水素の利用推進に取り組む民間企業10社(以下記載)は、3月6日、中部圏における水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーンの構築を目指し、水素の大規模利用の可能性を検討する「中部圏水素利用協議会(以下、協議会)」を発足した。
協議会には、石油・ガス・電力などのエネルギー、石油化学、自動車、金融など様々な業界の企業が参画。産業界全体で横断的に検討を進める取り組みは、日本初となる。
<協議会の参画企業>
出光興産、岩谷産業、JXTGエネルギー、住友商事(*)、中部電力、東邦ガス、トヨタ自動車(*)、日本エア・リキード、三井住友銀行(*)、三菱ケミカル(3月6日協議会設立時点。50音順。*は事務局)
現在、地球環境問題に関して、CO2の排出量削減による地球温暖化を抑制するため、持続可能で低炭素なエネルギーの利用促進が喫緊の課題だと云われている。
そのため日本政府は、水素を将来の重要なエネルギーの一つとして位置づけ、「水素社会」の実現に向けた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定。この中で、当面の目標として、2030年に年間30万トンの水素を利用するという大規模な水素供給システムの確立が掲げられている。
こうした状況の中、水素の製造・供給側では、様々な企業により社会実装に向けた新たな技術や方策の実証が進みつつあるが、需要側では、大規模な使い方や水素利用量の拡大についての検討が個社レベルに留まっている。
そこで今回、上記10社は、中部圏で産業界を横断した協議会を立ち上げ、大規模な水素利用の具体的な方策を検討し、供給サイドとの連携を図りながら、社会実装に向けた取り組みを進めていくこととした。
協議会では、当面の目標である「2030年に水素利用量年間30万トン」に弾みをつけるために、2020年代半ばからの社会実装開始を目指して、以下の活動に取り組んでいく。
・海外からの水素大規模輸送が始まることを想定した、中部圏での水素受入拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討。
・発電・石油産業等の各製造業の企業活動やモビリティでの利用など、中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算。
・各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討。
・実現に向けた技術面・金融面・制度面での課題を整理し、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案。
協議会は、政府が策定したロードマップの実現のためは、産業界での技術開発、コスト低減努力のみならず、金融界との連携による資金供給スキームの構築や、政府のリーダーシップによる制度・インセンティブ設計、規制改革等の三位一体の活動が必要であるとし、今後、その一翼を担っていく。
また、この取り組みが日本各地に拡がるよう、政府とも連携し官民一体となって進めていくとしている。