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2024年9月19日【イベント】

蘭・AMG、欧州初のリチウム精錬所の稼働開始へ

坂上 賢治

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オランダのアドバンスト・メタラージカル・グループ( AMG/AMG Critical Materials NV )は9月18日( オランダ・アムステルダム発 )、ドイツのザクセン=アンハルト州ビッターフェルト=ヴォルフェンに於いて水酸化リチウム精錬所の開設式を執り行った。

 

AMG傘下のドイツ子会社AMG Lithium GmbH ( フランクフルト ) が2019年に、ザクセン=アンハルト投資銀行からの助成金を得て水酸化リチウムの精練施設の基本設計に着手。完成後のリチウムの精練事業そのものについてはAMG Lithium BVが、同施設に於いてブラジルから輸入した堆積岩から、車載蓄電池向けの水酸化リチウムの生産に取り組む。

 

ちなみに同拠点建設にあたるAMG側の投資額は1億4,000万ユーロ。このうちの550万ユーロは地域経済開発プログラムから拠出され、当地に於いて新たに80人の雇用が創出された。また同拠点で精練された水酸化リチウムの最初の行き先は、ハンガリーとポーランドのカソード並びにバッテリーセルメーカーへ納入される見込み。

 

施設に設けられた水酸化リチウムの精練モジュール1基あたりの年間生産能力は2万トン、同精錬所には5基のモジュールが備え付けられており、これらがフル生産に入るとトータル10万トン・約250万台分の電気自動車(EV)へバッテリーを供給できる規模がある。なおAMGによると現段階で、来たる2030年までに車載蓄電池向けの水酸化リチウムの年間精練量を最大規模まで拡大させることを視野に据えているという。

 

一方、直近の欧州市場に於いてニーズ縮小しつつある車載リチウム蓄電池の総需要予測は、2030年に70万トンになると予測されており、先の通りAMGによるリチウムの潜在生産量10万トン(5つのモジュールすべてを想定)は、2030年時の欧州に於ける14%の市場シェアに相当する。

 

AMG NVの取締役会長兼CEOであるハインツ・シンメルブッシュ博士は、「当社は、この精錬所を介して欧州の自動車産業にとって、欠くことのできない水酸化リチウムの供給確保で大きな役割を果たすことになります。今後は、当地でリチウムのバリューチェーンを確立することで、欧州産業に於ける重要電池の原材料に関わる独立性を高めることになるでしょう」と述べた。

 

またAMG Lithium GmbHでマネージングディレクターを務めるステファン・シェラー博士は、「我々AMGは、更なる未来を見据えて、業界の主要企業と緊密に協力して、次世代の硫黄系全固体電池に於いても、最先端の技術と材料の開発に取り組んでいます。

 

一方で今回、生産化に着手した水酸化リチウムは、現行のEVバッテリーの正極材料の製造にとって極めて重要な原材料であり、来たる2030年に至るモビリティ市場の炭素中立への道筋を示すものとなります。我々は同精錬所から欧州へ向けて、純欧州製リチウムの供給を拡大させていきます」と語った。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。