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2018年9月30日【オピニオン】

米・テスラ、マスク氏を失うことを恐れてSECと和解

坂上 賢治

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テスラ・ロゴ

 

 米・テスラ社(本社:米国カリフォルニア州パロアルト、会長兼CEO:イーロン・マスク)のイーロン・マスク氏は、連邦政府機関の米証券取引委員会(SEC)から提訴されていた事案について米国時間の9月29日、2000万ドル(およそ23億円)の制裁金支払いと、マスク氏がテスラ社取締役会の会長職を辞任するというふたつの条件でSECと和解した。( 坂上 賢治 )

 

 

 これは米国時間の8月7日、自社株式を非公開にする可能性についてテスラ従業員に向けた電子メールで示唆した上で、同じ日に自身のツイッターアカウント上で「ひと株あたり420ドルでテスラ社の株式を非公開化できないかと考えている。資金は確保した」とのツイートを発信したことに起因するもの。

その後、同発言からわずか2週間余りしか経っていない8月24日(米国時間)になって「今後も自社を公開企業として維持していく」と自らの企業ブログ上で改めて宣言した。

 

 

 これに対してSECは9月27日、「これら資金にまつわる発言を、マスク氏はサウジアラビア政府系ファンドとの交渉に基づくものだと主張していたが、我々の調査によると実際には資金源との交渉の事実は認められなかった。

それにも関わらず株式市場に誤った情報を与えて混乱をもたらし結果、株主に損害を与えた。この一連のマスク氏の言動は詐欺行為を禁止する連邦証券取引法違反の疑いがある。したがってマスク氏が、上場企業であるテスラ社の経営陣から排除されることを望む」との内容を訴状に記した。

 

 

 これを受けたテスラ社は当初、詐欺容疑に関わる同訴状は不当な提訴だとしてマスク氏を擁護する声明を出していたのだが、その後、同騒動によって自らの広告等であるマスク氏を失うことに反応。マスク氏がテスラ社の会長を29日を起点に45日以内に辞任すること。今後3年間は再び会長職に就任しないこと。併せて2000万ドルの制裁金を支払うという条件でSECと和解した。

 

同じくマスク氏も、SECの訴状に対して認否を明らかにしないことを条件に2000万ドルの制裁金を支払う。なお会長職は辞任するもののマスク氏のCEO職は継続される。

 

これを踏まえテスラ社は、自社との関わりが薄く独立した立ち位置の取締役2名を新たに任命し、取締役会が新たに設ける独立委員会が今後、マスク氏の言動などを監視・監督する役割を担うとした。また新たな会長人事も速やかに行われる。但しマスク氏を監視・監督し、さらに資金不足の同事業へ潤沢な資金を調達・確保し、ガバナンス(企業統治)改革を確実に実現できる人材を発掘するには些か時間が掛かりそうだ。( MOTOR CARSから転載  )

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。