ETCソリューションズの中村英彦社長
ETCソリューションズは4月28日、駐車場や店舗など高速道路以外の施設でETC技術を活用して料金支払いなどができる会員登録制の新サービス「ETCX」を同日より開始すると発表した。これによって、現在利用しているETCカードを車載器に挿入するだけで、街中のETCX加盟店でクルマに乗ったまま決済できるようになる。(経済ジャーナリスト・山田清志)
2020年10月に3社で新会社を設立
「ETCは1997年に誕生し、2001年に全国の高速道路で利用されるようになった。その後国民のインフラといわれるまでに進化し、最近では高速道路でのETC利用率が93%を超えている。ETCは自動車に乗りながら、非接触でキャッシュレス決済をするツールで、この便利なETCを高速道路以外でも利用できないかということで、有志企業で検討してきた」
サービスの利用方法
ETCソリューションズの中村英彦社長は冒頭の挨拶でこう話し、2013年にプロジェクトが始まったという。実はこの年の6月に政府が「駐車場等、高速道路以外の施設でもETC等のITS技術が利用可能となる環境を整備し、利便性向上を図る」という方針を打ち出したのだ。
それを受けてのスタートだったわけだが、17年以降、ETC多目的利用サービスの本格的な事業化に向けて、駐車場やフェリー乗船場、ファストフードのドライブスルー店舗などで実証実験を積み上げてきた。同時に導入コストの安くて簡易なETCシステムを開発した。
そしてある程度実用化のメドが立った20年10月に、ソニーペイメントサービス、メイテツコム、沖電気工業(OKI)の3社が共同で「ETCソリューションズ」を設立。ETC多目的利用サービスを「ETCX」という名称で本格的にサービスを展開することになったという。
鈴鹿PA
ETCXは、ソニーペイメントサービスのスピーディかつ安全な決済システム、メイテツコムが有する安定した高いシステム構築・運営技術、OKIが持つ高度なETC周辺機器開発能力を活用するとともに、中日本高速道路(ETC情報の処理)、三菱プレシジョン(ETCX対応駐車場運営・管理)、オリエントコーポレーション(ETCコーポレートカード保有者向け立替払いサービス提供)と「ETC運営協議会」を組成し、協力してサービス提供を行う。
「6社が集まって、それぞれが持つ技術やノウハウを持ち寄ってやっと実現ができた。どこか1社が抜けてもできなかったプロジェクトだったと思う。また、キャッシュレス決済やクラウドの環境が整ってきたことも大きかった」と中村社長は説明する。
利用できるのは今のところ2カ所だけ
ETCXのサービスを利用するには、まずETCカードとクレジットカードを用いてETCXに会員登録する必要がある。それが済んだら、あとはそのETCカードを車載器に挿入するだけで、ETCX加盟店の施設でクルマに乗ったまま決済サービスを利用することができる。
ただ、民間への普及を目的としているため、高速道路で従来利用されている“ノンストップ走行”を前提にした仕組みではなく、“一旦停止”を前提と仕組みとなっている。その仕組みのおかげで、システムの低コスト化が実現できたそうだ。
伊豆中央道
「このETCXサービスは、代金支払いや精算時に現金、クレジットカードなどの受け渡しやスマートフォンの操作が一切不要で、顧客の利便性向上や事業者の精算処理の効率化に留まらず、接触機会の低減による感染症予防対策まで同時に実現することが可能なので、ウイズコロナ・アフターコロナの社会において非常に大きな役割を担っていくと考えている」と中村社長。
ただ、現段階で利用できるのが確定しているのは2カ所だけ。新名神高速道路の鈴鹿パーキングエリア(上り線)の「ピットストップSUZUKA」のドライブスルーと、静岡県内の伊豆中央道と修善寺道路の各料金所だ。後者については7月1日からで、ETCXを使えば使うほど利用料金が得になる、新しい割引制度の導入を予定しているそうだ。
「3年間で利用可能な場所を100カ所、ETCX登録会員10万人を達成していきたい。まずはETCXを知ってもらい、みなさまに安全で便利な非接触、キャッシュレス決済を体験していただきたい。将来的には、マンションや工場への入退出管理、ロードプライシングなどいろいろな可能性を秘めていると思う」と中村社長は話す。
しかし、ETCXを普及させて行くには、もっと積極的な展開が必要だろう。3年間で100カ所では、使えるところが少ないということで会員にそっぽを向かれ、会員が思うように増えない可能性もある。やはり最初のうちは、認知度を上げるために、これはと思う場所には積極的にETCソリューションズ自らが設置していくことが重要だ。