国立大学法人筑波大学 医学医療系 市川政雄教授らの研究グループは、2011年9月から警察庁等が連携して全国に整備している「ゾーン30」が自転車と歩行者の交通外傷の発生に与えた影響について分析を行った。(坂上 賢治)
2005年から2016年の月ごとの全国の交通外傷(死亡・重傷)データを分析したところ、「ゾーン30」の導入後、生活道路における人口当たりの自転車と歩行者の交通外傷率がそれ以外の道路における交通外傷率と比べ大きく低下しており、2016年12月までに1,704人の自転車と歩行者の死亡・重傷が予防されたと推定している。
このことから、最高速度30km/h以下のみを要件とする比較的設定しやすいゾーンを行政や地域が協力して広めることは、国レベルで、自転車利用者や歩行者の交通外傷予防に大きな効果をもたらすことが示唆された。
「ゾーン30」とは警察庁等が連携して全国に整備する自動車通行よりも自転車や徒歩が優先されるべき生活道路における交通安全確保を目的として、最高速度30km/h以下の区域規制を実施するとともに、必要に応じてその他の対策を組み合わせるものだ。
ゾーン内における走行速度のと抑制、通過交通(抜け道としての通行)の抑制・排除をポイントに、例えば、ゾーン入り口には標識・表示を設置、ゾーン内では区間規制を設置する他、中央線を抹消し路側帯の設置・拡幅を行う。また、ハンプと呼ばれる目の錯覚を利用した物理的デバイスの設置を行っている。
地域の要望や交通量・交通事故の発生状況等をもとに、主として生活道路が集まった地域に通学路が含まれている場合などにおいて整備が進められている。当初の整備目標であった全国約3000か所を達成し、平成30年年末の時点で3649か所の整備を完了している。