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2023年2月13日【企業・経営】

トヨタ自動車、4月からの次期執行体制を発表

松下次男

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中嶋祐樹氏と宮崎洋一氏の両氏がそれぞれ副社長に就任

 

トヨタ自動車は2月13日、4月からの次期体制に関する記者会見を開いた。冒頭、4月に新社長に就任する佐藤恒治執行役員が登壇し、新たな執行部の布陣を紹介するとともに、2026年を目標に「次世代のBEV(バッテリー電気自動車)」をレクサスブランドから展開するなど事業展開を表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

4月からの新布陣では、副社長にミッドサイズビークルカンパニーとCVカンパニーのプレジデントを務める中嶋祐樹氏とチーフコンペティティブオフィサー・事業販売(プレジデント)担当執行役員の宮崎洋一氏がそれぞれ就任し、佐藤新社長を補佐する。

 

中嶋氏は4月から執行役員に昇格し、6月の株主総会後に宮崎氏とともに取締役に就任する予定。近健太、前田昌彦、桑田正規の3氏は4月から副社長・執行役員を外れ、重点3事業の陣頭指揮を執る。

 

 

近副社長はウーブン・プラネット・ホールディングスから社名変更するウーブン・バイ・トヨタ代表取締役CFO(最高財務責任者)に就任。

 

前田副社長はアジア本部長として、カーボンニュートラルやCASE技術の社会実装プロジェクトをリードし、新しいアジア戦略をリードする。

 

桑田副社長は、トヨタ自動車九州副社長も務め、レクサスのBEV事業戦略およびBEVを軸とした九州の生産体制再構築を推進する。近、前田の両氏は株主総会後にジェームス ・カフナー氏ともに取締役を退任(事業担当は継続)する。

 

新社長に就任する佐藤執行役員は新体制の布陣について「チーム経営」を強調し、その役割として「柔軟に、フォーメーションを変えていくことだ」と話す。このため、「適材適所」「肩書より役割」を根底に、副社長を含む新たな執行役体制を決めたと述べた。

 

以下、近健太氏、前田昌彦氏、桑田正規氏の3人の現副社長は、新体制が掲げる3つの重点事業テーマをスピーディーに実践するため、現場のリーダーとして陣頭指揮をとっていく。

 

2026年を目標に「次世代のBEV」をレクサスブランドから展開

 

事業展開に当たっては「継承と進化」をテーマに掲げ、継承すべき点では豊田章男現社長が土台をつくってきた「商品と地域を軸にした経営」を引き継ぐ方針を示した。

 

一方、目指すべき進化では「モビリティ・カンパニーへの変革」を掲げて、「電動化」「知能化」「多様化」を推進する方針を示した。

 

まず電動化では、世界的にエネルギーの状況が様々なことから、多様な選択肢を提供する「マルチパスウェイ」をブラさずに、全方位で取り組む方針に変わりはないとした。

 

そのうえで、BEVも重要な選択肢とするとともに、機が熟した今、内燃機関搭載車とは異なるアプローチが必要としてBEVの開発を加速すると表明した。

 

具体的には、電池やプラットフォーム、クルマの作り方などで最適化した「次世代のBEV」を2026年を目標にレクサスブランドで開発するとした。

 

次世代BEVをレクサスブランドで先行させるのは、「レクサスの主要市場で、BEVの普及が進んでいる」ためとし、本格的な普及期に向けてはレクサスとトヨタブランドの車体は共通化していることから、速やかにトヨタブランドへの展開が可能との見方を示した。

 

と同時に、普及期に向けては、幅広いユーザーが購入できるようクルマの構造を合理化し、モノづくりから販売・サービスまで事業の在り方を大きく変えていく必要があるとの見方を示し、レクサスでまずその仕組みづくりに挑戦するとした。

 

 

新執行役員体制では「商品と地域を軸にした経営」を実践する体制を目指す

 

また、トヨタのBEV化が遅れているとの見方に対しては、電動車比率を比べるとトヨタは26%強と市場の23%を上回っていると述べ、現実のカーボンニュートラルの取り組みに貢献していることを強調。半面で、佐藤執行役員は少し「コミュニケーションに課題があった」と反省を見せた。

 

知能化および多様化では、ソフトウエア強化、地域に寄り添い多様なニーズに応えるクルマづくりの推進を掲げた。

 

こうした中で、これら3つのテーマを実現するために、新体制では「次世代BEVを起点とした事業改革」「ウーブンの取り組み」「アジアのカーボンニュートラルの実現」の3本柱を重点事業として取り組む方針を打ち出す。

 

ウーブンの取り組みについては、モビリティ社会の創造に向け、テストコースの街であるウーブン・シティでの実証実験を強力に進めることを計画する。そこで、その一員となるクルマを含めて社会インフラをトヨタとともに考えていくとした。

 

 

アジアのカーボンニュートラルの実現では、タイ最大の民間CPグループとのパートナシップを基軸に、産業や国を超えた連携を通じて電動化、モビリティの実証を進める考え。

 

なお、4月からの新執行役員体制では「商品と地域を軸にした経営」を実践する体制を目指す。

 

これに伴い、新副社長のほか、北米を担当する小川哲男氏、中国を担当する上田達郎氏、それにチーフブランディングオフィッサー・クルマ開発センターデザイン領域(統括部長)を担当するサイモン・ハンフリーズ氏、チーフプロダクションオフィッサー・トヨタコンパクトカーカンパニー(プレジデント)を担当する新郷和晃氏が新たに執行役員に就任する。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。