NEXT MOBILITY

MENU

2024年11月8日【文化・科学】

コンチネンタル、ハイパーカー用ブレーキ制御システムを開発

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

1,600馬力のハイパーカーを誰もが操縦できるようにする技術とは

 

コンチネンタルは11月6日、「Continental Engineering Services(CES/コンチネンタルエンジニアリングサービス)のモータースポーツ向けABSキット」をベースに、アンチロックブレーキシステム(ABS)、電子安定性制御(ESC)、トラクションコントロールシステム(TCS)を備えたハイパーカー、ブガッティ・ボリード用の電子ブレーキ制御システムの開発で成功した。

 

この新たなブレーキ制御システムが開発されたことにより、腕に覚えのあるプロのレーシングドライバーだけでなく、一般の自動車愛好家もプロドライバーと同じく1,600馬力のレーシングカーを自在に制御できるようになった。

 

対象車となったブガッティ・ボリードは、サーキット専用の非常にパワフルなレーシングカー仕立てのクルマだ。もともとブガッティ・シロンの生産モデルをベースにしたコンセプトカーとして考案されたボリードは、現在40台限定で鋭意・製造されており、最初の車両納入は年末までに実行される予定だ。

 

同車に活かされたCESのモータースポーツABSキットは、レーシング用途に特化した精緻なブレーキ制御ソリューションだ。コンチネンタルの社内開発およびエンジニアリング サービス プロバイダーであるCESとブガッティは、特にブガッティ・シロンとブガッティ・ヴェイロンの両モデルを対象に、数年間に亘って車両開発で協力してきた。

 

わずか1年で、ハイパーカー専用のブレーキ制御システムを仕上げる

 

このプロジェクトは、ハードウェアとソフトウェアのコンポーネントの統合の仕上げ過程で佳境に入っている。そもそも公道走行が全く許されないレーシングカーであれば、主にブレーキシステムの開発では極限でのパフォーマンスだけに最適化すれば良い。しかし今回の車両は、一般ドライバー向けのドライビングシステムは搭載されていないたるめ、車両開発には特別な技術が必要になった。

 

それゆえCESモータースポーツ チームは、どんなドライバーでもコントロールできる優れたドライビング ダイナミクスを備えた車両を作るという途方もない課題に取り組むことになった。

 

1,600 馬力のパワーユニットを搭載したモンスターマシンのステアリングを握りながら、破綻なくレーシングマシンを制御し続けるにはドライバー自身が、ステア操作やブレーキ操作のバランスを取りつつ、車体の姿勢を正確にマネージする必要がある。

 

そこでCESモータースポーツ チームは、あらゆる走行下での多様なシナリオを検証。電子制御技術を駆使して可能な限り最高のブレーキ性能を発揮させつつも、車両の安定を一貫して維持できるバランスづくりに取り組んだ。

 

しかし時速380kmで疾走する1,600馬力のスーパースポーツカーで、一度ハードブレーキを踏むと最大2.5の減速Gが発生する。これは一般的なスポーツ車両の最大減速Gの2倍以上に達する。併せて高速走行時のダウンフォースなどの空力特性も考慮する必要がある。

 

これらの極限の要件を満たすため、CESのエンジニア達は、モータースポーツ用のソフトウェアパッケージを大きくかつ丁寧に改造しなければならない。そうしたなかでCESは、最初の打ち合わせから最終的な走行テストまで、わずか1年でこの専用制御システムを仕上げることに成功した。

 

全てのドライバーが自在に制御できる敷居の低いレーシングカーを作る

 

そうした過酷な開発過程について、ブガッティのボリード担当チーフエンジニアを務めるクリスチャン・ウィルマン氏は、「我々のESCシステムがこれだけの大きなカーボンブレーキシステムに利用される機会はこれまで、ありませんでした。

 

しかし今回は、ボリードを対象にあえてこの取り組みに挑戦し、パフォーマンス、安定性、安全性に於いて期待を上回るソリューションを生み出すことに成功しました。結果、コンチネンタルのモータースポーツABSを駆使したボリードのドライビングプレジャーは、大変優れたシステムに仕上がっています」と説明した。

 

その説明に続いてCES のシャシー & ブレーキ システム事業部長のフォルカー ファン リアー氏は、「この特別なプロジェクトで、ブガッティと共に限界を押し広げることができたことを非常に誇りに思います。

 

但しハイパーカーのブレーキ制御技術の開発は、コンチネンタル エンジニアリング サービスが豊富な経験を持つ特別な分野です。それはプロだけに向けたモータースポーツ用の純レーシングマシンとして仕立て上げる訳ではないからです。

 

プロ・アマを問わず全てのドライバーが自在に制御できる敷居の低いレーシングカーを作ることは、私たちにとっても興味深い挑戦だったからで、大きなやり甲斐を感じる仕事となりました」と語っている。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。