川崎重工業は、東京海上日動火災保険、三井物産と、宇宙ごみ(スペースデブリ)除去の事業化(事業性・経済性の検討)を目的とする協業に、11月18日、合意した。
3社は、民間事業者による宇宙ごみ除去市場の創出を目指す。
現在宇宙空間には、打ち上げられたロケットや、運用を停止した人工衛星およびそれらの部品などの宇宙ごみが、2万個以上(直径10cm以上のもの)、軌道上を周回している。
また、近年は情報通信事業や地球観測データサービスなどのビジネス展開を目指す企業が、小型人工衛星群(コンステレーション)構築のため多数の人工衛星の打ち上げを計画。
国際宇宙ステーションや人工衛星への衝突リスクに加え、既存のデブリとの衝突によるデブリ増殖のリスクも懸念され、安全な宇宙ビジネス市場の発展のため、宇宙ごみ除去の必要性が高まっている。
協業では、各社の強みを活かし、宇宙ごみ除去市場の創出のためのスキーム構築のほか、法整備や国際協調などの実現に向けた働きかけを行う。
さらに、宇宙ごみ除去の技術やビジネスモデルを応用し、今後10年で市場規模が30億ドル超になると予測される(※)人工衛星向け軌道上サービス(燃料補給、修理改修、軌道離脱、救出など)の事業性の検討も開始する。
川崎重工業と東京海上、三井物産の3社は、宇宙ごみ除去を実現するビジネスモデルの構築を目指すとともに、今後も宇宙ビジネスの発展と安全な宇宙空間の利活用に積極的に貢献していくとしている。
[各社の宇宙ビジネスへの強み]
<川崎重工>
宇宙分野の実績および宇宙ごみ除去に関する知見
川崎重工は、1980年代から宇宙機器の開発・製造を手掛けており、2011年から宇宙ごみ除去技術の研究を始めている。今年10月には宇宙ごみ除去衛星の運用地上局を岐阜工場に設置し、2025年度の宇宙ごみ除去サービス商用化を目指している。
<東京海上>
宇宙分野におけるリスクマネジメントの実績および知見
創業以来、あらゆるリスクに対する保険やサービスを開発・提供。宇宙産業に関する分野では、1970年代から宇宙保険の提供を開始し、現在に至るまで宇宙ビジネスに関わる保険商品や関連サービスを提供してきた。今後、宇宙ごみ除去に対して、保険商品の開発を進める。
<三井物産>
宇宙分野におけるマーケティング力・事業開発力
宇宙分野を新たな注力領域と位置付け、米国を中心にロケット相乗り事業や衛星画像とAIを組み合わせたインテリジェンス・プラットフォームを展開するSpaceflight Industries社などの宇宙関連企業への投資に取り組んでいる。今回、同件を通じて宇宙ごみ除去や軌道上サービス分野の検討を進める。
※:Northern Sky Research社レポートより