三菱商事と以下、NTT(日本電信電話)は、2019年 12月に新設した在蘭持株会社(出資比率50%:50%)を通じ、2020年5月29日付でHERE(HERE Technologies)の株式30%の取得を完了した。(坂上 賢治)
この取引完了に伴い、三菱商事の常務執行役員コンシューマー産業グループCEOの京谷裕氏、NTTの常務取締役新ビジネス推進室長の栗山浩樹氏 の2名がHEREの監査役会に加わった。現在、HEREの直接的・間接的な株主は、Audi、Bosch、BMW Group、Continental、Intel Capital、三菱商事、Mercedes-Benz、NTT、パイオニアの9社となっている。これによりHEREはアジア太平洋地域での成長を加速させていく構え。
HERE社は、位置情報サービス分野のリーディング企業として自動車業界で確固たる地位を築いてきた。また近年は、運送、物流、メディア、通信等、幅広い分野へ位置情報プラットフォームを提供している。
HEREへ出資した三菱商事とNTTは、2019年12月にデジタルトランスフォーメーション(DX)による産業バリューチェーンの変革と新たな価値創出を目的に業務提携。両社が進めるDXに於ける中核技術のひとつとして、HEREが有する技術基盤を活用して物流・都市 交通・リテイル・金融等におけるロケーションサービスの展開を進めていく構え。
具体的な一例としては、HEREが有する世界最大規模の位置情報データベースを活用、車両の位置・運行状況等を可視化した上で、物流時の最適ルートを提供するサービス開発に取り組む。
これにより今後需要が高まる宅配(ラストマイルデリバリー)、幹線輸送(ミッドマイルデリバリー)に携わる物流業者等との提携検討を目指す。より具体的には年度内に複数の実証事業の開始を視野に入れている。
その他、地方都市のスマートシティプロジェクトでも新たなモビリティサービス(オンデマンドバス等)が注目されているなか、HEREの持つ位置情報を集積。同事業者・利用者にとって最適な交通輸送手段の展開にも取り組む方針だ。
三菱商事とNTTの両社は「今後も双方の強みである産業知見とICT技術を活かし、HERE社との協業を加速させ、HERE社の企業価値向上や提供サービス拡充に努めてまいります」と話している。
一方、HEREのエザード・オーバーベック(Edzard Overbeek)は「三菱商事とNTTを当社の長期的な成長を支援する戦略的投資家として新たに迎えることができ、嬉しく思います。位置情報データテクノロジーが、イノベーションを促進し、効率性と持続可能性を高め、最終的には世界をより良い場所にする大きな可能性を秘めていることを両社が認識した結果だと考えています」と結んでいる。
出資のスキームは以下の通り
1.三菱商事株式会社 概要
本社所在地:東京都千代田区丸の内 2-3-1
創立:1954年
事業内容:天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループ体制で幅広い産業を事業領域として多角的なビジネスを展開
代表者:代表取締役社長 垣内威彦
2.日本電信電話株式会社 概要
本社所在地:東京都千代田区大手町1-5-1
創立:1985年
事業内容:移動体通信事業、地域通信事業、長距離・国際通信事業及びデータ通信事業、不動産事業、建築・電力事業等(子会社919社・関連会社123社)
代表者:代表取締役社長 澤田 純
3.HERE Technologies(HERE International B.V.)概要
本社所在地:オランダ・アムステルダム
創立:1985年
事業内容:カーナビ用、BtoB事業者、自治体向け、デジタル地図及び位置情報サービスの提供
代表者:Edzard Overbeek、CEO