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2023年4月24日【企業・経営】

ボルボ・カー、AIスタートアップのコアアクションズに投資

坂上 賢治

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ボルボ・カー・ジャパンは4月24日、スエーデン本社が傘下のベンチャーキャピタル部門ボルボ・カーズ・テック・ファンドを通じて、イスラエルに拠点を置く神経科学技術のスタートアップ、コアアクションズ( CorrActions )が実施するシリーズA資金調達ラウンドへ出資したことを発表した。但し具体的な投資額など財務上の詳細は伏せられている。( 坂上 賢治 )

 

 

同社は、脳モニタリング解析のディープテックAIで、脳科学の知見と人工知能アルゴリズムを応用。眠気や疲労、飲酒の有無、健康状態、ストレスレベルなどをリアルタイムに検出。交通事故に繫がる人為的ミスを、事前に回避するために役立つ技術情報を提供していく。

 

この結果、ボルボ・カーズはドライバーの運転操作に伴う行動科学をより深く理解出来るようになる事に対して大きく期待を膨らませているという。

 

実際、ボルボ・カーズ・テック・ファンドを率いるアレクサンダー・ペトロフスキ( Alexander Petrovsky )氏は、「このテック・ファンドからの提供技術を介して、我々の確固たる安全追求の姿勢を、より深く・広く浸透させ、自動車とその周りにいる人々の安全を守るための、我々の取り組みを更に加速させくれるものと期待しています。

 

 

そもそも私たちが自動車に係る安全技術を開発する際には、人間の行動原理を充分に理解した上で、更に数十年以上に亘る研究ーを重ねてゆかねばなりません。

 

そんな私たちが目指す目標は、ボルボのステアリングを握るお客様が、より良いドライバーになって頂くこと、また万が一の事故発生に於ける障害などのリスクを極力減らしていくこと。そして最終的には絶対衝突しないクルマを造ることにあります。

 

CorrActions社が、我々の自動車の安全への取り組みに対して、全く同じ問題を共有し解決しようとしていることは明らかで、それが私たちの興味を惹いたのです。

 

 

そもそも残念ながらドライバーの注意散漫や疲労は、長い人生の中で必ず起こり得ることであり、何らかの理由で、運転中にベストな状態でないこともありえます。

 

しかも例えば交通渋滞の渦中では、ほんの数秒のミスにより、思いもよらないことが起こってしまうアクシデントも考えられるのです。

 

 

そんな時、CorrActions社が構築したAI搭載ソフトウェアは、脳の活動から生じる微小な筋肉の動きから、ドライバーや乗員の異常を素早く検出することが出来ます。

 

例えばステアリングホイールなどに設けたセンサーを利用することで、ドライバーが注意散漫、酩酊、過度に疲れているなど、様々な認知症状のヒントになります。

 

こうしたCorrActions社の技術は、我々のクルマの安全維持を確実に補完するものとなります。そこで私たちはCorrActions社に資本参加し、その技術の更なる開発と商業化を支援することを決定したのです。

 

この新たなテック・ファンドの貢献は、自動車の安全性、電動化、デジタル化など、世界のモビリティ産業の変革を大きく加速させることになるでしょう」と述べた。

 

CorrActions社のツビ・ジノサー( Zvi Ginosar )CEO

 

対して同AI技術の概要についてCorrActions社のツビ・ジノサー( Zvi Ginosar )CEOは、「多くのカメラに頼った競合技術に比べ、当社の技術はより早い段階で正確にドライバーの認知機能の状況をモニタリング出来ます。

 

また当社の技術の応用については、被験者側でのセンサー装着が不要です。例えば運転者や同乗者の体の動きを計測するセンサーなどを車のハンドルやシートに埋め込むだけで良いです。

 

測定されるデータは、車載デバイス、あるいはクラウド側のAIで分析出来るのです。加えて将来、運転者自体が不要となる自動運転時でも、乗員の体調検知や好みの乗り心地の推察など、多様な技術的応用を展開が出来るのです」話している。

 

 

またボルボ・カーズ・セーフティ・センターで責任者を務めるオーサ・ハグランド( Osa Haglund )氏は、「車が衝突しない未来を目指す上で、ドライバーの心理状態を理解することは非常に重要です。

 

私たちは、このコラボレーションを成功させ、画期的な技術の市場投入に向けて取り組んでいきたいと思います」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。