オランダのアドバンスト・メタラージカル・グループ( AMG/AMG Critical Materials NV )は9月18日( オランダ・アムステルダム発 )、ドイツのザクセン=アンハルト州ビッターフェルト=ヴォルフェンに於いて水酸化リチウム精錬所の開設式を執り行った。
AMG傘下のドイツ子会社AMG Lithium GmbH ( フランクフルト ) が2019年に、ザクセン=アンハルト投資銀行からの助成金を得て水酸化リチウムの精練施設の基本設計に着手。完成後のリチウムの精練事業そのものについてはAMG Lithium BVが、同施設に於いてブラジルから輸入した堆積岩から、車載蓄電池向けの水酸化リチウムの生産に取り組む。
ちなみに同拠点建設にあたるAMG側の投資額は1億4,000万ユーロ。このうちの550万ユーロは地域経済開発プログラムから拠出され、当地に於いて新たに80人の雇用が創出された。また同拠点で精練された水酸化リチウムの最初の行き先は、ハンガリーとポーランドのカソード並びにバッテリーセルメーカーへ納入される見込み。
施設に設けられた水酸化リチウムの精練モジュール1基あたりの年間生産能力は2万トン、同精錬所には5基のモジュールが備え付けられており、これらがフル生産に入るとトータル10万トン・約250万台分の電気自動車(EV)へバッテリーを供給できる規模がある。なおAMGによると現段階で、来たる2030年までに車載蓄電池向けの水酸化リチウムの年間精練量を最大規模まで拡大させることを視野に据えているという。
一方、直近の欧州市場に於いてニーズ縮小しつつある車載リチウム蓄電池の総需要予測は、2030年に70万トンになると予測されており、先の通りAMGによるリチウムの潜在生産量10万トン(5つのモジュールすべてを想定)は、2030年時の欧州に於ける14%の市場シェアに相当する。
AMG NVの取締役会長兼CEOであるハインツ・シンメルブッシュ博士は、「当社は、この精錬所を介して欧州の自動車産業にとって、欠くことのできない水酸化リチウムの供給確保で大きな役割を果たすことになります。今後は、当地でリチウムのバリューチェーンを確立することで、欧州産業に於ける重要電池の原材料に関わる独立性を高めることになるでしょう」と述べた。
またAMG Lithium GmbHでマネージングディレクターを務めるステファン・シェラー博士は、「我々AMGは、更なる未来を見据えて、業界の主要企業と緊密に協力して、次世代の硫黄系全固体電池に於いても、最先端の技術と材料の開発に取り組んでいます。
一方で今回、生産化に着手した水酸化リチウムは、現行のEVバッテリーの正極材料の製造にとって極めて重要な原材料であり、来たる2030年に至るモビリティ市場の炭素中立への道筋を示すものとなります。我々は同精錬所から欧州へ向けて、純欧州製リチウムの供給を拡大させていきます」と語った。