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2024年5月30日【イベント】

アストンマーティン、ヴァンテージ GT3を青山で特別展示

坂上 賢治

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スーパーGT鈴鹿ラウンド開幕直前の5月29日、アストンマーティン ジャパンは東京・青山のブランド拠点「The House of Aston Martin Aoyama( アストンマーティン青山ハウス )」で同レースに挑む新型〝ヴァンテージ GT3〟の1日限りの特別展示を行った。

 

また展示当日は、D’station Racing(ディーステーション レーシング)マネージングディレクターでありながらもプロレーシングドライバーとしても活躍する藤井誠暢選手( Tomonobu Fujii )と、D’station Racing第3ドライバーのチャーリー・ファグ選手( Charlie Fagg )が東京・青山に来訪。スーパーGT参戦に係る取り組み内容や、WEC(FIA世界耐久選手権シリーズ)での新たなGT3マシンの活躍の可能性についても訊くことができた。

 

 

インタビューに応じてくれた藤井選手は、スーパーGTやスーパー耐久を活動の軸に据えつつ、ル・マン24時間、ニュルブルクリンク24時間、デイトナ24時間、ドバイ24時間などのWECにも2021年から参戦しており、その一方で2017年からはD’station Racingのマネージングディレクターも兼任。国際的なレースシーンに於ける活動では表彰台の常連であり、既にル・マン24時間でも6位入賞の実績を持つ。

 

一方、ファグ選手は1999年生まれのイギリス人ドライバーで、D’station Racingの第3ドライバーとしてSUPER GTに参戦。2022年のWECでD’station Racingのドライバーとしてステアリングを握り、富士戦では表彰台獲得に貢献。2023年はインターナショナルGTオープンのシリーズチャンピオン獲得とスパ24時間でクラス優勝を果たしている。

 

ちなみに拠点に展示された新型ヴァンテージGT3は、アストンマーティン・レーシング( AMR )とアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ( AMPT )の初コラボレーションから誕生した純レーシングマシン。

 

FIA世界耐久選手権のLMGT3カテゴリーに出場するVantage GT3は、2012年から2023年の間に52回のクラス優勝と11回の世界選手権タイトル獲得という目覚ましい記録を残したヴァンテージGTEの後継マシンとなるもの。 

 

 

新型ヴァンテージGT3は、2024年に新設されたLMGT3カテゴリーも含めて、FIA GT3クラスの全レギュレーションに適合するGTカーとなるべく、FIA世界耐久選手権( WEC )、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権( IMSA )、ファナテックGTワールド チャレンジ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ( ELMS )、ニュルブルクリンク耐久シリーズ( NLS )などに参戦可能なよう、昨今のフェラーリ296系と同じくグループGT3規定への最適化が念頭に置かれて開発されたクルマだ。

 

日本国内では、WEC世界耐久選手権やGTワールドチャレンジ・アジア等の海外レース、更にはスーパー耐久等国内レースでも活躍を続けているD’station Racingの777号車「D’station Vantage GT3」として今季よりGT300クラスへの復帰参戦を果たしており(2024年1月11日に参戦を正式発表)、開幕戦では緒戦ならではのマイナートラブルなどがありつつも、アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボとなった新型モデルは先代モデル比から大きく進化を遂げた。

 

その設計・製作は先代のGTEと同じく、英レーシングコンストラクターのプロドライブ( Prodrive )が携わるもので、ボディスキン内側のアルミ製軽量シャシーを筆頭にスチール製ロールケージ、Xトラック製6速シーケンシャルトランスミッション、アルコン製クラッチやブレーキなど主要部品の多くを先代から引き継いでいる。

 

従って2018年に本格デビューを果たした「ヴァンテージ GTE/GT3」への総合的な進化版にあたるモデルとなり、これらのモデルや新型ロードカー「ヴァンテージ」と同一アーキテクチャに立脚して開発された一方で、ノーズからテールまでのエアロダイナミクスパッケージが一新され、サスペンションが全面的に見直され、最先端のエレクトロニクス技術を取り込んだことで、そのポテンシャルを大きく高めているという。

 

 

新型ヴァンテージ GT3の開発は、AMPTが厳密な目標群を設定し、AMRがそれらを実現するというかたちで改良が進められ、従来モデルで課題となっていたハンドリング特性を中心に、プロ・アマ両方のドライバーにとって可能な限り運転しやすい車両にすることを目指した。

 

例えば外観では、FIAが規定したダウンフォース規制の枠内で優れたエアロダイナミクス性能を実現させられるよう流体力学の理論に沿った機能的なフォルムを形成。例えば新たなノーズラインにより広められたグリル形状は、ブレーキ冷却のために流す空気量を増やし、あらかじめ想定したパフォーマンスを確保できるものとしている。

 

また実際に新型ヴァンテージ GT3は、WECシーズンに於いては最高のスタートを切っている。先のカタールでHoRに次ぐ3位でフィニッシュ。続くイモラでもポイントを獲得した。

 

アストンマーティンの耐久モータースポーツ部門責任者を務めるアダム・カーター氏は、「新型アストンマーティン ヴァンテージ GT3 は、世界各国シリーズ戦で、高い競争力を発揮し続けています。

 

WECとIMSAの両方ですでに好調なスタートを切っており、個々に異なるコンディション、様々なサーキット、多様なレースコンディション、複数のタイヤブランドがこの車の強みを理解し始めています。これらは全て6月のカレンダーに於いて役立つデータです。同月には少なくとも3つ以上の主要な24時間レースに挑みます。そのうちの1つはル・マン24時間レースです」と述べている。

 

写真左からD’station Racingのドライバーであり、マネージングディレクターも務める藤井誠暢選手、右は同第3ドライバーのチャーリー・ファグ選手

 

さて今回、青山で車両展示したD’station Racingチームは、そもそもWECを筆頭に国際舞台で経験と蓄積を重ねてきたトップチームであるが、今年1月11日にGT300復帰を宣言し、既にシリーズ緒戦を消化した。

 

ただGTクラスで3度のWECチャンピオンに輝いたアストンマーティンのワークスドライバー、マルコ・ソーレンセン選手(デンマーク)が、日本のスーパーGTの開催スケジュールと合わず、D’station Racingとしてのタイトル獲得の可能性を最大限に高めるべくWECプログラムを優先すると発表。

 

ソーレンセン選手は、フランスとヨーロッパのGT4タイトル獲得者であるエルワン・バスタード選手(フランス)と、スパ24時間レースクラス優勝者のクレマン・マテウ選手(フランス)が加わりWECに専念。

 

そこで4月30日、5月3日から富士スピードウェイ( 静岡県 )の第2戦から第3ドライバーとしてチャーリー・ファグ選手の登録を発表。ファグ選手は、2022年からD’station RacingでWECに参戦。富士ではLM-GTE Amクラスの3位表彰台獲得に貢献したドライバーだ。

 

 

この新型ヴァンテージ GT3の実力について藤井誠暢選手は、かつて新型ヴァンテージをベースにしたレーシングカーにはルマン24時間や世界耐久選手権(WEC)などを戦うヴァンテージGTEと、ヴァンテージGT3のふたつがあった。

 

このうちヴァンテージGTEは、ロードカーのヴァンテージと並行して開発されており、しかもデビュー5戦目でWECで初優勝を飾った。それくらいヴァンテージGTEはポテンシャルが高かった。

 

また自身も今年(2024年)のWECシリーズを戦っており、そうした活動のなかで日本国内に於いても、刷新された新型ヴァンテージGT3でスーパーGTに再び参戦することになったという。

 

そもそも新型ヴァンテージは、その個体自体が非常にポテンシャルがあるクルマで、前回の富士でファステストラップが出たり、予選でも良いタイムが出せる素直なクルマであるため、今週の鈴鹿で好結果が望める見込みだけでなく、年間のチャンピオンシップ争いでも良い結果が出せると話す。

 

また、その新型ヴァンテージGT3の強みについては、スタンダードモデルの段階で50対50の動的バランスが取れていることを筆頭に、レーシングカーとして潜在能力がとても高いという。

 

 

またファグ選手は、特に足まわりの設計やエアロダイナミクス性能が改善されて、コーナリング時のパフォーマンスが前モデルに対して飛躍的に向上した。世界中の様々な選手権でも良い結果が出るような車両になっている。

 

またスーパーGTでは、持ち前のエアロ性能やステビリティの高さに加え、ジョイントしているダンロップから路面ミュー(μ/摩擦係数)が高い日本のサーキットに合わせた前後異径サイズ(フロント:300/680 R18、リヤ:330/710 R18)のGT3専用タイヤが提供されており、それがラップタイムに現れていると説明してくれた。

 

そんなスーパーGTへの抱負について藤井選手・ファグ選手共に、まずは新ヴァンテージ GT3で1勝するのが今年の1番の目標。前半2戦は歯車が少し噛み合ってないが、クルマのポテンシャルは充分。第一目標の達成は近いと思っていると語っていた。

 

既にスーパーGTの緒戦で持ち前のスピードは証明しており、その可能性は想像以上に近く、次戦以降でそれが達成されることに期待したい。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。