設でETC技術を活用して料金支払いなどができる会員登録制の新サービス「ETCX」を同日より開始すると発表した。これによって、現在利用しているETCカードを車載器に挿入するだけで、街中のETCX加盟店でクルマに乗ったまま決済できるようになる。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

2020年10月に3社で新会社を設立

 

「ETCは1997年に誕生し、2001年に全国の高速道路で利用されるようになった。その後国民のインフラといわれるまでに進化し、最近では高速道路でのETC利用率が93%を超えている。ETCは自動車に乗りながら、非接触でキャッシュレス決済をするツールで、この便利なETCを高速道路以外でも利用できないかということで、有志企業で検討してきた」

 

サービスの利用方法

 

ETCソリューションズの中村英彦社長は冒頭の挨拶でこう話し、2013年にプロジェクトが始まったという。実はこの年の6月に政府が「駐車場等、高速道路以外の施設でもETC等のITS技術が利用可能となる環境を整備し、利便性向上を図る」という方針を打ち出したのだ。

 

それを受けてのスタートだったわけだが、17年以降、ETC多目的利用サービスの本格的な事業化に向けて、駐車場やフェリー乗船場、ファストフードのドライブスルー店舗などで実証実験を積み上げてきた。同時に導入コストの安くて簡易なETCシステムを開発した。

 

そしてある程度実用化のメドが立った20年10月に、ソニーペイメントサービス、メイテツコム、沖電気工業(OKI)の3社が共同で「ETCソリューションズ」を設立。ETC多目的利用サービスを「ETCX」という名称で本格的にサービスを展開することになったという。

 

鈴鹿PA

 

ETCXは、ソニーペイメントサービスのスピーディかつ安全な決済システム、メイテツコムが有する安定した高いシステム構築・運営技術、OKIが持つ高度なETC周辺機器開発能力を活用するとともに、中日本高速道路(ETC情報の処理)、三菱プレシジョン(ETCX対応駐車場運営・管理)、オリエントコーポレーション(ETCコーポレートカード保有者向け立替払いサービス提供)と「ETC運営協議会」を組成し、協力してサービス提供を行う。

 

「6社が集まって、それぞれが持つ技術やノウハウを持ち寄ってやっと実現ができた。どこか1社が抜けてもできなかったプロジェクトだったと思う。また、キャッシュレス決済やクラウドの環境が整ってきたことも大きかった」と中村社長は説明する。

 

利用できるのは今のところ2カ所だけ

 

ETCXのサービスを利用するには、まずETCカードとクレジットカードを用いてETCXに会員登録する必要がある。それが済んだら、あとはそのETCカードを車載器に挿入するだけで、ETCX加盟店の施設でクルマに乗ったまま決済サービスを利用することができる。

 

ただ、民間への普及を目的としているため、高速道路で従来利用されている“ノンストップ走行”を前提にした仕組みではなく、“一旦停止”を前提と仕組みとなっている。その仕組みのおかげで、システムの低コスト化が実現できたそうだ。

 

伊豆中央道

 

「このETCXサービスは、代金支払いや精算時に現金、クレジットカードなどの受け渡しやスマートフォンの操作が一切不要で、顧客の利便性向上や事業者の精算処理の効率化に留まらず、接触機会の低減による感染症予防対策まで同時に実現することが可能なので、ウイズコロナ・アフターコロナの社会において非常に大きな役割を担っていくと考えている」と中村社長。

 

ただ、現段階で利用できるのが確定しているのは2カ所だけ。新名神高速道路の鈴鹿パーキングエリア(上り線)の「ピットストップSUZUKA」のドライブスルーと、静岡県内の伊豆中央道と修善寺道路の各料金所だ。後者については7月1日からで、ETCXを使えば使うほど利用料金が得になる、新しい割引制度の導入を予定しているそうだ。

 

「3年間で利用可能な場所を100カ所、ETCX登録会員10万人を達成していきたい。まずはETCXを知ってもらい、みなさまに安全で便利な非接触、キャッシュレス決済を体験していただきたい。将来的には、マンションや工場への入退出管理、ロードプライシングなどいろいろな可能性を秘めていると思う」と中村社長は話す。

 

しかし、ETCXを普及させて行くには、もっと積極的な展開が必要だろう。3年間で100カ所では、使えるところが少ないということで会員にそっぽを向かれ、会員が思うように増えない可能性もある。やはり最初のうちは、認知度を上げるために、これはと思う場所には積極的にETCソリューションズ自らが設置していくことが重要だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。