実証運転を開始した、ディーゼル発電機や蓄電池を格納した発電所
NEDOと東光高岳、三井物産、駒井ハルテックは、北極圏に位置し、ロシア極東の中でも特に寒冷な地域であるサハ共和国のティクシ市で2018年に運転を開始した風力発電機3基と、今年度新たに設置したディーゼル発電機、蓄電池およびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせた「ポーラーマイクログリッドシステム」を完成させ、2020年12月28日に実証運転を開始したと、NEDOが1月7日発表した。実証運転を通して、低コストで安定的なエネルギー供給を目指すとしている。
1.概要
ロシア極東地域には、大規模な電力系統に接続せずに、電力供給をディーゼル発電機に依存している小規模な独立系統地域が多数存在している。これらの地域では、燃料輸送コストによって発電単価が極めて高い状況となっている。しかし、ロシア極東地域の地方政府は、電力価格を電力系統に接続している地域と同等程度に維持するための政策措置をとっているため、大きな財政負担を余儀なくされている。また、ディーゼル発電機の老朽化が進んでいるため、エネルギー安定供給に支障を来しかねない状況にある。
このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2018年2月27日にモスクワ市において、ロシア連邦サハ共和国政府およびロシア国営電力会社ルスギドロとの間で、風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業に関する協力覚書(MOC)を締結した。今回のNEDO実証事業※1の委託先として選定された東光高岳、三井物産、駒井ハルテックの3社は、サハ共和国の電力会社であるサハエネルゴと協力し、現地調査、機器の設計、設備・機器の製作および輸送、据付け・試運転を進めてきた。
※1 NEDO実証事業
事業名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/実証/風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業(ロシア連邦サハ共和国)
事業期間:2018年2月~2022年2月(予定)
今回、北極圏に位置するロシア極東の中でも特に寒冷な地域であるサハ共和国のティクシ市内に、2018年に運転を開始した風力発電機に加え、今年度新たに設置したディーゼル発電機、蓄電池およびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせ、安定的なエネルギー供給を実現する「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」を完成させ、2020年12月28日に実証運転を開始した。
なお、この実証事業は、2016年5月の日露首脳会談で提示された8項目の「協力プラン」※2のうち「4.石油、ガス等のエネルギー開発協力、生産能力の拡充」に含まれるものである。
※2 8項目の「協力プラン」
東方経済フォーラムに向けた現状と方針(ロシア経済協力8項目)(emb-japan.go.jp)
8項目の「協力プラン」の進捗(2.1MB)
2.今回の実証内容
実証運転では、既設発電所に設置されているディーゼル発電機や2018年に運転を開始したマイナス30℃以下での運転を可能とする極寒冷地仕様の風力発電システム[中型(300kW)の風力発電機3基]に加え、今回新たに設置した高効率のディーゼル発電機(1MW 3台)、高出力応答が可能なリチウムイオン電池(900kW-300kWh)を採用した蓄電池システムおよびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせ、低コストで安定的なエネルギー供給を目指す。実証事業では、風力発電機とディーゼル発電機の効率的な運用により、年間約16%のディーゼル燃料使用量削減を目指す。
またこの実証では、原油を燃料として使用可能とするため、新設ディーゼル発電機のうち1台において、不純物を除去する低質油焚きエンジン用の付属装置を導入し、原油とディーゼル油による混焼焚きの有効性を実証する。
NEDO
ポーラーマイクログリッドシステムのイメージ