国際無線通信規格Wi-SUNが採用された「IoTルート」用無線標準規格が発効
NICT( エヌアイシーティー )を筆頭とする日本国内の企業・団体らが6月12日、電力スマートメーターシステムを利用した系統電力・ガス・水道量などの共同検針を加速させる。
より具体的には、国立研究開発法人情報通信研究機構( NICT )、東芝、ルネサス エレクトロニクス( ルネサス )、ランディス&ギアジャパン( ランディス&ギア )、アイ・エス・ビー、沖電気工業の6者が、共同で電力スマートメーターシステムを利用し、ガス・水道メーター、特例計量器の一括検針を行うべくWi-SUN(ワイサン)enhanced(エンハンスド)HAN(ホームエリアネットワーク)規格の制定で正式合意した。
上記のWi-SUNとは、Wireless Smart Utility Network(ワイヤレススマートユーティリティネットワーク)の略で全世界250社超の法人が参画する国際無線標準規格化団体。
NICT・東芝・ルネサスはWi-SUNの創設メンバーで、これにランディス&ギアを加えた4者はWi-SUNのボード/理事会メンバーでもある。現在、全世界規模で同規格を推進するWi-SUNアライアンス下では、1億台以上の電力スマートメーター、家電、エネルギー管理システム製品が既に同規格を導入。既にWi-SUNを利用する無線機・製品に関してメーカー間の相互接続性の認証を進めている。
Wi-SUNは、日本国内に於いて特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯で使用され、2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと比べると通信速度こそ速くはないが、通信距離が長く障害物にも強いため繋がり易く、低消費電力などの利点がある。
そこで日本国内では、一般社団法人情報通信技術委員会( TTC )がホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10( 日本国内に於ける情報通信ネットワークの標準仕様 )を改定させて同通信規格を正式発効。
この規格発効により、Wi-SUNシステムを利活用したサービを拡大させると共に、日本国内に於ける電力スマートメーター、水道・ガスメーターや特例計量器などとの共同検針の実用化を推し進めていく。
主に日本国内では、逸早く電力スマートメーターとその他のエネルギー管理システムとの間を接続する「Bルート」用にWi-SUN通信が制定されており、このBルートに対応したWi-SUN HAN対応機器は、住宅やビル内に設置されたスマートメーターとして数千万台規模で導入が進む。
そもそも去る2014年頃から電力業界では、従来のアナログ方式のメーターからデジタル方式のメーターの置き換えが進んでいたのだが、水道・ガスメーターについては主に各事業者が独自の通信設備を用いて遠隔検針を行ったり、作業員が目視で1軒毎に検針を行ってきた。
それが投資効率および作業の効率性の観点から、電力スマートメーター経由で一括して検針しようとする方向に纏まりつつあり、2022年4月に始まった特定計量制度で計量法の検定を受けていないメーターでも、一定の基準を満たせば電力の取引等が行うことができるようになった。
併せて電力メーターの寿命については、法律で10年間と規定されていることから、事業用の高圧メーターの交換に続き、一般家庭向けの低圧メーターの交換も大きく進んでいる。
新たな新世代メーターは特例計量器と呼ばれ、EV充電システム、太陽光発電システム等にも利用できる。今後は、特例計量器、ガスメーター、水道メーターからの検針データを各住宅等に設置された電力スマートメーターシステムを経由して共同検針する通信ルート「IoTルート」が定義・運用されるようになる。
そこで、同ルートに於ける通信方式として、Wi-SUNアライアンスで標準化してきたWi-SUN enhanced HANシステムを採用することが適当であると経済産業省次世代スマートメーター制度検討会で2022年5月に取りまとめられ、Wi-SUNアライアンスでは、これを受け、「IoTルート」に適したWi-SUN enhanced HAN規格の制定がWi-SUN HANワーキンググループ(議長:NICT、テクニカルエディタ:東芝)で行われ、2024年2月に技術仕様、相互接続試験に必要となる仕様を含む正式な規格書をすべて発行した。
その後、上記の規格書を基に国内の標準規格化団体である一般社団法人情報通信技術委員会が制定するホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10を改定。2024年5月16日に正式に発効された。今後は、TTC JJ-300.10に準拠した無線端末を導入することで、水道・ガスメーターなどを活用した大規模共同検針がいよいよ可能となる見込みだ。
IoTルート対応のWi-SUN enhanced HANの特徴は以下の通り
- ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末と電力スマートメーターが国際標準規格IEEE 802.15.4g(メーター、センサー、モニター等の各種機器間を接続するSUNのためIEEE/米国電気電子学会が制定したネットワーク)で制定された物理層(ネットワークの物理的な伝送、接続方式を規定したもの)、及びIEEE 802.15.4で制定されたMAC層(直接ネットワークで接続されている機器間の通信方式を規定したもの)用いて接続可能。
- またはIPv6による通信も可能。従前から電力スマートメーターが導入されている通信認証規格によりセキュアに認証可能。
- 「IoTルート」用のアプリケーションを搭載するための通信インターフェースを具備。
- ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が通信するとき以外は電力を落としている通称「Sleeping device」であった場合も、接続するための通信手順が定義されている。
- ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が屋外等にあっても接続できるよう1つの中継デバイス「Relay device」を介して中継できる機能を有する。
TTC JJ-300.10のドキュメントは以下PDFの通り
https://www.ttc.or.jp/application/files/2917/1616/4764/JJ-300.10v2.3.pdf