ボルボ・カー・ジャパンは4月24日、スエーデン本社が傘下のベンチャーキャピタル部門ボルボ・カーズ・テック・ファンドを通じて、イスラエルに拠点を置く神経科学技術のスタートアップ、コアアクションズ( CorrActions )が実施するシリーズA資金調達ラウンドへ出資したことを発表した。但し具体的な投資額など財務上の詳細は伏せられている。( 坂上 賢治 )
同社は、脳モニタリング解析のディープテックAIで、脳科学の知見と人工知能アルゴリズムを応用。眠気や疲労、飲酒の有無、健康状態、ストレスレベルなどをリアルタイムに検出。交通事故に繫がる人為的ミスを、事前に回避するために役立つ技術情報を提供していく。
この結果、ボルボ・カーズはドライバーの運転操作に伴う行動科学をより深く理解出来るようになる事に対して大きく期待を膨らませているという。
実際、ボルボ・カーズ・テック・ファンドを率いるアレクサンダー・ペトロフスキ( Alexander Petrovsky )氏は、「このテック・ファンドからの提供技術を介して、我々の確固たる安全追求の姿勢を、より深く・広く浸透させ、自動車とその周りにいる人々の安全を守るための、我々の取り組みを更に加速させくれるものと期待しています。
そもそも私たちが自動車に係る安全技術を開発する際には、人間の行動原理を充分に理解した上で、更に数十年以上に亘る研究ーを重ねてゆかねばなりません。
そんな私たちが目指す目標は、ボルボのステアリングを握るお客様が、より良いドライバーになって頂くこと、また万が一の事故発生に於ける障害などのリスクを極力減らしていくこと。そして最終的には絶対衝突しないクルマを造ることにあります。
CorrActions社が、我々の自動車の安全への取り組みに対して、全く同じ問題を共有し解決しようとしていることは明らかで、それが私たちの興味を惹いたのです。
そもそも残念ながらドライバーの注意散漫や疲労は、長い人生の中で必ず起こり得ることであり、何らかの理由で、運転中にベストな状態でないこともありえます。
しかも例えば交通渋滞の渦中では、ほんの数秒のミスにより、思いもよらないことが起こってしまうアクシデントも考えられるのです。
そんな時、CorrActions社が構築したAI搭載ソフトウェアは、脳の活動から生じる微小な筋肉の動きから、ドライバーや乗員の異常を素早く検出することが出来ます。
例えばステアリングホイールなどに設けたセンサーを利用することで、ドライバーが注意散漫、酩酊、過度に疲れているなど、様々な認知症状のヒントになります。
こうしたCorrActions社の技術は、我々のクルマの安全維持を確実に補完するものとなります。そこで私たちはCorrActions社に資本参加し、その技術の更なる開発と商業化を支援することを決定したのです。
この新たなテック・ファンドの貢献は、自動車の安全性、電動化、デジタル化など、世界のモビリティ産業の変革を大きく加速させることになるでしょう」と述べた。
CorrActions社のツビ・ジノサー( Zvi Ginosar )CEO
対して同AI技術の概要についてCorrActions社のツビ・ジノサー( Zvi Ginosar )CEOは、「多くのカメラに頼った競合技術に比べ、当社の技術はより早い段階で正確にドライバーの認知機能の状況をモニタリング出来ます。
また当社の技術の応用については、被験者側でのセンサー装着が不要です。例えば運転者や同乗者の体の動きを計測するセンサーなどを車のハンドルやシートに埋め込むだけで良いです。
測定されるデータは、車載デバイス、あるいはクラウド側のAIで分析出来るのです。加えて将来、運転者自体が不要となる自動運転時でも、乗員の体調検知や好みの乗り心地の推察など、多様な技術的応用を展開が出来るのです」話している。
またボルボ・カーズ・セーフティ・センターで責任者を務めるオーサ・ハグランド( Osa Haglund )氏は、「車が衝突しない未来を目指す上で、ドライバーの心理状態を理解することは非常に重要です。
私たちは、このコラボレーションを成功させ、画期的な技術の市場投入に向けて取り組んでいきたいと思います」と結んでいる。