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2023年3月9日【エネルギー】

エネチェンジ EV充電インフラ事業の戦略公開

松下次男

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eMPとの提携で、充電インフラの使い勝手向上を期待

 

脱炭素を推進するテック企業のエネチェンジ(ENECHANGE)は3月9日、EV(電気自動車)充電インフラ事業に関するメディアラウンドテーブルを東京都内で開き、利用環境向上に向けた取り組みを紹介した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

加えて国や東京都などの助成金を活用することにより、EV充電器の設置費用、月額費用、電気代負担ゼロが可能な「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を同日から始めた事も併せて発表した。

 

エネチェンジは「エネルギーの未来をつくる」をミッションに掲げ、デジタル技術で脱炭素社会を推進するテック企業。2015年の創業で、ルーツは英ケンブリッジの電力データ研究所にある。

 

EV充電事業については、同社は2027年までに最大300億円を投じ、国内で単独3万台のEV充電器設置を目指している。

 

こうした中、去る2月9日には電力系企業や自動車メーカーが出資する充電インフラサービス会社のイーモビリティパワー(eMP)と業務提携を結んだ事を発表。

 

これにより、自動車メーカー各社やeMPなどが発行する充電カードでエネチェンジのEV充電器が4月から利用可能になる。

 

 

「日本の充電インフラはわかりにくい」とユーザーの声

 

日本のEV充電インフラの利用環境について、田中喜之執行役員は現状、「複雑でわかりにくい」という声がユーザーから多く寄せられているという。

 

実際、わが国で充電インフラを利用する場合、テスラ車ユーザーとそれ以外に違いがあり、さらに自動車メーカー(OEM)や各社の充電カードへ入会して利用する方法。このほかにもアプリや入会せずに都度利用するなど様々な方式がある。

 

また、利用料金もバラバラで、OEMカード利用の場合では普通充電料金無料のケースも少なくない。

 

EV充電インフラの現状をみると、eMPネットワークの充電器が急速充電の95%以上(eMP/ゼンリン調べ)、普通充電器でも59%(同)の割合を占め、eMPに対応するカードを持てば、日本の大半の充電器が利用可能となっている。

 

これに対し、エネチェンジの充電器はこれまで専用アプリからの充電のみだったが、4月からeMPネットワーク利用可能な充電カード(自動車メーカーなど12社が発行)でも利用できることになったという。

 

 

そこでエネチェンジが独自に充電カード保有者の声をアンケート調査(インターネット方式、調査期間3月3日~3月7日、回答数414件)したところ、eMPとの提携で充電カードの「保有価値が高まる」との高感度が得られたと説明。

 

同調査によると、各社が発行しているEV充電カードを契約している人は約6割にのぼり、自宅に専用のEV充電器があるとの回答は70%、自宅にないとの回答は28・2%、残りは共有の充電器があるとの回答だった。

 

一方、現在契約されている充電カードの満足について「非常に満足している」との回答が25%だったが、eMPとの提携により充電カードの保有価値が「非常に高まる」と答えた割合が34%へと高まった。

 

 

マンション専用車室ゼロプランの提供を開始

 

この充電カードの保有価値が高まる要因は複数あるとし、主なものとしては「追加費用や手間なく利用できる充電器の割合が増えるから」(80・9%)、「3キロワット(kW)でなく、6kWの充電器利用できる(エネチェンジは海外で主流の6kWのみを開発する)」(61・7%)などが上位を占めた。

 

田中執行役員はツイッター上でも「充電カードの利便性向上に対する期待が多く寄せられている」と話す。

 

そんなエネチェンジが今回、新たに提供を開始した「マンション専用車室ゼロプラン」は国の補助金を活用して展開する。

 

 

EV普及に向けて充電インフラの整備が不可欠な中で、集合住宅への設置の進捗度が伸び悩んでいる。特に約7割の世帯が集合住宅に住む東京都など都市部で課題となっている。例えば現状の集合住宅への設置は1%未満しかない。

 

対して東京都は2030年に「都内の集合住宅にZEV(排ガスゼロ車)充電設備6万基設置」を目標に掲げ、2025年以降は新築マンションへの設置義務化を予定している。

 

こうした中、エネチェンジはこれまでの「マンション共用車室ゼロプラン」に加えて、専用車室ゼロプランを提供することにした。

 

同プランを活用すれば、機器費用、設置費用、月額費用、充電電気料金の負担がゼロになり、充電利用料金が1時間108円(3kW出力時)から利用できる上、都の助成金を活用すれば電気基本料金の負担もいらないと述べ、自社サービスの優位性を訴えた。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。