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2023年12月15日【ESG】

ブリヂストン、モータースポーツ領域の未来戦略を発表

坂上 賢治

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ブリヂストンは12月15日、東京都内で報道陣を募り「2023年ブリヂストンモータースポーツ活動60周年〝極限への挑戦〟 次のステージへ ‐サステナブルなグローバルモータースポーツ活動強化‐ 」と題したモータースポーツ60周年の活動総括と、今後に向けたサステナブルなグローバルモータースポーツ活動について発表した。( 坂上 賢治 )

 

 

そこで掲げた活動は6テーマ。まずは、〝6つのテーマタイトル〟と、〝個別テーマの概説〟を以下で紐解いていく。

 

(1).Passion to Turn the World(世界を変えていく情熱)がDNA

 

まず同社が初めてモータースポーツ活動を始動させたのは、1963年に開かれた第1回日本グランプリ( 鈴鹿サーキット )で、当時の市販製品を改良したレーシングタイヤで参戦したことが皮切りとなる。以降ブリヂストンは今年、60周年の節目を迎えた。

 

 

同社・石橋秀一グローバルCEOは、1963年以来のモータースポーツに係る取り組みを振り返り、自社の姿勢について、「一貫して変わらないものは〝挑戦〟に賭ける強いパッションです。これは我々が永遠に持ち続ける我が社のDNAだと思っています。

 

 

それは私が若い頃に関わった富士グランチャンピオンシリーズ( 1971年から1989年で行われた日本国内のトップカテゴリー戦 )への挑戦しかり、88年にファイストン買収した際のモータースポーツ活動しかり、そうした経緯が95年にインディ、97年のF1への挑戦へと繫がっています。

 

ちなみにこれは当社だけのことではありませんが、日頃は、仕事上での様々な問題を抱えながら苦労を重ねている当社の社員達ですが、先に明らかにしたフォーミュラーEへの関わり( 先の15日、同社は2026・2027シーズンからフォーミュラEへのタイヤ供給開始を発表した )では、モータースポーツの現場だけでなく社内での求心力も強くひとつにまとまる。ブリヂストンという会社は今でも、そうした社内風土が受け継いでいます」と語っている。

 

そこで同社は昨今、事業上の最重要課題となっているサステナビリティを中核に据えた上で、モータースポーツ活動を進化させるべく〝Passion to Turn the World( 世界を変えていく情熱 )〟を掲げて、同活動の強化を目指す。

 

つまり、極限のモータースポーツへの挑戦を通じて、レースを楽しみ、勝つことに拘り、イノベーションを加速させていく情熱を育む。結果、そうした活動から持続的な未来へと繫がるモビリティ社会を支えていきたいとしている。

 

 

(2).サステナブルなモータースポーツ活動を「走る実験室」に

 

これまでブリヂストンは、モータースポーツをタイヤメーカーとしての「原点」と位置づけ、過去からの60年に及ぶモータースポーツ活動を称して、〝Passion for Excellence( 卓越を求め続ける情熱 )〟というキーワードを掲げた。

 

同社によると、それは全ての瞬間に於いてエクセレンスを追求する情熱であり、長年のモータースポーツ活動を通して〝技術力〟〝モノづくり力〟〝ブランド力〟〝人財育成〟を磨き上げてきた歴史だという。

 

 

実際これらは、現在の自社のプレミアムタイヤビジネスの基盤となっていると説明する。従って今後もサステナブルなグローバルモータースポーツ活動を通じて、レースを〝走る実験室〟として見立て、極限の条件で技術を磨き、〝From Circuit to Street( サーキットからストリートに至る全域で学ぶ )〟のコンセプトの下、市販用タイヤ開発の次のステージへ繋げて進化させていきたいと説明している。

 

 

(3). EV時代の新プレミアムは商品設計基盤技術「ENLITEN®」に

 

上記テーマ(1)と(2)を踏まえ、自社を次のステージへ進化させていくために中核となるのは、EV時代の新たなプレミアム技術の根幹を成す〝商品設計基盤技術のENLITEN®( エンライトン )〟だという。

 

ENLITEN( エンライトン )技術は、顧客に寄り添い、タイヤへのニーズ( 目的に対する欲求 )やウォンツ( 目的を満たす具体的な手段 )を叶えるだけでなく、顧客、モビリティの特性に合わせて、製品に新たな価値を付与するための〝究極のカスタマイズ〟を意味するもの。

 

 

それは例えばモータースポーツタイヤの開発場面では、レース条件、クルマの仕様、ドライバーのパフォーマンスを引き出す〝判り易い過渡特性( 変化に追従できる柔軟性 )〟を持たせるなどの〝究極のカスタマイズ〟を繰り返すことを介してエンライトン技術の進化を導き、当該技術を逸早く市販用タイヤへ反映することで市販製品の価値を拡大させていきたいとしている。

 

(4).サステナブルなプレミアムブランドへ進化の道筋を示していく

 

ブリヂストンはエンライトン技術を背景に、極限への挑戦から技術革新を支える情熱を示し、サステナブルなプレミアムブランドになっていく路を切り拓いていく。

 

そこで同社がブランド・アイデンティティーとして目指すものは、顧客を十把一絡げなどにせず、一人ひとり各々の顧客満足を支えることにあり、それを通して自社ブランドが、未来のモビリティ社会に於いて、なくてはならない存在になることだという。

 

 

(5).バリューチェーン全体に於けるサステナブル化を逸早く推進 

 

ブリヂストンは、サステナブルなモータースポーツ活動を通じて、原材料調達からリサイクルまで、タイヤを「創る」「使う」、原材料に「戻す」というバリューチェーン全体のサステナビリティを推進させてきた。

 

これはモータースポーツが勝利を求めるレーシング・タイヤ開発でも変わらない。というのは、今やレーシングシーンに於いても、環境負荷が高い手段を用いた勝利は〝無価値〟であり、敗北を意味するからだ。

 

従ってブリヂストンでは、モータースポーツ活動に於いても再生資源・再生可能資源比率65%以上へ挑戦する。また最終的には、100%再生可能エネルギーを活用した生産を行い、100%カーボンニュートラルなタイヤ輸送も実現していく。加えてタイヤのケミカルリサイクルへも飽くなき姿勢で挑んでくとした。

 

(6).2023年からのサステナブルなモータースポーツ活動を維持していく

 

●Bridgestone World Solar Challenge:2023年10月22日~10月29日開催
ソーラーカーの特性やレースの条件に合わせて供給タイヤやソリューションをカスタマイズし、再生資源・再生可能資源比率を63%に向上させたENLITEN( エンライトン )技術を搭載したタイヤをモータースポーツに初投入した( 2023年8月29日付け )。更にタイヤ輸送でもカーボンニュートラルの実現を目指す。

 

 

●Bridgestone FIA ecoRally Cup:2023年 欧州で6か国6レースをサポート
2023年からタイトルスポンサーを務める国際レースに於ける実績。一般ドライバーがEV・FCVといったゼロエミッション車のみで参加するラリーで、電費効率を競う同レースに共鳴。2024年以降は、更に拡大されたENLITEN( エンライトン )搭載市販用タイヤの拡大に合わせてEV化の加速を足元から支え、継続的にサポートを続けている。

 

 

また上記に加えて、先の通り、同社はFIAからABB FIAフォーミュラE世界選手権2026-2027シーズンからの単独タイヤサプライヤーに選定された( 12月7日発表 )。これによりブリヂストンは、FIA世界選手権に名を連ねるグローバルモータースポーツに15年ぶり復帰を果たした。同社では今後も、バリューチェーン全体でのイノベーションをグローバルで更に加速していきたいと話している。

 

*2023 FIA Action of the Year – ABB FIA Formula E World Championship

 

 

モータースポーツを起点に企業活動の進化を更に加速させてく

 

上記の取り組みを踏まえてブリヂストン製品開発管掌の草野亜希夫 常務役員は、「ブリヂストンにとって、モータースポーツは原点であり、走る実験室です。現物現場でレースに於ける最高のパフォーマンスを支え続けると共に、〝From Circuit to Street〟のコンセプトの下、極限の状況で使用されるモータースポーツタイヤ開発で技術をより早く磨き、アジャイルな開発を加速していきます。

 

それにより、究極のカスタマイズを目指すENLITEN( エンライトン )技術をより早く次のステージへ進化させ、モビリティの進化に対応し、お客様に新たな価値を提供する市販用タイヤ開発へ繋げます」と語った。

 

更に石橋グローバルCEOは、「ブリヂストンは、これまでと変わらないモータースポーツに懸ける情熱をコアに、サステナブルなグローバルモータースポーツを〝EV時代の新たなプレミアム〟と位置づけるENLITEN( エンライトン )技術で支えると共に、当社の企業ビジョンである〝サステナブルなソリューションカンパニー〟へ向けて、モータースポーツを起点にしながら会社全体をより早く進化させていきます。

 

そして、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動強化を通じて、すべての一人ひとりにとっての最高を支え続け、モビリティの未来になくてはならない存在となることを目指していきます」と述べ、同会見を結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。