あらゆる形態のパワートレインの開発を続け、それらをより効率的なものへ
ボッシュは9月19日(独・シュトゥットガルト/ハノーバー発)、ドイツ国内で開かれる商用車見本市「IAA TRANSPORTATION 2024」(期間:9月17日〜9月23日)での自社の出展概要を明らかにした。
今回のIAA TRANSPORTATION 2024への参加について、ボッシュGmbH取締役会メンバー兼モビリティ事業セクター統括部門長のマルクス・ハイ氏は、「商用車の代替パワートレインへの移行を成功させるには、あらゆる形態のパワートレインの開発を続け、それらをより効率的なものにすることが重要です。
また今後数年間は、世界的な貨物輸送の急激な成長と、商用車の代替パワートレインへの切り替えが同時期に進むことから、我々の事業の急成長が見込めるフェーズに入ったと考えています。従って私たちにとって大型車両事業はとても重要な事業領域となっています。実際、モビリティ事業では、トラックとバンが売上の4分の1を占めるまでなっているのです。
一方、そうした環境下で2024年の世界の自動車生産は停滞する見通しです。しかしながら最終四半期が好調に推移すると仮定した場合、非常に厳しい市場環境にも関わらず、2024年のモビリティ事業の売上高は若干増加すると見込んでいます。
世界の流れに抗い、我々のモビリティ部門は2029年までに全世界規模で800億ユーロ超の売上高を達成することを目指しています」と出展に係る市場概要と、そこでの事業目標を説明した。
そんなボッシュは、世界的な貨物輸送の拡大と代替パワートレインシステムへの移行という大きな商機に対応するため、モビリティ事業セクター内の商用車向け事業を改めて再編する構えも見せている。
充電&水素充填ステーションを着実に、より早く拡充する必要がある
この事業再編について2025年1月より商用車・オフロード担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるヤン・オリバー・ロール氏は、「重要な専門能力を新しいビジネスユニットに集約し、トラックおよびオフハイウェイ用途向けシステム開発および製品・ポートフォリオ管理・拡大を実施します。
私たちは、この新体制がお客様に大きなメリットをもたらすと確信しています。当社はその実現に向けてパワートレインの多様性とテクノロジーの中立性に注力しています。
というのはボッシュの社内予測によると、2030年には世界全体で新規登録される6トン以上の商用車の約20%が電動パワートレインを搭載し、燃料電池のシェアは約3%になると想定しているからです。また、2035年までにトラックの3台に1台がバッテリーを、10台に1台が燃料電池を搭載し、数は少ないものの水素エンジンも走行し始めるだろうと想定しています。
そうしたなかで明確なのは、適切なインフラが整備されて初めて、貨物輸送は電動化できるということです。 そのためにはドイツと欧州市場に於いて、充電ステーションと水素充填ステーションを着実に、より早く拡充する必要があります」と説明した。
つまりボッシュでは、様々なパワートレイン テクノロジーは互いに競合するものではなく、幅広いポートフォリオによって、それぞれの用途に最適なソリューションを決定する流れになると考えているようだ。
その考えのもと、ボッシュはバッテリー、燃料電池、水素エンジンのパワートレイン テクノロジーの開発を進めるだけでなく、最新の内燃機関の効率もさらに高めつつ、合成燃料対応にも備えるなど、多角的な取り組みのなかで気候変動の緩和に貢献していこうとする姿勢を見せている。
車載コンピューターを統合しつつ物流管理サービスも活用していくべき
さてそんなボッシュは、IAA TRANSPORTATIONに於いて最新の貨物輸送に関する上記のような自社の考え方、またそこから生み出される革新技術やソリューションを紹介している。
例えば中国でのボッシュは、重量18~49トンの大型商用車向けにモーター、トランスミッション、クラッチアクチュエーター、インバーター、ディファレンシャルギアを一体化したeAxleの量産を開始している。
同ソリューションは、バッテリー式電気自動車と燃料電池電気自動車の両方に適したものとしており、同技術を活かしてインドでは、水素エンジンを搭載した最初のテスト車両が走行しているという。ここでボッシュは、これらの車両向けの燃焼噴射システム、センサー、タンクバルブ、ソフトウェアを含むコントロールユニットなどのコンポーネントを供給している。
対して米国では、ボッシュとFirstElement Fuel社が、2025年にカリフォルニアで初めて稼働するクライオポンプの開発に取り組んでいる。この新しいポンプは商用車への燃料充填をより簡単かつ迅速にするもので、わずか10分で1,000kmの走行に必要な水素を充填できる。
なお、このような動力ユニットの取り組みと等しく、運転支援技術もボッシュの商用車戦略で重要な領域であり続けている。ボッシュの独自調査によると、大型トラックによる事故の約8件に1件は車線維持支援システムによって回避することができきるとし、この結果、人命を救うだけでなく、輸送会社の物的損害コストの回避に繫がるとしている。
更にボッシュのもうひとつの重要な運転支援システムは、大型トラック向けに燃費効率を高め、排出ガスの低減運転を可能にするエレクトロニック・ホライズンだという。
このシステムは、地形、カーブ半径、道路標識データ、トラックの運動エネルギーを利用を総合的に判断し、車両速度を周辺環境に適応させるもの。内燃機関を搭載した商用車では、燃費を最大5%向上し、CO2排出量を削減することができるため、既に100万台以上の車両にボッシュのエレクトロニック・ホライズン・システムを搭載していくことに成功した。
最後にソフトウェア・ディファインド・モビリティ技術は、商用車にも欠かせない搭載機能のひとつとなっている。但し商用車の場合は、既にネットワーク化サービスやフリート管理向けソリューションが拡大していることから、車載コンピューターの数を減らし、車両のE/Eアーキテクチャの複雑性を低減させていくことが肝になるとした。
同社によると、少なくとも現在、車両機能は複数の異なるコンピューターに分散しているが、いずれそれらは数台の車載コンピューターに統合される。そうした流れのなかでボッシュは、車載のコントロールユニットを活用。モビリティ単体のみならず、物流管理サービスも可能な限り効率的に使用し、幅広いデータベースサービスのを活用。ダウンタイムを最小限に抑えることに腐心していると畳み掛けている。