ENEOSとPreferred Networks(以下「PFN」)は12月2日、石油精製・石油化学プラント(以下「プラント」)を自動運転するAIシステムを共同で開発し、今回、ENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置にて2日間にわたる自動運転に成功したことを発表した。
従来のプラント運転においては、運転員が24時間体制で運転監視および操作判断を行っているが、昨今、運転ノウハウを有する熟練運転員の高齢化に伴い、今後人材不足が懸念されている。その対応策として、全国で製油所を運営するENEOSとAI技術を有するPFNは、2019年に戦略的協業体制を構築し、共同で高度なプラント運転を自動化するAIシステムの開発に取り組んできた。
プラント自動運転AIシステムは、過去の運転データやシミュレーターデータから複数のセンサー値とバルブ操作間の複雑な相関関係を学習することで、長年の経験に基づいた運転ノウハウであるセンサー値の予測とバルブ操作判断の自動化を可能にした。
今回のブタジエン抽出装置では、AIシステムによってプラント内の温度、圧力、流量および製品性状などの25個の運転重要因子の常時監視と12個のバルブ同時操作をおこない、原料処理量の変更などに伴う装置変動を安定化させ、2日間にわたる連続自動運転に成功した。AI技術を用いた実際のプラントでの自動運転は国内初(ENEOS調べ)の取り組みとなった。
なお、当該システムの開発においては、経済産業省が実施する令和2年度補正予算「産業保安高度化推進事業費補助金」などを活用している。
2社は、本開発では、実運用に向けて今後ともブタジエン抽出装置での試験運転を重ね、人の技量に左右されないプラント安定運転を確立したうえで、常圧蒸留装置などの主要プラントおよび他製油所への展開を図る。また、生産効率化・省エネ運転に貢献する新たなプラント自動運転AIモデルの導入も目指すとしている。