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2024年1月20日【イベント】

ダカールラリー2024、サインツ〝シニア〟が総合優勝

坂上 賢治

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サウジアラビアで繰り広げられた「第46回ダカールラリー2024」は1月19日、マディーナ州の都市ヤンブーでフィニッシュを迎え、電動ドライブが組み込まれた「アウディRS Q e-tron E2」に乗る61歳のカルロス・サインツ〝シニア〟選手( 1990/1992年WRCチャンピオンで、現役F1ドライバー、カルロス・サインツの父親 )がトップでゴールラインを潜って総合優勝を成し遂げた。

 

最終的に首位の栄冠に酔ったサインツ選手だが、冒頭のプロローグで48位に沈むなど当初は華々しさに欠け、以降の各ステージに於いても、並み居るライバル達を引き離せずにいたのだが、ようやくステージ2で総合首位に。

 

 

しかし、その翌日にはヤジード・アル-ラジ選手(オーバードライブ・レーシング)のリードを許した。ただそれ以降は、ステディな成績を積み上げ、追い縋る猛者達が被った幾多のトラブルを避けられたことが勝利の女神を引き寄せた。

 

また今年のダカールラリーでアウディチームは、途中から優勝争いから脱落したマティアス・エクストローム選手とステファン・ペテランセル選手が、サインツ選手のサポート役に回ったことが戦略上、有利に働いた。

 

 

これに対してラリーの中盤以降、トップ集団を走る最強ライバルのプロドライブ・ハンター勢は、優勝候補と目されていたセバスチャン・ローブ選手がラリー序盤のパンクなどでタイムロス。

 

更にナッサー・アル-アティヤ選手が戦線脱落。結果、ローブ選手は、チームとして厚み保ったままのアウディ勢に、孤軍奮戦で激突することになった。

 

それでもローブ選手は諦めず、特にラリー後半は意地を見せてサインツ選手と鍔迫り合いを演じて、ステージ11までに13分差という好位置につけたのだが、サスペンションを破損するトラブルに見舞われタイムロス。

 

その間隙を縫って、最終ステージに突入したサインツ選手が、安定してトップ10圏外で走り終えたことで、ダカールでは自身4度目。しかもフォルクスワーゲン、プジョー、ミニ、アウディと異なるブランドに乗って総合優勝を獲得するという歴史的勝利を手にした。

 

 

サインツ選手は「チームは、ダカールでは初めての電動マシンで挑んだ。アウディだけが、このリスクを背負う勇気を持っていた。その結果、歴史を作ることができたことはとても嬉しい。

 

自分を信頼してくれたアウディや、アウディ・スポーツ代表のロルフ・ミクル、Qモータースポーツ代表のスベン・クワントに感謝したい。そして、この勝利を支えてくれた皆にも感謝している。当面は、この勝利を楽しみつつ、この先の自分の将来について考えるつもりだ」と語った。

 

2位には20年前のダカールラリーで、今年優勝したサインツ〝シニア〟と戦ったグレゴワール・ド・メビウス選手を父に持つ29歳のギヨーム・ド・メビウスド・メビウス選手(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ)が食い込んだ。

 

 

悲願の初優勝を目指しチャレンジし続けたローブ選手は、12ステージ中5ステージで最速タイムを刻んだものの、安定感に欠けたことで総合3位で力尽きた。これに続いてステージ10と11を連勝したゲラン・シシェリ選手(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ)が総合4位。

 

総合5位は、MPスポーツ・フォード・ラプターのマルティン・プロコップ選手。「トヨタGRダカールハイラックスEVO T1U」5台の必勝態勢で臨んだトヨタ・ガズーレーシングは、ガイ・ボッテリル選手が6位。ジニエル・ド・ヴィリエール選手が7位。トヨタ・ハイラックス・オーバードライブのベネディクタス・ヴァナガス選手が8位。モラエス選手が9位となった。

 

 

4気筒998ccの水素エンジン搭載バギー「HySE-X1」で、開発クラスのMission 1000に参戦したHySE(水素小型モビリティ・エンジン研究組合/カワサキモータース・川崎重工業・スズキ・ホンダ・ヤマハ発動機・トヨタ連合)は完走。カテゴリー4位となり、レース主催者側から畏敬の念を込めて「自分達が世界を変えられると信じているクレイジーなヤツら(People who are crazy enough to think that they can change the world)」と評された。

 

 

一方で二輪部門は、モンスターエナジー・ホンダのリッキー・ブラベックが、HEROモータースポーツのロス・ブランチを10分53秒差で退けて総合優勝。

 

その他の日本勢では、トヨタ傘下のトヨタ車体がランドクルーザー300シリーズをベースにした市販車部門で、500号車の三浦昂選手と501号車のロナルド・バソ選手が1‐2フィニッシュで11連覇を達成した。

 

 

カミオン部門にHINO600シリーズで参戦した日野チームスガワラは、6位でのフィニッシュを果たし33回の連続完走。しかも2019年の9位以来となる一桁順位を刻んだ。

 

 

なおアウディは、2026年にレギュレーションが変更されるフォーミュラワンに於いて、ザウバーと共に同最高峰シリーズへの挑戦に賭けるため、「ダカールラリーへの参戦を休止するのでは」と囁かれていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。