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2024年6月3日【トピックス】

アリックスパートナーズ、2024年EV消費意識調査

NEXT MOBILITY編集部

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グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズは6月3日、「2024年版 電気自動車に関する消費者意識調査」の結果を発表した。それによると電気自動車(BEV)の長期的な見通しは依然として良好であるものの、BEVの堅実な成長の実現には障害が存在することが浮き彫りになったという。

 

消費者のBEV購入意欲

電気自動車(以下、BEV) の購入意向は世界で二分化している。中国では消費者のBEV 購入意向は継続的に増加している一方、米国、欧州、日本の消費者の間ではBEV購入意向は停滞傾向にある。

 

 
※フランス、イタリアは2019年調査では対象外、サウジアラビア、インドは2019年、2021年調査では対象外のためデータは無し

 

2021年の調査結果と比較すると、BEVを購入する可能性が「非常に高い」、または「中程度」と回答した人の割合は、米国では2021年と比較して横ばいの35%、欧州ではわずか1%ポイント増の43%となった。これに対し、中国では、2021年の85%から97%に増加しました。日本においてはBEVの購入意向は2019年のレベルまで戻っている。

 

BEVの長期的な見通しは依然として良好。今回の調査では、米国と欧州の消費者のおよそ半数(米国48%、欧州43%)が、2035年までにBEVを購入する可能性が「非常に高い」、または「中程度」と回答しています。一方、日本の消費者の回答は21%に留まり、サウジアラビア(85%)、インド(93%)ではBEVの購買意欲が高く、消費が加速する見通し。

 

BEV購入時の懸念事項

BEV購入時の懸念事項としては、グローバルで共通して、充電インフラ、航続距離、充電時間、サービスセンター等が挙げられる。米国の調査では、充電インフラ(43%)とバッテリー航続距離(43%)が同率でトップ、次いで充電時間(38%)、購入価格(33%)でした。加えて、自宅充電への懸念が2021年の19%から27%に増加した。

 

 

日本では、およそ半数が充電インフラ(52%)、バッテリー性能(47%)、充電時間(45%)に懸念を示しており、そのほか航続距離や自宅充電を挙げている。

 

米国や日本とは対照的に、中国の消費者は充電インフラに対してさほど懸念していないという結果となった。充電インフラ(30%)、充電時間(29%)への懸念は米国と日本と比較してそれぞれ約10%ポイント以上低くなっている。

 

 

上記のようなBEVへの懸念もあり、米国のBEV購入意向者はむしろPHEVに関心を寄せている。米国では、BEVを検討する可能性が「非常に高い」、または「中程度」と回答した人のうち83%が次の購入車の選択肢としてPHEVに興味を示している。

 

アリックスパートナーズのアドバンスト・モビリティ・プラクティスのグローバル共同リーダーであるアルン・クマールは、「米国と欧州では、BEVを購入する意向のある消費者が最近はPHEVに関心を寄せています。PHEVは充電と航続距離の懸念を解消し、消費者の短期的なニーズを満たす正当な代替手段となっています。このような消費者志向の変化は、従来の自動車メーカー、サプライヤー、ディーラーにとって、BEV移行に対抗するためのリソースを投入する上で、非常に大きな課題となります」と述べている。

 

中国ブランドについて
中国のBEVメーカーは、中国の国内市場における競争を経て、グローバル展開に向けた基礎固めを着実に進めている。調査対象者のうち、ドイツ、米国、日本を含む成熟市場の消費者の47%から71%が、「少なくとも1つの中国ブランドを知っている」と回答し、BYDがその先頭を走っている。( 調査対象は以下の14ブランドとなる。BYD, GAC/Aion, Wuling, Chang’an, NIO, Xpeng, Zeekr, Chery, Leap Motors, Hozon, Red Flag, BAIC, Li Auto, Great Wall )

 

 

消費者が中国BEVメーカー車の購入を検討しているか聞いてみると、米国と欧州では7割前後が「中国以外の同様のBEVメーカーよりも価格が20%安い場合には中国のBEVブランドを検討する」と回答した。日本においては安価な選択肢として中国のBEVブランドを購入検討する消費者はおよそ3割に留まった。

 

価格は消費者が中国製BEVを支持する大きな要因になり得るが、信頼性、サービス、ブランドイメージなどの懸念は消費者の購入の阻害要因になる。一方、これらの懸念が払しょくされている中国国内では、中国製BEVブランドは製品の完成度が高く、単なる低価格オプションではないと見られている。

 

 

アリックスパートナーズの自動車・製造業プラクティスのグローバル共同リーダーであるマーク・ウェイクフィールドは、「中国のBEV市場は今や成熟期の様相を呈しており、同国の消費者はBEVを当たり前の選択肢と見なしています。この背景には、整備されたBEV充電インフラのエコシステムや、ソフトウェアで定義されたハイテクで魅力的な自動車など、いくつかの要因があります。一方、米国と欧州市場では、BEVはまだアーリーアダプター(早期導入層)を満足させているに過ぎません」と述べている。

 

またアリックスパートナーズのマネージング・ディレクターで自動車・製造業プラクティス日本チームリーダーである鈴木智之氏は、「日本市場において消費者が電気自動車(BEV)へ移行することは引き続きチャレンジングであり、大きな壁が立ちはだかっています。充電インフラ拡大、車両コスト低下、EV整備士拡大、電池再利用、中古市場の成熟といった課題を日本の社会全体で解決する必要があり、EV化に向けて国全体で取り組むタイミングといえます」と結んでいる。

 

本調査の詳細(英語)は当該URLの通り。

 

【調査概要】

実施時期: 2024年3月28日~4月10日

 

対象: 世界のBEV販売台数の8割以上を占める8市場の消費者計9,000人を対象。中国1,000名、フランス1,000名、ドイツ1,000名、インド1,000名、イタリア1,000名、日本1,000名、イギリス1,000名、アメリカ2,000名(カリフォルニア1,000名、その他1,000名)

 

内容: BEV や PHEV に対する一般的な関心、価格に対する感度、中国自動車メーカーブランドに対する認知度や検討度

 

アリックスパートナーズについて

1981年設立。ニューヨークに本社を構える結果重視型のグローバルコンサルティング会社。企業再生案件や緊急性が高く複雑な課題の解決支援を強みとしている。民間企業に加え、法律事務所、投資銀行、プライベートエクイティなど多岐にわたるクライアントを持つ。世界で約30都市に事務所を展開。日本オフィスの設立は2005年。日本語ウェブサイトは https://www.alixpartners.com/jp/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。