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2025年2月10日【ESG】

独フォルクスワーゲン、エントリーレベルEVを初公開

坂上 賢治

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独フォルクスワーゲンAG( VW・AG )は2月5日、自社のウォルフスブルグ本社工場内で労使ミーティングを開き、自社のコアブランド群( Volkswagen、Volkswagen Commercial Vehicles、SKODA、SEAT、CUPRA )が目指すべき未来戦略の全貌を明らかにした上で、今春一般公開予定のエントリーEVモデル( 販売価格2万ユーロ )のデザインスタディを初披露した。

 

これに併せてVWのトーマス・シェーファー ブランドCEOは、「昨年12月に、皆さんとの労使交渉が妥結して以降、我々は経営目標を達成させるべく史上最大規模のブランド再生計画を推し進めています。

 

その最終目標は、これからもウォルフスブルグの地が自動車技術の集積地であり続けること。また今後も世界に互して最も魅力的な製品を提供するマザー拠点であり続けることです。

 

なお高品質でありながらも値頃感と収益性を併せ持った新型エントリーEVについては、欧州域内だけで生産され、全てが欧州域内向けに供給されます。従って、その車両生産と流通規模は、まさしくUEFAチャンピオンズリーグに例えられる世界最高峰の環境となるでしょう」と述べた。

 

写真左から、ダニエラ・カヴァッロ氏、トーマス・シェーファー氏、ウーヴェ・シュワルツ氏(ヴォルフスブルク工場長)が2月5日にヴォルフスブルクで行われた工場会議で講演した。

 

またVW・AGでグループ従業員協議会・会長を務めるダニエラ・カヴァッロ氏は、「新たなエントリーEVは、欧州ユーザーのために欧州で生産される真の意味でのフォルクスワーゲンになります。従って最終消費者となる当地の自動車ユーザーに先駆け、ヴォルフスブルグ工場のスタッフに最初のデザインスタディーを披露するのは理に適っています。

 

もはや市場はEV時代になっている昨今、消費者が求め易いエントリーモデルの開発は、我々の未来を託せる経営基盤のひとつとなります。ID.2all( アイディ.2オール )の量産型と共に、この新型EVは、新たな段階へと進化を遂げたモジュラー エレクトリック ドライブ( MEB )プラットフォームをベースにしたVWグループのコアブランド傘下の小型EVファミリーに属します。

 

まず最初のニューモデルは、ID.2allコンセンプトの量産バージョンとなり同モデルはVW初の小型EVとして2026年にディーラーに導入され、そのベース価格は25,000ユーロ未満に設定されます。

 

そんな当社は、欧州のBEV分野で既に優位なポジショニングを確立しており、ID.( アイディ. )モデルファミリーは、2019年に域内で発売されて以降、世界中で合計135万台以上の車両が販売されました。そのうちの約50万台はID.3( アイディ.3 )です。その結果、昨年VWブランドは38万3,100台のEVを販売しています」と自社ならではの優位性について畳み掛けた。

 

フォルクスワーゲンブランドのCEO、トーマス・シェーファー氏。

 

更に先のトーマス シェーファーCEOは、「ウォルフスブルク工場には、未来への明るい展望が開けています。というのはGolf(ゴルフ)の生産拠点のメキシコへの移転が合意されたことで、最先端車両生産のための新たなスペースが確保されているからです。

 

その新たなラインには、新しいSSP( スケーラブルシステムズプラットフォーム )をベースにした電動Golfの後継モデルと量産EVのT-Roc( Tロック )が流され、その結果、ウォルフスブルグ工場は、当社の新しいコンパクトEVの主力生産拠点になります。

 

ちなみにSSPは統一されたシステムアーキテクチャーに基づくEV専用のプラットフォームであり、完全にデジタル化された拡張性の高い環境となります」とウォルフスブルク工場の先進性についても詳しく説明した。

 

これに換わって先のダニエラ・カヴァッロ会長は、「グループの中核拠点としてウォルフスブルグ工場は最重要拠点になりますが、私たちは断固たる決意で、この最先端工場での仕事に取り組むつもりです。

 

フォルクスワーゲンAGの総会およびグループ労働協議会の議長のダニエラ・カヴァッロ氏。

 

例えば技術開発部門は、グループ全体で使用するSSPプラットフォームを使用して先駆的な車両生産のための工程開発に取り組みます。同作業は現在の内燃エンジン搭載車のために取り組んだ過去の事例と同じく、私たちの将来の成功にとって重要なものです。

 

またウォルフスブルク工場では、現在も年間50万台を超えるGolfとT-Rocが生産されています。これらのモデルは、将来の電気自動車の主力モデルとなります。このようにして、この本社工場は、非常に魅力的な車両セグメントを生産し50年以上の歴史を誇るウォルフスブルグのGolfシリーズ生産の伝統を継承することになります。

 

今後数年間、成功のために必要な準備に継続的に取り組むことが非常に重要です。取締役会は開発や生産の複雑性、作業手順、相乗効果の面で新たな方針を策定・実現する必要があります。従業員協議会と経営陣は、これらに関して緊密に協力します。

 

私たちはZukunft Volkswagen(未来のフォルクスワーゲン)協定により、昨年12月末に従業員代表と持続可能なモビリティの分野に於ける経済的安定・雇用・技術的リーダーシップを組み合わせた将来のビジョンに合意しました。

 

ここで合意された目標はVW・AG の中核であるフォルクスワーゲン乗用車ブランドが2030年までに世界首位の技術力持つ量産車メーカーになることです。経営陣と労働側は、今後四半期ごとに共同進捗会議を開催して協力関係の維持に務めていきます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。