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2024年9月19日【MaaS】

コンチネンタル、自動運転トラックの安全意識を国際調査

坂上 賢治

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コンチネンタル・ロゴ

 

コンチネンタル・オートモーティブは9月12日(ドイツ・ハノーバー発)、独自調査の「コンチネンタル・モビリティ・スタディー2024」を発表した。同調査によると各国に於いて自動運転トラックに対する高い支持が示され、回答者の大多数が自動運転トラックが、物流業界のドライバー不足を補い、交通渋滞を緩和するだろうと予想した。

 

この調査は、ドイツ、中国、フランス、日本、アメリカ市場を対象に調査機関infas(インファス)社に委託して実施したもの。そのなかでドイツ国内では、1000人の調査対象者のうち47%が自動運転トラックが近い将来に於いて実現することを想定した。

 

調査自体は、2024年8月にドイツ、中国、フランス、日本、アメリカの18歳以上約5000人を対象に、個々のモビリティのニーズと希望、及び自動運転トラックといった新技術に対する受容度を確認するべく市場調査会社への調査を委託した。その結果は、各国毎で得られた数値を母集団としている。但し、中国で収集したデータは都市人口が中核となっている。なおコンチネンタル・オートモーティブでは、これら全調査内容を、来たる2024年10月に公開することを予定している。

 

さてそんな調査から各国に於ける自動運転トラックへの期待値を探ると、アメリカで62%、中国で92%となっており、ドイツでは回答者の約60%が、自動運転トラックを配送ドライバー不足に対処する一つの手段だと見なしている。またドイツでは、そのなかのほぼ半数 (47%) が、自動運転トラックが高速道路の交通流を改善し、将来的には渋滞を減らすことになると考えている。

 

 

そんな今回の調査結果に対して、コンチネンタルオートモーティブのフィリップ・フォン・ヒルシュハイト取締役は、「回答者の大多数が既に自動運転トラックの利点を理解しています。

 

特にドイツでは、長距離を運転するドライバー (100km以上) や比較的若いドライバー層 (44歳まで)達が、自動運転トラックの普及にオープンな姿勢を示していることが判ります。私たちは今後も、この肯定的な意見が更に広がるよう技術開発を進めたいと考えています。

 

なお多くの国の物流業界は、ドライバーの大幅不足に悩まされている一方で、路上を行き来する商品輸送の需要は高まり続けています。今調査によると、ドイツの2023年段階のトラックドライバー不足は少なくとも7万人で、この不足傾向は年を追うごとに高まっていきます。

 

そうした環境下で、生身のドライバーが運転するトラックから自動運転トラックへの移行は、フリート事業者にとっても、運用コストと配送時間を大幅に削減する機会を提供することになります。自動運転トラックは、ドライバーの運転時間や休憩時間を監視する必要がなく、道路上を走る時間そのものを大幅に拡大させることが可能になります。

 

そんな自動運転トラックに係る大きなメリットのひとつは、交通事故の主原因となっているヒューマンエラーを排除し、安全性向上に貢献できる可能性があることです。また自動運転トラックは、環境負荷の軽減にも繋がり、運転の最適化により消費燃料は減少。その結果、CO2排出量の削減目標の達成への道程が、より確かなものとなるでしょう」と述べた。

 

 

一方で、ステアリングを握るドライバーがいない大型商用車の安全性について懐疑的な見方を示す傾向も明らかになっている。ドイツ、フランス、アメリカでは、回答者の60〜65%が自動運転の大型トラックに係る安全性の懸念を挙げており、日本では、その値が70%以上となっている。

 

対して中国では回答者のほぼ半数が、そうした安全性についての懸念を持っておらず、過半数以上 (62%) が自動運転トラックの方が安全だと考える唯一の国となっいる。

 

そうした各国語に異なるモザイク状態の懸念に対してコンチネンタルオートモーティブのフォン・ヒルシュハイト氏は、「私たちは、世界の人々の安全性に関する懸念を真摯に受け止めています。

 

全ての道路利用者の安全と保護を、冗長システムで実現させようとしている我々のソリューションは、乗用車向けの自動運転技術開発での成功事例の積み重ねを基盤に、常に飽くなき安全性を追求してきた歴史があります。

 

今年のIAA TRANSPORTATIONでは、自動運転トラックの中枢神経系と感覚基幹を、センサーとカメラで代替・拡充させた運転者支援システムが、高速道路での車線維持、緊急ブレーキ時、駐車時など、様々な運行環境下で世界のドライバーを支援し続けています」と畳み掛けた。

 

 

実際、乗用車分野に於いても運転支援システムの搭載が広く浸透するにつれ、運転支援システムへの寛容性は着実に高まりつあり、それはドイツではその傾向が年を追う毎に顕著となっている。

 

またコンチネンタルが過去10年間に行ったモビリティスタディーのデータを確認すると、調査対象となった殆どの国で自動運転車に対して肯定的な意見が強まっていることが示されている。

 

2013年以降、アメリカ、中国、日本でも自動運転が意味のあるものと考える人の割合は大幅に増加。米国では56%と15ポイント増となり、日本と中国での自動運転への支持率は11ポイントへ上昇。2024年には中国で90%、日本は72%に達した。

 

但し、今後5年から10年以内に自動運転が日常的な使用に適しているかどうかについては各国間で違いも見られる。この期待値は、欧州の調査対象2カ国よりも中国 (82%) 、日本(52%)、米国(51%)が高くなっているが、ドイツとフランスでは微増傾向にある。

 

それでも2020年以降に登録された新型車を運転するグループでは、47%が自動運転機能を指示しており、ドイツ全体の平均値である約38%を大きく上回っている。総じて運転者支援システムに触れる機会が多かった回答者は、自動運転に対してもよりオープンであり、この相関関係は、自動運転トラック技術が受け入れられるための基盤となる可能性を示唆しているとした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。