NEXT MOBILITY

MENU

2023年6月1日【物流】

DHL、F1転戦用にバイオ燃料トラック18台を初導入

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

DHLがF1機材運搬用に導入したバイオ燃料トラック

 

ウェル・トゥ・ホイール・サイクル測定で60%以上のCO2削減が可能

 

DHLとFIA(国際自動車連盟)フォーミュラ1選手権は独時間の6月1日、長年のパートナー関係に基づき今シーズンのヨーロッパ戦全レースをサポートするため、移動転戦用のバイオ燃料トラック18台を導入する。

 

植物油や使用済み食用油、残渣、動物性脂肪を原料とするHVO100ドロップイン燃料(水素処理した植物油由来の再生可能燃料)で走行する新型トラックは、2023年の欧州F1全戦に投入される。

 

これによりトラック車両1台あたり、標準燃料と比較しウェル・トゥ・ホイール・サイクル測定で最低でも60%もしくはそれ以上の二酸化炭素排出量削減が可能(トータル・エナジー社調べ)になる。

 

F1レースをより持続可能な方法で世界中に届けられる未来を示したい

 

この取り組みについてドイツポストDHLグループでグローバルブランドマーケティングヘッドを務めるアルヤン シシング氏は、「グリーンロジスティクスにおける業界リーダーとして、18台のトラックを導入することを介して排出量削減に貢献することで、ファンやお客様に、F1レースをより持続可能な方法で世界中にお届けできる未来を示したいと考えています。

 

また当社のF1とのパートナーシップは、持続可能性と二酸化炭素排出量の削減を目指した両社共通の努力を象徴するものとも言えるでしょう。私たちは一貫して、物流の持続可能性を高める努力を行っており、今年、新たに持続可能な燃料のトラックを導入できるのを嬉しく思います」と述べた。

 

導入される新型トラックは、ディーゼル車と同等の積載量や走行距離などの性能を維持しながら、二酸化炭素排出量を削減するという。またバイオ燃料の取り扱いは、環境とセキュリティの観点からディーゼル燃料のバンカーリングよりも安全だとしている。

 

DHLグループはHVO100使用により、EUの再生可能エネルギー指令に準拠

 

導入車両の仕様とその性能についてDHLモータースポーツロジスティクスのヘッドを務めるポール ファウラー氏は、「1,000リットルのタンクで、トラック1台あたりの最大輸送可能重量は40トン、最大走行距離は3,500キロメートルです。

 

欧州F1戦ではトラックはすべてHVO100で走行します。HVO100は、パラフィン燃料の規格EN15940を満たす第二世代のバイオ燃料であり、ドロップイン燃料としても使用できます。

 

ドイツポストDHLグループは、HVO100使用により、EUの再生可能エネルギー指令に準拠しています。DHLとフォーミュラ1は、サステイナビリティへの少なからぬ影響を考慮し、環境フットプリントを最小限に抑えるための継続的な取り組みの一環として、今後数年間、この持続可能な動力によるトラックの使用拡大を予定しています」と説明した。

 

加えて私たちは常に、より持続可能な解決策を探し続けている

 

一方でフォーミュラ1のESGヘッドを務めるエレン ジョーンズ氏は、「我々は世界規模で事業を展開しており、DHLはレースの実施だけでなく、我々が世界選手権を運営する立場でロジスティクス上の課題へ真摯に対応してくれるなど、とても重要な役割を果たしてくれています。

 

加えて私たちは常に、より持続可能な解決策を探し続けており、その結果、バイオ燃料トラックのようなイノベーションによって二酸化炭素排出量を削減し、2030年までにネットゼロを達成するという持続可能目標達成へ向けて大きな一歩を踏み出すことができます。

 

DHLのようなパートナーが、より持続可能なF1の実現に向けて、我々の意欲とコミットメントを共有してくれているのは素晴らしいことです」と語っている。

 

GPS計測による燃費消費状況の監視やルートの最適化も行っている

 

最後にDHLは、「環境的により持続可能な未来を創造することは、パートナーシップの重要な目的であり、DHLとF1は二酸化炭素排出量削減のために積極的な措置を講じてきました。

 

それは将来に向けたより高度な技術の試験適用、陸路と海路を含む複合輸送ソリューションの活用などがあり、その施策は従来型航空機747と比較して二酸化炭素排出量を18%削減可能なボーイング777型機の増台使用なども含まれています。

 

またDHLのトラックにGPSを搭載し、燃費消費状況の監視やルートの最適化も行っています。

 

クリーンロジスティクス業務で2030年までに70億ユーロを投資

 

今シーズン、DHLモータースポーツチームは約15万kmを走行し、1レースあたり最大1,400トンの貨物を輸送する予定であり、輸送アイテムは、レースカー、タイヤ、スペアパーツ、燃料に加え、放送機材、ホスピタリティ装備などになります。

 

加えて輸送中の貨物の包括的な追跡調査や、集荷、通関業務など総合的なサポートも提供します。

 

なかでもF1サーカスに携わるドイツポストDHLグループは、持続可能なビジネスを加速させるため、広く輸送事業に対して2030年までの〝サステナビリティロードマップ〟に沿って排出量を削減したクリーンロジスティクス業務に70億ユーロを投資します。

 

これらの資金は、持続可能な航空燃料、陸送車両の電動化、クライメートニュートラルな施設の設計などに投入されます。また長距離道路輸送における持続可能な燃料の導入も、この投資計画に含まれています」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。