NTTドコモとAGCは提携し、景観を損ねずに既存窓ガラスの室内側から貼り付けができる、世界初(※1)となる電波送受信が可能なガラスアンテナを共同開発した。
両社は、本ガラスアンテナを活用し、2019年上期から携帯電話のサービスエリア拡充を図る。
移動通信のトラヒック量は増大し続けており、安定した高速通信に向けての対策が必要となっている。
高トラヒックエリアでは、スモールセル基地局(※2)設置によるトラヒックの分散が重要で、スモールセル基地局用のアンテナ増設が必要。現在のスモールセルアンテナは、主に建物の屋上や中低層階の壁面に設置されているが、屋上や壁面は設置できる場所が限定されること、街の景観を損ねることから、設置が困難な場合が多いと云う。
そのため、建物内にアンテナを設置することで建物内から屋外をエリア化することを検討。
建物内へのアンテナ設置では、室内の意匠性を損ねる、電波が窓ガラスを通過する際に減衰するといった課題があったが、これを解決するために、AGCが保有する既存窓の表面にガラスを貼り付けるアトッチ工法(※3)を活用する室内の窓面に設置可能な新たなアンテナの開発を進めてきた。
今回開発されたガラスアンテナは、透明・透視性のある導電材料とガラスを組み合わせ、目立ちにくく、景観や室内デザインを損なわない他、新開発のGlass Interface Layer(グラス インターフェイス レイヤー/※4)の効果により、窓ガラスを通過した際の電波の減衰・反射を抑えるという特長を持っている。
両社は2019年上期から、現在主流のLTEの周波数帯の基地局へ同ガラスアンテナを展開していく予定。さらに、5Gに対応したガラスアンテナの開発も検討していくとしている。
※1:ドコモ、AGC調べ。
※2:主に高トラヒックエリアに、通常基地局のエリア内に設置する、小さなサービスエリアを構築する基地局。
※3:既存窓に後からガラスを貼り付けることで、省エネ・防音などの機能を付加することができる工法。
※4:ガラスに近づくことによってガラスアンテナの性能が変わる影響を抑え、アンテナ本来の持つ性能を引き出す技術。
[ガラスアンテナの概要]
<ガラスアンテナの特長>
・既存窓に透明なガラスアンテナを設置するため、街の景観を損なわない。
・建物の内側から施工するため、足場設置や土台工事が不要。
・自在な設置箇所とビーム形成技術により、柔軟なエリア設計を可能とするスモールセル向けガラスアンテナ。
<ガラスアンテナ設置基地局のスペック>
■ガラスアンテナ
– サイズ:700mm×210mm
– 重量:1.9kg
※アンテナガラスのみのサイズ、重量。ケーブル、既存ガラスへの取り付け部材、付属品は除く。記載された仕様は発表日現在のもの。
■基地局のスペック
– 方式:TDD-LTE
– 周波数:3.5GHz帯(BAND42)
– 帯域幅:40MHz
– MIMO対応:4×4MIMO
– 下り変調方式:256QAM
– 最大スループット:588Mbps
[両社の開発に関わる役割]
<ドコモ>
・サービスエリア確保の観点からアンテナ特性について検討。
・実証実験によるエリア確保観点での実用性確認。
<AGC>
・ガラスアンテナの開発・製作および施工方法の確立。
・ガラスアンテナを設置した場合の既存窓ガラスへの影響検討。
[各社概要]
<NTTドコモ>
– 会社名:株式会社NTTドコモ
– 代表者:代表取締役社長 吉澤 和弘
– 所在地:東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー
– 資本金:9,496億7,950万円(2017年3月31日時点)
– 営業開始日:1992年7月1日
– 従業員数:単独7,767名、連結27,464名(2018年3月31日現在)
– 主な事業内容:通信事業、スマートライフ事業、その他の事業
<AGC>
– 会社名:AGC株式会社
– 代表者:代表取締役 兼 社長執行役員 島村 琢哉
– 所在地:東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
– 資本金:908億7,300万円(2017年12月31日現在)
– 創立日:1907年9月8日
– 従業員数:単独6,401名、連結53,224名(2017年12月31日現在)
– 主な事業内容:ガラス事業、電子事業、化学品事業、セラミックス事業、その他の事業