電気興業は、ワイヤレス電力伝送の実用化に向けた独自の取り組みとして「空間伝送型ワイヤレス電力伝送の研究開発」を進めてきた。そうしたなか6月1日、「5.7GHz帯を使用した空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の基礎技術を開発したことを明らかにした。
空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム(WPT)は、電池レス・ケーブルレスで多数の機器への給電を可能とする技術であり、産業界で最も注目されている技術分野のひとつ。総務省は、2022年5月26日に電波法施行規則等の一部改正を行い、WPT向けの周波数として920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯の3つの帯域を割り当てるなど、WPTの普及に向けて動き出している。
同社は、このような背景を踏まえ、5.7GHz帯を使用したWPTの開発を行っている。このシステムでは、送信アンテナのビームフォーミング機能(無線通信において送受信の方向を電子的に制御する技術)を活用し、受信アンテナを追従して電力伝送を行うことができる。
これを実証するため、鉄道模型を用いた実験を行い、アンテナから離れた場所にあるモーターが駆動すること、駆動する鉄道模型をアンテナで追従し、安定的に電力伝送できることを確認した。
また、2022年度から4か年での計画として総務省に採択された自社提案「5G準ミリ波との共用技術」に於いては、WPTによる送電中も5Gシステム性能を維持し、5GとWPTが共存した利用環境を実現するべく、研究を推進中という。
電気興業は、「今後、これらの基礎技術をもとに、5.7GHz帯用送信アンテナの商用向け試作設計や受信端末の開発を進め、実用化に向けた研究開発に取り組み、波資源の拡大、周波数の有効利用に貢献していく」と述べている。
△5.7GHz帯を利用したWPT
1.鉄道模型を用いた5.7GHz帯WPT実験の概要
・本技術を適用することにより、鉄道模型が駆動することを確認
・送信アンテナのビームフォーミング機能により、±20°のビーム可変を行い、鉄道模型を追従
・アンテナ4基で約2Wの電力を受電(アンテナ1台当たり、約0.5W)
・鉄道模型を追従し、安定的に電力伝送ができることを確認
△5.7GHz帯WPT実験 モデル図
2. 5G準ミリ波との共用化技術の概要
(総務省 令和6年度継続案件:空間伝送型ワイヤレス電力伝送の干渉抑制・高度化技術に関する研究開発)
・5G基地局アンテナ(28GHz帯)で準ミリ波帯(24GHz帯)のWPTシステムを共用し、WPTによる送電中も5Gシステム性能を維持するためのアンテナの開発を行う
・WPTによって生じる、5G基地局への干渉抑制の確認
・干渉を抑制することで、適切な通信環境を維持しつつ、WPTによる安定した電力伝送を確認
・24GHz帯にて、USB充電を可能とする動作必要電力7.5W程度の電力伝送を実現
上記を確認・実現するため2025年度まで研究を行う予定。
5G基地局とWPT基地局共有化イメージ