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2024年6月12日【IoT】

エネルギーの見える化も100年に一度の変革へ

坂上 賢治

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国際無線通信規格Wi-SUNが採用された「IoTルート」用無線標準規格が発効

 

NICT( エヌアイシーティー )を筆頭とする日本国内の企業・団体らが6月12日、電力スマートメーターシステムを利用した系統電力・ガス・水道量などの共同検針を加速させる。

 

より具体的には、国立研究開発法人情報通信研究機構( NICT )、東芝、ルネサス エレクトロニクス( ルネサス )、ランディス&ギアジャパン( ランディス&ギア )、アイ・エス・ビー、沖電気工業の6者が、共同で電力スマートメーターシステムを利用し、ガス・水道メーター、特例計量器の一括検針を行うべくWi-SUN(ワイサン)enhanced(エンハンスド)HAN(ホームエリアネットワーク)規格の制定で正式合意した。

 

上記のWi-SUNとは、Wireless Smart Utility Network(ワイヤレススマートユーティリティネットワーク)の略で全世界250社超の法人が参画する国際無線標準規格化団体。

 

NICT・東芝・ルネサスはWi-SUNの創設メンバーで、これにランディス&ギアを加えた4者はWi-SUNのボード/理事会メンバーでもある。現在、全世界規模で同規格を推進するWi-SUNアライアンス下では、1億台以上の電力スマートメーター、家電、エネルギー管理システム製品が既に同規格を導入。既にWi-SUNを利用する無線機・製品に関してメーカー間の相互接続性の認証を進めている。

 

Wi-SUNは、日本国内に於いて特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯で使用され、2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと比べると通信速度こそ速くはないが、通信距離が長く障害物にも強いため繋がり易く、低消費電力などの利点がある。

 

 

そこで日本国内では、一般社団法人情報通信技術委員会( TTC )がホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10( 日本国内に於ける情報通信ネットワークの標準仕様 )を改定させて同通信規格を正式発効。

 

この規格発効により、Wi-SUNシステムを利活用したサービを拡大させると共に、日本国内に於ける電力スマートメーター、水道・ガスメーターや特例計量器などとの共同検針の実用化を推し進めていく。

 

主に日本国内では、逸早く電力スマートメーターとその他のエネルギー管理システムとの間を接続する「Bルート」用にWi-SUN通信が制定されており、このBルートに対応したWi-SUN HAN対応機器は、住宅やビル内に設置されたスマートメーターとして数千万台規模で導入が進む。

 

 

そもそも去る2014年頃から電力業界では、従来のアナログ方式のメーターからデジタル方式のメーターの置き換えが進んでいたのだが、水道・ガスメーターについては主に各事業者が独自の通信設備を用いて遠隔検針を行ったり、作業員が目視で1軒毎に検針を行ってきた。

 

それが投資効率および作業の効率性の観点から、電力スマートメーター経由で一括して検針しようとする方向に纏まりつつあり、2022年4月に始まった特定計量制度で計量法の検定を受けていないメーターでも、一定の基準を満たせば電力の取引等が行うことができるようになった。

 

併せて電力メーターの寿命については、法律で10年間と規定されていることから、事業用の高圧メーターの交換に続き、一般家庭向けの低圧メーターの交換も大きく進んでいる。

 

新たな新世代メーターは特例計量器と呼ばれ、EV充電システム、太陽光発電システム等にも利用できる。今後は、特例計量器、ガスメーター、水道メーターからの検針データを各住宅等に設置された電力スマートメーターシステムを経由して共同検針する通信ルート「IoTルート」が定義・運用されるようになる。

 

そこで、同ルートに於ける通信方式として、Wi-SUNアライアンスで標準化してきたWi-SUN enhanced HANシステムを採用することが適当であると経済産業省次世代スマートメーター制度検討会で2022年5月に取りまとめられ、Wi-SUNアライアンスでは、これを受け、「IoTルート」に適したWi-SUN enhanced HAN規格の制定がWi-SUN HANワーキンググループ(議長:NICT、テクニカルエディタ:東芝)で行われ、2024年2月に技術仕様、相互接続試験に必要となる仕様を含む正式な規格書をすべて発行した。

 

その後、上記の規格書を基に国内の標準規格化団体である一般社団法人情報通信技術委員会が制定するホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10を改定。2024年5月16日に正式に発効された。今後は、TTC JJ-300.10に準拠した無線端末を導入することで、水道・ガスメーターなどを活用した大規模共同検針がいよいよ可能となる見込みだ。

 

IoTルート対応のWi-SUN enhanced HANの特徴は以下の通り

 

  • ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末と電力スマートメーターが国際標準規格IEEE 802.15.4g(メーター、センサー、モニター等の各種機器間を接続するSUNのためIEEE/米国電気電子学会が制定したネットワーク)で制定された物理層(ネットワークの物理的な伝送、接続方式を規定したもの)、及びIEEE 802.15.4で制定されたMAC層(直接ネットワークで接続されている機器間の通信方式を規定したもの)用いて接続可能。
  • またはIPv6による通信も可能。従前から電力スマートメーターが導入されている通信認証規格によりセキュアに認証可能。
  • 「IoTルート」用のアプリケーションを搭載するための通信インターフェースを具備。
  • ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が通信するとき以外は電力を落としている通称「Sleeping device」であった場合も、接続するための通信手順が定義されている。
  • ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が屋外等にあっても接続できるよう1つの中継デバイス「Relay device」を介して中継できる機能を有する。

 

TTC JJ-300.10のドキュメントは以下PDFの通り
https://www.ttc.or.jp/application/files/2917/1616/4764/JJ-300.10v2.3.pdf

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。