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2024年4月24日【企業・経営】

ニデックの永守グループ代表が決算説明会で強調したこと

山田清志

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ニデックは4月24日、2024年3月期連結決算の説明会を開催した。売上高は前期比4.7%増の2兆3482億円、営業利益が同63.1%増の1631億円、当期純利益が178.9%増の1253億円だった。2025年3月期も増収増益の見込みで、純利益は3期ぶりに最高益を更新する。説明会には4月1日付で会長兼CEOから新設されたグローバルグループ代表に就任した創業者の永守重信氏も出席。いつものように“永守節”を炸裂させていた。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

車載事業は中国EV市場の競争激化で2期連続の赤字

 

「今日は来る必要がなかったんですが、IRのほうから出てほしいと言われて来ました。昨日決算発表をしましたが、いろいろなアナリストのレポートを読んでいると、非常に偏った内容ばかりでしたから、もう少し自分たちの知識を向上させていただいて、正しく見ていただきたいと思う」

 

決算説明会は、永守氏が佐村彰宣CFOの説明を遮る形で、「一言」と前置きし、こんな言葉から始まった。市場予想の平均を下回った業績になるので、アナリストが厳しい見方をしたのが気にくわなかったようだ。

 

24年3月期は増収、大幅な増益となったが、EVトラクションモーター関連事業を含む車載製品は前期比11.8%増の5809億円だったものの、営業損益は311億円の赤字。23年3月期も422億円の赤字だったので、2期連続の営業赤字である。これはEVトラクションモーター事業が中国市場の競争激化で採算が悪化したためだ。

 

「例えば、われわれが赤字を出して、競争相手が利益を上げているという場合はわれわれの問題だ。しかし、取引先も競争相手も赤字、それも30%とか40%の赤字。われわれが最初に出した見積もりから勝手にどんどん値段が下がっていった。何百億円の損を出して、それを続けるというのは経営者として失格だ」と永守氏は話し、中国のEV市場は「フェアではなく、不健全な競争だ」といらだちを隠さない。

 

というのも、中国政府がBYDなど中国のEVメーカーを巨額の補助金で支援しているため、利益の出ない水準の価格でEVを販売し、そのしわ寄せがニデックのような部品メーカーに来ているというのだ。そこで、EVトラクションモーターシステム「イーアクスル」を含む車載事業において、さらに踏み込んだ固定費の大幅な低減を断行するとともに、不採算機種の受注制限を徹底するなど収益性最優先へ戦略を転換。それに伴う構造改革費用約598億円を計上、その結果311億円の営業赤字となった。

 

中国EV部品関連事業は縮小して採算の改善

 

「今は休んでよく考えることが大事だ。大損になるところでは勝負しない。中国は値段、値段、値段ですからね」と永守氏は話し、“一休み”を強調。採算性が見えない中国EVトラクションモーター関連事業をいったん縮小して採算の改善を図る。

 

永守氏はいずれ中国のEVメーカーが淘汰されて健全な競争になると見ており、そのときまで待つ方針で中国以上からの撤退について否定した。もっともニデックの技術力を評価して適正な価格で購入してくれる日本や欧州のEVメーカーには、引き続き取引を行っていく方針だ。

 

4月1日に社長兼CEOに就任したソニー出身の岸田光哉氏によると、EVトラクションモーター関連事業は戦略転換に沿ってリスタートし、新しい体制が軌道に乗り始め、当社グループ本来の強さを最大限に活かした将来の成長に向かってスピード感のある挑戦に邁進していくという。車載事業は2025年3月期の上半期、赤字を計上するが、下半期には黒字化する計画だ。

 

また、採算を改善するために「第3世代」のイーアクスルを夏場にも投入。モーターや電力制御のインバーターに加えて、車載充電器などの部品を一体化した新製品で生産コストを抑えられるそうだ。

 

車載事業以外の精密小型モーター、家電・産業用製品、機器装置製品など事業は比較的堅調で、2025年3月期は売上高が前期比2.2%増の2兆4000億円、営業利益が41.0%増の2300億円、当期純利益が同31.6%増の1650億円を見込む。

 

永守氏は今期の計画策定には関わっていないとし、「保守的につくっている感じがしないでもないが、絶対に未達にできない」と檄を飛ばした。一方、岸田氏は「新経営チームは、この会社の第2創業に向かって大きく舵を切っていく所存だ。そのためには、人や技術を中心とした技術で新しいソリューションをお客さまに提案しながら、これからの事業の発展をさせていく」と話し、公表した計画は必ず達成する決意を示した。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。