独・アウディAGは3月9日、ドイツのロイナ(ザクセン=アンハルト州)のGlobal Bioenergies S.A.と共同で、最初のエンジンテストを実施するために必要な60ℓ(過去最高値)の「Audi e-gasoline(eガソリン)」の生成に成功した。( 坂上 賢治 )
アウディAGは予てより、再生可能エネルギーを介して生成される合成燃料「Audi e-gas」、「Audi e-gasoline(独名:Audi e-benzin)」及び「Audi e-diesel」の可能性を追い求めるべく、同社が掲げる「e-fuel戦略」を強力に推進してきた。
それが今回、精製量でテスト運用段階に達したことについて同社サステナブル プロダクト デベロップメント部門責任者のライナー マンゴールド氏は、「すべてのAudi e-fuelと同様に、この新燃料も数多くの利点を備えています。
具体的には原油に依存せず、既存のインフラと互換性があり、未来のクローズドカーボンサイクル実現を提供します。
またAudi e-gasolineは、本質的に液体イソオクタン(オクタンの構造異性体/C8H18)です。さらに燃料内に硫黄とベンゼンが含まれていないため、燃焼時に汚染物質が少ないことも大きな特徴のひとつです」と話す。
ちなみにこの新燃料は現在、バイオマスから二段階のプロセスを経て製造されている。最初のステップは、Global Bioenergiesのデモプラントで、ガス状のイソブテン(C4H8)を製造する。
さらに第二ステップで、ロイナにあるフラウンホーファーの化学・バイオ技術プロセスセンター(CBP)で、水素を加えることでイソブテンをイソオクタンに変換するという流れだ。
目下、アウディのエンジニアたちは、テストエンジンでこの再生可能燃料の燃焼及びエミッション特性を調査しているところだとしており、同社によると、このAudi e-gasolineを用いることでエンジン圧縮比を高め、さらに燃焼効率を向上させる可能性があるとしている。
例えばAudi g-tronモデルの場合、CO2排出量を、従来の内燃エンジンと比較して最大80%(純粋なe-gasモード<CNG>により、ウェルトゥホイール<原料採掘から使用まで>基準で)削減することが可能だとしている。
こうした取り組みについてアウディAGは、「Audi e-fuelは実験室における単なる研究対象ではありません。2013年以来、ドイツのヴェルルテ(エムスラント)にある“power-to-gas”(電力をガスに変換する)プラントで再生可能なAudi e-gasを市場に提供してきました。
またこれを燃料とするAudi g-tronモデルを購入したお客様は、CNGステーションで燃料を補給した場合、通常の燃料代以外のコスト負担は要求されません。
さらに当社は補給分と同じ量のAudi e-gasを公共の天然ガス網に供給することによって、グリーン燃料のメリットを拡大させ、その分に相当するCO2排出量の削減にも繋げています。
今回のAudi e-gasolineも、そんなAudi e-gasと同様、Audi e-fuel戦略の一部となっているものです。実際、ドイツのドレスデンでは、アウディの協力パートナーであるSunfireが2014年後半から2016年10月まで、この目的のためにパイロットプラントを運用してきた実績を持っています」と語る。
加えて同社は現在、スイスのアーラウ(ラウフェンブルク)で、Audi e-dieselの生産も計画中で、パートナーであるIneratec GmbH及びEnergiedienst Holding AGと共同で新しいパイロットプラントから年間約40万ℓのAudi e-dieselを生産する予定。なおここでは水力発電をエネルギー源として使用していく構えだ。(MOTOR CARDSより転載 )