出発式の模様。左から東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻の大崎博之専攻長(大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授を兼担)。東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 藤本博志教授(大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授を兼担)。太田和美柏市長。国土交通省関東地方整備局千葉国道事務所の藤井和久所長。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志・清水修研究室、ブリヂストン、日本精工、ローム、東洋電機製造、小野測器、デンソー、三井不動産、SWCC、カーメイト、国立大学法人千葉大学の11者は10月3日、柏の葉スマートシティ内にて、日本初の「公道における走行中給電実証実験」を開始した。
この走行中給電システムの研究については、東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室を中核に2018年より取り組んできたが今回、東京大学、柏市、その他関係機関と柏ITS推進協議会の枠組みによる「電気自動車への走行中給電技術開発の取り組み」で、本格的な走行中給電の実証がいよいよ行われることになった。
走行中給電公道実証実験車のハイエースとRAV4(車底に受電コイルが設置されている)。
同実証のポイントは以下の3つ
(1)様々な車両に使える走行中給電システム
様々な車両のあらゆる状態に対応するためには適切に電力をコントロールすることが必要になるが、当研究グループでは、電力を適切にコントロールすることで電気自動車にもプラグインハイブリッド車にも使用できる走行中給電システムを実現した。
(2)標準化につながる走行中給電システム
送電コイルに常に通電をすると、送電コイルの上に車両がない時には無駄なエネルギーを使うことになる。そこで、この課題を解決するために研究グループでは、待機電力を極力小さくしながら車両検知を短時間で行う、新しい車両検知システムを開発。同システムを公道で検証することにより、走行中給電システムの標準化に貢献する。
(3)高耐久性プレキャストコイル
安全に使用するためには路面として十分な耐久性を持ちながらも送電が可能なコイルの開発が必要となる。研究グループでは、コイルと路面を一体化したプレキャストコイルが公道実証実験に耐えうる耐久性の検証を行う。
実証実験車両の走行中給電の受電・送電構造
発表の概要は以下の通り
東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志教授、清水修准教授らの研究グループ(以下、東大グループ)は、2017年にJST未来社会創造事業に於いて「電気自動車への直接給電が拓く未来社会」として採択を受けて、走行中給電システムの研究開発を進めてきた。
現在、同研究はブリヂストン(素材開発)、日本精工(駆動システム)、ローム(SiCパワーモジュール)、東洋電機製造(ドライブ技術)、小野測器(走行環境の評価)、デンソー(送受電システム)、三井不動産(実証環境の整備)、SWCC(コイル開発)、カーメイト(給電状況の可視化)、そして国立大学法人千葉大学との共同研究となっている。
今回の実証実験では、研究グループが研究・開発したシステムや技術を導入。また本実証実験は公道で行うため、走行中給電システムを搭載した上で、ナンバー取得をした車両での実験を行う。
具体的には、実験で使用する送電コイルは東大グループが設計を行い、10秒充電することで一般的な電気自動車が1km走行することが可能となる仕様としている。
対して今回の実証の舞台となる柏の葉キャンパス駅を中心とした地域は、公・民・学連携により「柏の葉国際キャンパスタウン構想」に基づく先進的なまちづくりが進められている。
またスマートシティを目指した様々な取り組みも実施されており、2019年には「国土交通省スマートシティモデル事業(先行モデルプロジェクト)」の選定を受けて「スマートシティ実行計画」を策定し、新技術や官民データを活用しつつ、都市・地域課題の解消に取り組んでいる。
その一環として、2023年6月には、柏市、東京大学、その他関係機関と「柏ITS推進協議会」の枠組みで実施している電気自動車への走行中給電技術の実証実験の取り組みが、国土交通省が公募する「道路に関する新たな取り組みの現地実証実験(社会実験)」として採択された。
これを踏まえ2023年10月から2025年3月まで、柏の葉キャンパス駅西口至近の市道にて日本初の公道上における電気自動車への走行中給電技術の実証および社会的受容性の確認を実施する。
同研究グループによると同社会実験により、道路政策ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」にも掲げられた、低炭素道路交通システムの実現による地球温暖化の進行抑制に向けた大きな貢献が果たせるものとしている。
最後に今後の展望では、まず2023年10月から2025年3月まで公道での実証実験が継続された後、実証実験の結果を反映。更に発展させた走行中給電システムの開発を推進させて、最終的には走行中給電の社会実装を視野にその早期実現を目指す。