撮影=中島みなみ
自賠責保険料運用益積立金から一般会計が借り続けている累積額は6994億円。今回は2019年度一般会計予算から、前年度比1.6倍の37.2億円を返済することに
2019年度の一般会計予算が21に閣議決定され、一般会計に貸し出された自動車ユーザーの自賠責保険料運用益積立金の一部が、今年度に引き続いて繰り戻される(=返済)ことになった。
返済額は37億2000万円。今年度の返済と比較すると1.6倍になる。伸び率でみると、返済への理解が進んでいることがわかる。制度に対する危機感を訴えていた「自動車損害賠償保障制度を考える会」(座長=福田弥夫日大危機管理学部長)は、今回の予算決定について「継続的な繰戻しと繰戻額の増額を求めてきた我々の要望に沿う結果として評価したい」と声明を出した。
自動車ユーザーの保険料は、被害者に対する保険金の直接支払いだけでなく、自動車事故の被害者の後遺障害の治療など専門的な療護施設の設置や運用、トラックやバスなど先進安全自動車の補助、衝突安全性能などの自動車アセスメント事業の費用を生み出すための運用資金としての役割がある。
1994年から総額1兆1200億円が貸し出され、2004年から2017年まで返済が滞っていた。今年度14年ぶりに約23億円が返済されたが、それでも6994億円が貸し付けられたままだ。そのため財源となるべき運用益が得られず、資金を取り崩して被害者救済などを行っているのが現状だ。ただ、来年度の増額返済で積立金の取り崩し額は2018年度より3億円減、79億円に縮減することができた。
返すに返せないほど巨額な貸付金だったが、2年連続の返済と増額決定により、返済の道は拓けたとみられる。2019年度の要求で国交省は、今年度に上乗せする形の予算額確保を求め、それを財務省が認めた。
貸し出された自動車ユーザーの保険料を、どのように返済するかは、国土交通大臣と財務大臣との合意により決まる。石井国交相と麻生財相間の覚書は昨年、返済期限を2022年度までとしたが、その返済額については「毎年度の具体的な繰り戻し額については、被害者等のニーズに応じて、被害者保護増進事業等が安定的、継続的に、将来にわたって実施されるよう十分に留意しつつ協議の上で決定していく」ことで、毎年度の具体的な返済額は盛り込まれなかったが、ひとまず自動車事故対策事業の継続運営が危ぶまれる状況は避けられそうだ。( 中島みなみ・中島南事務所/東京 文京)
写真は、今年9月10日に都内で行われた「自動車損害賠償保障制度を考える会」での風景(佃モビリティ総研・片山雅美撮影)
(NEXT MOBILITY編集部)自賠責積立金を巡る経緯とその詳細については、2018年10月1日発行の弊誌「NEXT MOBILITY」06号・P64-65に「〝借りた金は返せ〟交通事故被害者救済のための自賠責積立金・約6000億円が一般会計?(佃モビリティ総研・片山雅美・上稿)」としても掲載している。同テーマについては、こちらも参照されたい。