AGCは、同社が独自で開発したビジネス課題の設定手法「因果連鎖分析」を、JX金属グループに提供し、導入を支援すると、2020年12月21日発表した。
近年企業に存在する膨大かつ複雑なビッグデータをいかに有効活用できるかが、企業の競争力を高める上で重要になってきている。統計学やAI、IT技術などビッグデータを分析するための手法は多数存在するものの、分析の前提となるビジネス課題が適切に設定されておらず、様々な業種でせっかくのビッグデータが有効活用できていない事例が数多く見受けられる。
このためAGCは、ビジネス課題を設定するための手法として「因果連鎖分析」を2019年に確立した。以来「因果連鎖分析を用いた課題設定勉強会」を行い、製造業を中心に本手法を広めることで、幅広い業種のビジネス課題解決に貢献してきた。また同年より、データサイエンス分野で日本を牽引する滋賀大学データサイエンス学部に本手法を導入しその教育を行うことで、将来を担うデータサイエンティストの育成にも注力してきた。
今般、JX金属グループのJX金属苫小牧ケミカルでの改善事例の解析に因果連鎖分析を導入し、従来手法でデータ解析するよりも容易に燃焼設備の最適操業条件を見つけ出すことができた。なお本事例は、滋賀大学データサイエンス学部河本薫教授ゼミナールで、因果連鎖分析を用いた製造業工程解析のケーススタディとして使用される。
AGCグループは、経営方針 AGC plus のもと、デジタル技術を活用しビジネスプロセスの変革を行う”スマートAGC”を推進している。製造・研究開発・営業等あらゆる業務のビッグデータを活用し、業務の更なる効率化やお客様への新たな付加価値の提供を目指していくとしている。
■因果連鎖分析
因果連鎖分析は、個々人の経験や勘に基づく言語化できていない暗黙知を含め、課題解決に結びつく可能性のある諸要因を「因果の連鎖」という視点から整理し、可視化する手法。諸要因の関係性が可視化されることで、ビジネス課題の設定に向けた合意形成が進めやすく、分析対象とすべきデータも明確になる。因果連鎖分析の手順は以下の通り。
①業務プロセス把握:ヒアリングを行い、因果連鎖図(下図参照)を作成。正確に情報を共有する
②データ存在確認:すぐ手に入るデータ、取得に時間・コストがかかるデータ、未取得のデータをマーキングする
③課題設定:業務改善や意思決定のための重要なデータを明らかにする
化学プラントにおける因果連鎖図の例(模式図)