ABボルボ傘下のボルボトラックは11月10日、化石燃料を使用しない鋼材を組み込んだ世界初の電気トラックを自社顧客へ提供し始めていると発表した。大型輸送車両のグローバルメーカーである同社が、この車両の量産を開始したのは今年9月、皮切りとなったのは44トンの大型BEV( 電気 )トラックである。( 坂上 賢治 )
化石燃料を介さない電気と水素によって作られる同鋼材は、スウェーデン当地のSSAB( スウェーデン鉄鋼株式会社 )が製造。この鋼材は、既存の鋼材製造のプロセスとは全く異なる新製法を介して作られ、市場提供されている。
現時点のボルボ製トラックで、該当鋼材を利活用している部位は、車体上で主要コンポーネント類が組み付けられる骨格部にあたるフレームレールに使用されている。今後、化石燃料を使用しない鋼材の供給総量が増えるに連れて、該当トラックのみならず、他の車両にも同じ鋼材が導入されていく予定だという。
なお今日、ボルボ製トラックの組立に使われる全素材の中で、およそ3割がリサイクル素材で構成されており、使用済みとなった後のトラックでは、その9割がリサイクル可能な素材だ。
従って今回の化石燃料を使わずに製造される鋼材は、これまでボルボ製トラックに使用されて来た〝リサイクル鋼材〟と順次、置き換えられていく。
ボルボトラックのジェシカ・サンドストロム製品管理担当シニア・バイス・プレジデントは「当社は、気候変動に係るパリ協定に深くコミットし、遅くとも2040年迄に車両性製造に係るバリューチェーン全体で、温室効果ガスの排出量を〝正味ゼロ(実質ゼロ)〟にする事を供給市場に向けて約束しています。
そうした意味で、新たな鋼材の採用は当社の事業全域で、気候変動への影響を大幅に減少させる事を意味します。つまり、この取り組みはCO2のゼロ排出を目指す当社の最終目標達成に向けた重要なステップとなるのです。
ちなみに、化石燃料を一切使用しない鋼材で組み立てた電気トラックの顧客は、流通小売大手のアマゾン(Amazon)や、デンマークの国際海運&物流企業のDFDS( Det Forenede Dampskibs-Selskab/ユナイテッド蒸気船会社 )、その他、運送会社のサイモン・ルースを通じて英消費財メーカーのユニリーバも顧客の一角を占めています」と話す。
対してアマゾンの輸送サービス部門で、ヨーロッパ担当のバイスプレジデントを務めるアンドレアス・マーシュナー氏( Andreas Marschner )は「当社では2040年迄に全ての業務をゼロカーボン化にする道を歩んでいます。そしてこの脱CO2移行への取り組みを確実に実現させていくため、最重要パートナーとしてボルボトラックを選んでいます」と語っている。
更にDFDSの物流部門を担うニクラス アンダーソンEVP( Executive Vice-President/エグゼクティブ・バイス・プレジデント )は「私達は、より環境に優しい輸送及び物流ソリューションの提供を目的に未来を見据えています。
そんなロジスティクス分野で、環境に配慮した取り組みを積極的に消化していく取り組みは、私達の会社をカーボンゼロ社会へ近づけていくための第一歩であり、それゆえに間もなく納入されると聞いている化石燃料を一切使用しない鋼材で作られるBEVトラックの納入を心待ちにしています」と述べていた。