現在、スウェーデン・イエテボリを拠点に燃料電池トラックの試走テストを消化中
ABボルボ傘下のボルボトラックスは9月20日現在、スウェーデン・イエテボリを拠点に燃料電池トラックの試走テストを行っており、来たる2025年からのセカンドフェーズでは、北欧エリアの特定顧客間による商用輸送を想定した公道実証テストを行う予定であると発表した。( 坂上 賢治 )
水素が動力源となる燃料電池電気トラックは、最大1,000キロメートルを走破するディーゼルトラックと比肩する程の航続性能を持つため、隣国に跨がり、または時に超えていくような長距離輸送に適している。
そこで2025年からのセカンドフェーズでは、先の通り、北欧の特定顧客間輸送を想定して実施され、その後、数年間を掛けて追加の燃料電池トラックが順次導入されていく予定という。
初期テストでは動力源に対して厳しい要求を突きつける過酷な条件下で実施
現在、初期のパイロットフェーズを管理しているボルボ トラックス・グローバルプロダクトマネジメント担当SvPのジェシカ・サンドストロム氏( Jessica Sandström )は、「初期テストで燃料電池電気トラックの秘めた可能性を浮き彫りに出来ると信じています。
この期間のテストは、パワーユニットに対して厳しい要求を突きつける過酷な条件下で実施・消化され、最大65トンの重い積み荷を載せて運転する機会もあります。
初期テストの目標は、積載作業時などでの課題発見、走行性能の確認、ハンドリングなど、トラック輸送上で起こり得る様々な事例を調べることです。
電気を生成するスタックは300kWの発電能力を持つ2つの燃料電池によるもの
そもそも燃料電池はBEVとは異なり外部電源から充電する代わりに、車体に充填したタンクのグリーン水素( 再生可能資源由来の水素/風、水、太陽などの再生可能エネルギー源を使用して生成される )から独自で電気を生成します。
電気を生成するスタックは300kWの発電能力を持つ2つの燃料電池によるもので、この際、放出される唯一の副産物は水蒸気のみ。水素燃料の充填時間は15分未満です。
但し燃料電池技術は現段階に於いて開発の初期段階にあり、多くの利点があると思われる一方で、幾つかの課題も残っています。なかでも特に解決すべきものはグリーン水素をどのような形で大規模生産するのか。燃料インフラなどの供給インフラをどのように敷いていくのかなどです。
燃料電池はボルボとダイムラーの合弁、セルセントリックから供給される
なお現段階のパイロットフェーズでは、走行途中で充填水素が不足する事態を起こさないために、グリーン水素の満充填が発着点となるイエテボリ拠点のホームデポで満充填されています。
次のセカンドフェーズでは、水素充填の拠点が限られる可能性がありますが、その段階に到達する頃には、多くの産業がCO2削減のためにグリーン水素に依存する流れが定着していく事になると考えられており、今後数年間あれば、グリーン水素の供給が大幅に増加すると予想しています。
ですから燃料電池トラックは、これから数年の内に、より長く、より重い貨物を積載する大型輸送手段として重要になものになるでしょう」と話している。
なおテスト車両に搭載される燃料電池は、ABボルボグループとダイムラートラックAGの合弁会社であるセルセントリック( cellcentric )によって供給される。セルセントリックは今後、大型燃料電池車向けにヨーロッパ最大の水素生産施設の 1つの建設計画の実施に入る予定だ。