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トヨタ自動車は傘下のウーブン・バイ・トヨタと2月22日、同社が〝クルマ屋たちの夢のあと〟と称する自社工場の跡地(静岡県裾野市)を活用した次世代技術の実験区画「ウーブン・シティ」を公開した。
同実験区画について去る2020年にウーブン・シティの構想を発表して以降、日建設計&大林組の協力を得て準備を進め、昨年2024年10月に一部区画(約4万7千平方メートル)としての第一期工事が終了・竣工させたもの。
同社では、今回の施設の披露にあたり、多様な参者達で新しい価値を生み出す施設としての全面ガラス張りの「カケザン・イノベーション・ハブ(kakezan Invention Hub)」を引き合いに出し、〝自分以外の誰かのために〟という想いで実証を行うインベンターズ/発明家や、住民やビジター達(ウィーバーズ/編む人と称した仕組みを試す対象者)などの参加を得た掛け算を介して成立するコラボレーションの場所であることを説明した。
現時点で施設規模は、第1期エリアとしての(約5万平方メートル)という枠内にあり、4~6階建ての建物に130戸の住宅が用意され、2階部分から歩行者専用通路で繫がる形状になっている。
区画中央には公園スペースが配置され、サービス提供EVの「eパレット」を使ったカフェなどが並ぶ。まずはトヨタ関係者と家族など100人が暮らす予定としており、将来的に2000人程度の入居を想定しているという。
住民と乗り物が共存する地上には、通信機、センサー、カメラなどを取り付けられるよう拡張性を持たせた信号機や柱(スマートポール)が設けられた直射日光を排した道(実証の妨げになるため)がある。
これに加えて、配送ロボットが行き来するための延べ床面積約2万5000平方メートルの地下道(風雨の影響を排除した環境)が設けられるなど、実証実験に適した機能が実装されていることをアピールした。
今秋以降、公道では許可をとらないとできない自動運転実証を筆頭に、国内外の企業・団体からの協力を得て(現段階でダイキン、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスなどの参加が判っている)、共同研究を進めていく構えだ。
また、この際、例えば物流の実証を行う場合などではデジタルツイン技術も活用する。より具体的にはデジタルの世界でシミュレーションしたことをリアルの世界に反映させ、リアル環境での技術精度を向上させていくという。こうしたデジタルツイン技術を物流にも適用させて未来の物流のあり方を考えていくとしている。
当地でトヨタ自動車の豊田章男会長は、「かつて、ここには、トヨタ自動車東日本の東富士工場がありました。その閉鎖を決断した2018年。私は、工場で働く仲間たちと直接、対話をする場を持ちました。
その時、様々な事情で、一緒に働くことができなくなる仲間たちへの想い、この地でクルマを作り続けてきた誇り、地域の方々への感謝。一人ひとりが、その心の内を、精一杯、私に伝えてくれました。
その顔を見て、その想いに触れて、私は、「この場所を、未来のモビリティづくりに貢献する聖地にしたい」、そう心に誓いました。ウーブン・シティは、進化し続ける、永遠に未完成の街であり、未来のモビリティのテストコースです。
幸せの量産という、私どものビジョンに共感くださった皆様の何としても成し遂げるという意志と情熱、そして、自分以外の誰かの幸せを願う、優しい心。それらがなければ、今日の、この景色は見られなかったと思います。
この場所から、ウーブン・シティがあって良かった、みんながそう思えるような、未来のモビリティが生まれてくることを期待しております」と述べていた。