独ロバート・ボッシュGmbHは9月13日(独・中央時間)、クルマを走行させる動力源として燃料電池ユニットを搭載した小型商用車の走行テストを始動させた事を発表した。( 坂上 賢治 )
本来、商品物流等で使われる小型商用車両は、排出ガスゼロのパワートレインを搭載しているモノが理想的だ。しかしこうした商用車両は航続距離自体が少なく成りがちで、また車両自体が重くなれば成る程、バッテリーが使用上の限界を迎えて限界点に到達する事になる。
そこでボッシュでは、燃料電池(FC)の動力ユニットを搭載した2台の小型商用車を用いて、路上に於ける試験走行を推し進めている。なお、このプロジェクトに於けるパートナー企業はABT e−Line GmbHで、両社は共同で車両設計・開発・実証を繰り返してきた。
このように2社の協力体制を介して2台のFC商用車による実証を積み重ねていく構えで、その研究・開発過程から、燃料電池ユニットが小型商用車に適した駆動ソリューションになり得る可能性が高い事が分かって来たという。
そんな2台の車両に搭載した燃料電池システムは、ボッシュ製のコンポーネント類で構成されている。例えば燃料電池スタック、水素ガスインジェクター、水素循環ブロワを含む水素供給モジュール、これらをコントロールするユニット、電動エアコンプレッサー、水素貯蔵タンク、更に多数のセンサー類がある。
またテスト車両自体は、電動モーターを載せた市販型の小型商用車が基本骨格になっており、バッテリーを含む周辺機器類は、先の燃料電池システムと5個の水素貯蔵タンク(10kg超)と小型のリチウムイオンバッテリーに置き換えた。
ボッシュでパワートレイン・ソリューション事業を担うウヴェ・ガクシュタッター部長は「複雑な燃料電池コンポーネントを、どのように既存のBEVに搭載するかが最初の課題でした。
パートナーのABT e−Line GmbHは、冷却システム、車両制御システム、電気システムの調整を受け持ち。対してボッシュ側は、燃料電池システムの設計と水素貯蔵タンクの車両への組み込み、これらに関連する制御システムの開発を担いました。
そして実証走行に必要な技術テストを経て、ドイツ国内に於いて車両の公道走行が正式に承認されたところです」と話した。
また更に「当社が開発した燃料電池用コンポーネントは、既に量産体制に入っているのですが、他方で開発自体は今も継続し続けています。
2台のテスト車両はクラウドと接続し、データは開発担当者のコンピューターにリアルタイムで送られ、テストベンチで測定した値を補完できるようにしています。
ボッシュはこうした実証によるデータ収集を繰り返す事で従来よりも迅速に、より優れたコンポーネントを開発してお客様へ提供出来るようになります。
一方で、この燃料技術が浸透するためには、更なるステップも必要です。今後も官民が一丸となって取り組み、水素技術普及を妨げとなるものを取り除いていく必要があります。例えば水素タンクのインフラ整備やグリーン水素の量産は一丸となった取り組みが必要です」と語っている。
そのようなFCVの研究・開発に係る今後の方向についてボッシュの取締役会メンバー兼モビリティソリューションズ事業セクターを統括するマルクス・ハイン部門長は、「燃料電池は航続距離の延長と燃料補給時間の短縮を可能にし、長距離移動をより経済的なものとします。
またこのプロジェクトでは既に数々の重要な知見も得られています。クルマは小型車両でありながら最大540キロメートルの走行が可能で、その走行距離を稼ぐための燃料を6分間で完全充填出来ます。
それゆえ燃料電池車は、将来的に日中に長距離を移動し、夕方に整備工場や倉庫に戻るような小型商用車の運用管理者にとって、BEVに次ぐ重要な選択肢のひとつとなるでしょう」と結んでいる。