ボルボ・カーズは9月12日、デジタル技術と新たなモノづくりのノウハウを求めて、国際的なホットスポットとなっているシンガポールに新たなテック・ハブを開設した。( 坂上 賢治 )
この新しいテック・ハブは、来たる2030年までに最先端の電気自動車メーカーになろうとするボルボ・カーズにとって、データ分析、ソフトウェア開発、ものづくり技術を融合する舞台として有望な拠点になるという。
そんなシンガポールの施設では、まずはものづくり技術の追求を皮切りに、ソフトウェア開発やデータ分析の能力構築に重点を置く構えだ。
特に次世代のクルマづくりには、未だ見ぬ新しい技術が必要とされており、それらの獲得には、AI、ロボット工学、自動化、機械学習、ナノテクノロジーなど、様々なテクノロジーの集約が必要になってくる。
そうした要員を踏まえ、ボルボ・カーズのハビエル・ヴァレラ最高執行責任者(COO)兼副CEOは、「シンガポールの新拠点は、社内のテクノロジーとソフトウェア開発能力を底支えするものとなります。
同拠点はグローバル・イノベーション・センターとして、当社の勢いを加速させ、先進の製造技術およびデータ分析に於ける能力を高めていくでしょう。
なお今回のシンガポールに設けたテック・ハブの発表は、今年はじめのポーランドのクラクフに於けるテック・ハブ開設に続くものです。
両ハブとも、当社のグローバル拠点戦略を更に最適化し、主要技術分野で優位性を確保すると共に、世界中の優秀なテック系人材を惹きつけることを目的としています。
また、これらのテック・ハブは、既存のテック・ハブ・ネットワークや世界各地の中核エンジニアリングセンターとも密接に連携しています。
シンガポールは近年、世界有数の技術能力とイノベーションの中心地となっています。一流の大学や幅広い教育エコシステムを擁するシンガポールは、今や世界中の多くのテクノロジー企業、投資先、人材に選ばれる場所となっているのです。
そこでボルボ・カーズは、シンガポール経済開発庁(EDB)の支援を受けながらシンガポールに新たなハブを設立しました。
このような環境下でシンガポールの現地ネットワークと人材を活用する能力を高めながら、次世代テクノロジーや自動車の開発に取り組んでいきます」と述べている。
一方、そのEDBのシンディ・コー上級副総裁は、「ボルボ・カーズがシンガポールにテック・ハブを設立するという決定を歓迎します。
これは、世界的なモビリティ企業が地域および世界市場向けのソリューションを開発するためのイノベーション・ハブとしてのシンガポールの魅力を証明するものです。
またシンガポール国民にとって魅力的な雇用機会を創出し、新しいテクノロジーや次世代自動車の開発に於いて、公的研究機関と地元企業とのパートナーシップの機会も創出することでしょう」 と話している。
なおこのボルボ・カーズによる新しいテック・ハブは9月初旬にオープンし、9月1日に入社したイヴォンヌ・タン氏が指揮を執るとしている。イヴォンヌ氏は、エンジニアリング開発と実行を通じてビジネスを成功裏に導いた実績のある、ベテランで先見性のあるリーダーだ。
イヴォンヌ氏は、テクノロジー・サービスの世界的大手プロバイダーであるVenture International社からボルボ・カーズに入社。Venture International社では、R&Dディレクターとして先進のライフサイエンス機器およびシステム提供を指揮してきた。
更にDyson Operations社では、シニア・エンジニアリング・マネージャーとして8年間にわたって研究設計開発を指揮した経験がある。またイヴォンヌ氏は、シンガポール工科デザイン大学で工学博士号を取得し、ウェールズ大学でビジネスITの理学修士号を取得している。
目下、ボルボ・カーズは現在、スウェーデンのストックホルムとルンド、ポーランドのクラクフ、インドのバンガロールでボルボ・カーズ・テック・ハブを運営中だ。
また同社には、中国の上海とスウェーデンのイェーテボリにも大規模なエンジニアリングセンターがある。これらの拠点は、それぞれに異なる重点分野を持っているが、その結果、世界中に戦略的に広がるイノベーション・センターの重要なネットワークを構成していると同社では謳っている。
なお先ごろシンガポールには、APeCのリージョン本部を設立したばかりだというが、今回のテック・ハブの開設により、シンガポールに於ける同社のプレゼンスの高まりについてもボルボ・カーズとしては期待しているようだ。