豊田自動織機は1月29日、フォークリフトと建設機械用エンジンの国内排出ガス認証不正で調査を委託した特別調査委員会( 井上宏委員長 )から報告書を受領。今調査で、フォークリフト用エンジン6機種( うち5機種は旧型 )及び、建設機械用エンジン1機種( 旧型 )の違反行為が判明。更に出荷停止中の建設機械用エンジン現行1機種についても排出ガス規制値超過が判明した。( 坂上 賢治 )
具体的な違反行為は、フォークリフト用と建設機械用エンジンについては認証取得時の排出ガスの劣化耐久試験に於いて、〝実測値と異なるデータの使用〟や、〝試験中の部品交換〟の他、工場内での量産品からの抜き取り検査時に〝規程と異なる頻度での実施〟、〝量産品と異なる制御ソフトの使用〟などが明らかになったとしている。
産業車両用エンジンの判明概要
※1)1KD、1ZS は2023年4月に型式指定の取り消しを受けた。
※2)社内で再度実施した劣化耐久試験により、フォークリフト用4Y、1FSは排出ガスが規制値内であること、現行建設機械用1KDはNOx(窒素酸化物)が規制値を超過することを確認した。
産業車両用エンジンの違反行為
※3)1ZS は 1KD の劣化耐久試験データを使用。
※4)3Z、15Z は旧 1DZ の劣化耐久試験データを使用。
これを受けて国土交通省は、不正が確認されたエンジンについて、同省が排ガス性能の基準を満たしているか確認するまで出荷を停止するよう指示した。
また併せて同調査に係り、トヨタ自動車並びに日野自動車から開発・生産を委託されていた自動車用ディーゼルエンジンの出力試験に於いても違反行為があった旨も判明した。
この自動車用ディーゼルエンジンの違反行為に関しては、出力試験時に、量産用とは異なるソフトを使ったECUを用いてエンジンの出力性能を測定。表示された出力カーブ値が安定するようにバラつきを抑えて( 出力曲線のカーブが、見栄えが良いように修正 )報告する行為が行われていた。
自動車用エンジンの判明概要
なお、この自動車用ディーゼルエンジンを搭載した製品(車両)は、グローバルで10車種( うち日本6車種 )となる。但し、当該ディーゼルエンジンの絶対性能は、トヨタ自動車側でも直ちに量産製品を改めて検証。エンジン出力値自体は、正規スペックの規準を満たしていることを確認しているという。
該当する車両(エンジンへの不正行為が判明した車両)は以下の通り*販売開始時期は販売国、車両工場により異なる可能性がある。
上記を踏まえてトヨタ自動車並びに日野自動車側では、既に顧客が購入済みの上記対象10車種( うち日本6車種 )の使用( 運転 )を直ちに停止する必要はないとしつつも、出荷製品に係る適切な認証取得が製造業として事業を行う大前提であることから豊田自動織機は対象エンジンの出荷を直ちに停止。
同時にトヨタ自動車( 生産先:愛知・吉原工場、三重・いなべ工場、トヨタ車体・富士松工場、岐阜車体工業・本社工場 )と、日野自動車( 生産先:東京・羽村工場 )も該当エンジンが搭載された車両についての出荷を一旦停止。それらの年間総生産台数は約43万台にも上る。
今後は、トヨタ自動車・日野自動車並びに豊田自動織機は、顧客のみならず当局に対して認証に値するメーカーとして再び信頼して貰えるかを含め、判明した事の全容を報告することを出発点に以降の対応を判断していく構えだ。
ここのところトヨタグループでは、直近のダイハツ工業も含めて不正が相次ぎ、同グループの車両の顧客並びに、部品納品企業など広く社会からグループ全体のコンプライアンス( 法令順守 )が問われ始めている。
外部有識者による調査を行った特別調査委員会の井上委員長は、「フォークリフトなどの産業車両用エンジンで新たに7機種、計11機種で不正が見つかった。
不正行為を行わなければ、開発スケジュールを遵守できないとのプレッシャーがあった。不正は、フォークリフト用では排ガス規制が拡大された2006年頃、自動車用では2017年頃からあったとみられる。その間、これらを承認してきた管理職のコンプライアンス意識の欠如を指摘しない訳にはいかない」と述べている。
また豊田織機の伊藤浩一社長は、「経営としての法規遵守に関する危機管理意識の不足していた。その責任を重く受け止めている。
加えて現場ではトヨタとのコミュニケーションが不足しており、試験のプロセス、守るべき手順などの擦り合わせが十分に行われていなかった。多くの関係者にご迷惑をお掛けした。
今後は、製造業としての基本・原点に立ち返り、法規遵守のための意識改革と組織の再生を最優先課題として取り組んでいく」と陳謝。出荷停止で影響を与える部品発注など仕入れ先について補償する考えを示した。
国土交通省は、1月30日に豊田自動織機への立ち入り検査を実施して不正の事実関係を確認する方針。加えてトヨタ自動車では、同じ日( 30日 )の13時30分より、トヨタ自動車の豊田章男代表取締役会長が登壇し、グループ全体のコンプライアンスに関わる〝トヨタグループビジョン〟のライブ説明会を実施する予定だ。