eMPとの提携で、充電インフラの使い勝手向上を期待
脱炭素を推進するテック企業のエネチェンジ(ENECHANGE)は3月9日、EV(電気自動車)充電インフラ事業に関するメディアラウンドテーブルを東京都内で開き、利用環境向上に向けた取り組みを紹介した。(佃モビリティ総研・松下次男)
加えて国や東京都などの助成金を活用することにより、EV充電器の設置費用、月額費用、電気代負担ゼロが可能な「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を同日から始めた事も併せて発表した。
エネチェンジは「エネルギーの未来をつくる」をミッションに掲げ、デジタル技術で脱炭素社会を推進するテック企業。2015年の創業で、ルーツは英ケンブリッジの電力データ研究所にある。
EV充電事業については、同社は2027年までに最大300億円を投じ、国内で単独3万台のEV充電器設置を目指している。
こうした中、去る2月9日には電力系企業や自動車メーカーが出資する充電インフラサービス会社のイーモビリティパワー(eMP)と業務提携を結んだ事を発表。
これにより、自動車メーカー各社やeMPなどが発行する充電カードでエネチェンジのEV充電器が4月から利用可能になる。
「日本の充電インフラはわかりにくい」とユーザーの声
日本のEV充電インフラの利用環境について、田中喜之執行役員は現状、「複雑でわかりにくい」という声がユーザーから多く寄せられているという。
実際、わが国で充電インフラを利用する場合、テスラ車ユーザーとそれ以外に違いがあり、さらに自動車メーカー(OEM)や各社の充電カードへ入会して利用する方法。このほかにもアプリや入会せずに都度利用するなど様々な方式がある。
また、利用料金もバラバラで、OEMカード利用の場合では普通充電料金無料のケースも少なくない。
EV充電インフラの現状をみると、eMPネットワークの充電器が急速充電の95%以上(eMP/ゼンリン調べ)、普通充電器でも59%(同)の割合を占め、eMPに対応するカードを持てば、日本の大半の充電器が利用可能となっている。
これに対し、エネチェンジの充電器はこれまで専用アプリからの充電のみだったが、4月からeMPネットワーク利用可能な充電カード(自動車メーカーなど12社が発行)でも利用できることになったという。
そこでエネチェンジが独自に充電カード保有者の声をアンケート調査(インターネット方式、調査期間3月3日~3月7日、回答数414件)したところ、eMPとの提携で充電カードの「保有価値が高まる」との高感度が得られたと説明。
同調査によると、各社が発行しているEV充電カードを契約している人は約6割にのぼり、自宅に専用のEV充電器があるとの回答は70%、自宅にないとの回答は28・2%、残りは共有の充電器があるとの回答だった。
一方、現在契約されている充電カードの満足について「非常に満足している」との回答が25%だったが、eMPとの提携により充電カードの保有価値が「非常に高まる」と答えた割合が34%へと高まった。
マンション専用車室ゼロプランの提供を開始
この充電カードの保有価値が高まる要因は複数あるとし、主なものとしては「追加費用や手間なく利用できる充電器の割合が増えるから」(80・9%)、「3キロワット(kW)でなく、6kWの充電器利用できる(エネチェンジは海外で主流の6kWのみを開発する)」(61・7%)などが上位を占めた。
田中執行役員はツイッター上でも「充電カードの利便性向上に対する期待が多く寄せられている」と話す。
そんなエネチェンジが今回、新たに提供を開始した「マンション専用車室ゼロプラン」は国の補助金を活用して展開する。
EV普及に向けて充電インフラの整備が不可欠な中で、集合住宅への設置の進捗度が伸び悩んでいる。特に約7割の世帯が集合住宅に住む東京都など都市部で課題となっている。例えば現状の集合住宅への設置は1%未満しかない。
対して東京都は2030年に「都内の集合住宅にZEV(排ガスゼロ車)充電設備6万基設置」を目標に掲げ、2025年以降は新築マンションへの設置義務化を予定している。
こうした中、エネチェンジはこれまでの「マンション共用車室ゼロプラン」に加えて、専用車室ゼロプランを提供することにした。
同プランを活用すれば、機器費用、設置費用、月額費用、充電電気料金の負担がゼロになり、充電利用料金が1時間108円(3kW出力時)から利用できる上、都の助成金を活用すれば電気基本料金の負担もいらないと述べ、自社サービスの優位性を訴えた。