半閉鎖空間での汚染物質滞留のイメージ
局地的、短期的な大気汚染物質濃度の情報提供サービスの開始へ
1945年に創立された財団法人・建設技術研究所が前身の国内最初の建設コンサルタントである建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:中村哲己)は9月7日、AIを用いた再現性の高い大気汚染予測モデルの作成に成功。同社は、これに基づく高精度な局地・短期的な大気汚染物質濃度の情報提供サービスを開始すると発表した。( 坂上 賢治 )
これまで自動車から排出される大気汚染物質濃度の予測計算では、従来手法のプルーム・パフモデルを用いて開放空間に於いて大気汚染物質が充分に拡散する事を前提としていた。しかしそれでは道路両側に高層ビルが連担している半閉鎖空間では適用が困難だ。
また、プルーム・パフモデルの代替手法として考えられる数値流体力学CFD(Computational Fluid Dynamics)モデルでは、あらかじめ現地条件を3次元的に精緻に再現する必要がある。従ってCFDモデルでは、局地的な気象状況の反映や濃度拡散の再現に課題がある。
これまでの大気汚染物質濃度予測を覆すAIによる予測精度
そこで建設技術研究所は、より容易に大気汚染の予測濃度を捉えられる手法を開発するべく、常時観測されている大気汚染物質濃度等の公表データをベースに用いて独自のAI予測モデルを構築させ、局地的な大気汚染物質の将来濃度の時変動を精度よく再現させる手法を開発した。
AI予測モデルのinputとoutput
この新しい予測モデルは、大気汚染物質濃度を観測・公表している全地点の汚染物質の発生と、拡散傾向等を19時間先まで定量的に予測でき、12時間先までの1時間値で平均誤差0.01ppm以内、早朝5時までの実測値と19時間先までの予測値を組み合わせた日平均値では平均誤差0.005ppm以内の予測精度を確保出来ている。
今後は大気汚染物質の将来濃度を弾力的に運用する事が出来る
予測値と同時刻の実測値との比較結果(NO2)【12時間先の予測の例】
今後は、この新たに開発したAIモデルを用いて市街地の交差点等での局地的かつ短期的な大気汚染物質の将来濃度の提供サービスを開始していく構えだ。
今後は、この技術をサービスとして用いる事により、道路交通管理者側は交通需要マネジメントを大気汚染物質の将来濃度に基づいて弾力的に運用する事ができ、高濃度発生日に的を絞った効果的な沿道環境対策が行える可能性がある。例えば、迂回誘導などの交通転換施策を計画的に多くのドライバーへ対して周知する事を可能となる見込みだ。
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