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2024年7月17日【CASE】

台湾発の駐車場シェア企業、軒先の全株式を取得

坂上 賢治

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軒先の全株式取得で140万人の会員を誇るアジア最大の駐車場プラットフォームへ

 

駐車場シェアリングサービス「USPACE」を運営するユースペースは7月17日、スペースシェアリングベンチャーの軒先の全株式を取得した。この買収により、USPACEは、台湾と日本で合計2,000以上の駐車場と約9万の駐車台数(車室数)を管理し、140万人以上の会員を持つアジア最大のスマート駐車場プラットフォームとなった。

 

今回、同社が軒先の全株式買収に動いたのは、日本で駐車場のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでおらず、多くの駐車場が未だにアナログな管理方法を採用していることにある。そのため、利用者は空きスペースの検索や予約に時間を要し、管理者にとっても駐車場の管理に手間とコストのかかることが課題となっていた。

 

そこで先の通り、駐車場シェアリングサービス「USPACE」を配するユースペースは、この課題を解決するためIoT技術やAIを活用して駐車スペースの利用効率を向上させることを目指すべく、広範な駐車場ネットワークを保有する軒先の全株式を取得することで、日本の駐車場DXを推進する決断に至った。

 

そんな同社は、個人宅やマンション、事業所などの空いているスペースを、アプリを通じて簡単に貸し出すことができるサービスを展開。ドライバーは、リアルタイムで駐車スペースの空き状況を検索し、1分単位での予約が可能となっている。また、オーナーは、アプリひとつで提供時間や価格の設定、予約や収益の管理ができる。

 

USPACEは、催事マッチングなど軒先の駐車需要開拓に係る営業力を活かす

 

こうして駐車場シェアのUSPACEは、2016年のサービス開始以来、年間収益は3~5倍に成長し、急速に規模を拡大してきた。2022年には、台湾の大手通信企業である台湾大哥大股份有限公司(台湾モバイル)から出資を受け、台湾の駐車場の効率化や、電気自動車の普及促進、二酸化炭素排出の削減を進める他、2020年に日本市場へ上陸。大手企業と連携するなど確実にシェアを拡大している。

 

その強みは、独自のAI深層アルゴリズムにより、車両のブランドや色を認識し、ユーザー情報を識別できる強みにある。また、AIを使ったチャットボットで顧客対応を全自動化し、管理効率を大幅に向上させることができる。これにより、80%以上の顧客対応を削減することができ、人件費を抑えながら、サービスの品質とスピードを大幅に向上させることに成功した。

 

一方で軒先は、民家や空き地、休日の法人駐車場等の遊休地を有料予約制の駐車場として有効活用するサービス「軒先パーキング」を運営している。

 

「軒先パーキング」は、日本初の駐車場シェアリングサービスであり、約67万人の会員と33,000箇所の駐車スペースを保有している。特に、観光地やスポーツ関連施設、イベント会場周辺など、駐車需要が集中する場所での駐車場マッチングに強みを持つ。

両者は今連携により、双方のプラットフォームで、両社の駐車場を導入・公開する予定という。具体的には、USPACE上でも、軒先パーキングの広範な駐車場ネットワークが予約できるようになる。

 

軒先は、駐車場シェアサービスを超えた地域事業の拡大を視野に据える

 

また軒先パーキングは、これまで日単位での料金設定を採用していましたが、USPACEのIoT技術により、即時に駐車スペースの検索と予約ができるようになる。また、柔軟な料金設定も可能になるなど、消費者にとって更なるユーザビリティの向上が期待できる。

 

なお、軒先の経験豊富な社員は引き続き在籍し、市場開拓をより効率的かつ迅速に進める予定としている。USPACEのサービスについても、更にユーザーに寄り添ったものへと変化させていく考えだ。また今後、一定割合の株式が、上場予定の台湾にある親会社Uspace Tech Co., Ltd.(悠勢科技股份有限公司)の株式に転換される予定なっている。

 

さて両者の今後の展望では、USPACEが日本市場での駐車場シェアサービスの普及を皮切りに、アジア全域で市場シェア拡大を目指す。

 

将来的には、既存の駐車場シェアサービスを進化させていくだけでなく、EV充電ステーション、ガソリンスタンド、洗車サービス、カー用品ECサイト、自動車保険など幅広い分野での事業展開を計画している。これらの新たな事業を通じて、アジア最大のスマート駐車管理プラットフォームとなり、より便利な社会の実現に寄与せていく構えだ。

 

ユースペース代表の宋捷仁氏は、台湾の40倍にもなる日本市場の開拓に意欲

 

両社の連携について、USPACEを展開するユースペース代表取締役の宋捷仁氏は、「今回のパートナーシップは、収益と市場シェアを単純に統合するだけでなく、駐車場市場における未来の可能性とモビリティサービスの重要な戦略的な展開でもあります。

 

当社が日本市場での展開を優先する理由、および今が適切なタイミングであると考える理由は、市場規模が台湾の40倍であり、駐車場DXが遅れている点、そして日本政府がDXを推進している点です。

 

USPACEが開発した、車型、車種、ブランドを識別できる「AIナンバープレート認識技術」と「スマートフロアロック」は、日本におけるスマートパーキングモデルを変革すると考えています。

 

今後も当社のさまざまな先端技術を導入することで、人件費が高い日本において、より良いソリューションを提供し、モバイルサービスのDXを加速させることを確信しています」と述べた。

 

軒先・代表の西浦氏はサービスの融合で新ビジネスチャンスの拡大に期待

 

対して軒先で代表取締役を務める西浦明子氏は、「弊社は2008年、まだシェアリングエコノミーという概念が日本に存在しない黎明期から一貫してこの領域に携わってきました。

 

創業から10年以上経ち、シェアする文化やライフスタイルが徐々に浸透しはじめ、今や成長期に移行しつつあります。今回の提携により、更なる価値を提供できることを大変嬉しく思います。

 

USPACEの技術力と私たちのサービスの融合により、新たなビジネスチャンスが広がり、日本のシェアリングサービスが一層発展し盛り上がることを期待しています」と話している。

 

台湾モバイルは、国際市場への足掛かりとなる重要なマイルストーンと歓迎

 

ユースペースを采配するUspace Tech Co., Ltd.(悠勢科技股份有限公司)の親会社にあたる台湾大哥大股份有限公司(台湾モバイル)でChief Consumer Business Officerを務める林東閔氏は、「当社はシェアリングエコノミーを推進するため、2022年にUSPACEに2億元を出資し、30%の株式を取得して最大のリード投資者となりました。

 

自社の強みである通信、大規模データ、IoT(モノのインターネット)、および強力なカスタマーサービスを活用して、USPACEの台湾市場での拡大を支援しています。そうしたなかで今回、USPACEが、日本の軒先株式会社を買収したことは、両社にとって国際市場の拡大に向けた重要なマイルストーンです。

 

日本は世界第3位の経済大国であり、土地が狭く人口密度が高いため、駐車需要が非常に高い市場です。USPACEの先進的なスマート駐車技術を導入することで、日本の駐車場市場に変革をもたらし、ユーザーの駐車体験を向上させることができます。

 

今後もUSPACEとの連携を続け、相乗効果を発揮しながら、新たなパラダイムシフトを追求し、超5Gエコシステムおよび新サービスの展開を図っていきます」とコメントしている。

 

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株式会社ユースペース
利用者が1分単位で駐車でき、オーナーは空いているスペースを駐車場として登録出来るシェアリングサービス「USPACE」を運営している台湾発の企業。USPACEグループは、eMaaS(EV Mobility as a Services)エコシステムを拡大し、「USPACE駐車、UDRIVEテスラレンタカー、Ucharging電動車充電、GO空港送迎」などのサービスを通じて、様々な移動ニーズに対応している。将来的には、保険や電商などの分野にも進出し、アジア最大のスマート駐車管理プラットフォームとなることを目指している。

所在地:〒102-0074 東京都千代田区九段南3丁目4-5 202ビラ・アペックス市ヶ谷
代表者:代表取締役 宋捷仁
設立:2020年1月
URL:https://japan.uspace.city/

 

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軒先株式会社
だれでも簡単にお店が開ける「軒先ビジネス」、社会問題を解決する新たな駐車場のシェアシステム「軒先パーキング」、既存飲食店の空き時間を活用して開業できる「magari」など、複数のスペースシェアサービスを運営している日本国内におけるスペースシェアのパイオニア企業。
所在地 :〒107-0052 東京都港区赤坂8-4-14 青山タワープレイス8F
代表者 :代表取締役 西浦明子
設立 :2009年4月
URL:https://www.nokisaki.com/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。