2030年のBEVの販売目標を全世界販売台数の50%・60万台に
スバルは8月2日、電動化計画を大幅に見直し、2030年のバッテリー電気自動車(BEV)の販売目標を50%に引き上げると発表した。生産体制でも群馬に続き、米国にBEV専用工場を建設する。(佃モビリティ総研・松下次男)
2024年3月期第1四半期決算発表会見に合わせて、6月に社長・CEO(最高経営責任者)に就任した大崎篤氏が「新体制方針」を説明。中期経営ビジョンで掲げていた電動化計画を見直し、BEV戦略主体のアップデートを公表した。
新たな目標について大崎社長は「スバルの舵をBEVに大きく切る」と表明。従来、2030年の電動車販売目標はハイブリッド車(HV)とBEV合わせて40%としていたのを「BEVのみで50%」目標へと引き上げた。
2030年の全世界販売台数は120万台プラスアルファを計画しており、半分の60万台をBEVにする方針だ
大崎社長は電動化計画の見直しについて自動車を取り巻く環境が「非連続な変化」「従来にないスピード感」で進行していることを背景に掲げた。
カーボンニュートラルへの対応から急速なBEVへのシフト、新興メーカーの台頭などがその代表的な動きであり、北米を主戦場とするスバルにとっては米インフレ抑制法もBEVへと大きく舵を切る一つの要素といえるだろう。
米でもBEV専用工場を建設、2027~28年頃に生産開始
生産、販売活動でもアップデートする。生産体制では春先に国内のBEVの生産上乗せを表明したが、今回、さらに米国でHVの「e―BOXER」とBEVを現地生産すると発表した。
米国でのBEV生産工場は2027~28年頃の稼働開始を予定。現米工場のSIAを含めて、複数の候補地から選定し、専用工場を建設する計画だ。
また、BEVのラインアップについても今回、新たに4車種を追加、投入すると発表。すでに公表済みの2026年末までにSUV4車種を投入するとしていたのにあわせ、2028年末までに8車種をラインアップするとした。
これにより2028年には米国で販売台数の半数強となる40万台のBEV販売を狙うと表明した。BEVの販売が北米主体となるのはスバルの「主戦場」であり、米国のEVシフトが鮮明なため。
電動化計画のアップデートはモノづくりでも革新を打ち出す。具体的にはBEVに対応し、「開発手番半減」「部品点数半減」「生産工程半減」を目指す。
2028年までにBEV8車種、ゼロベースで新たな挑戦へ
これらの実現時期について大崎社長は「群馬では更地から専用工場を立ち上げており、ここではゼロベースで新たなことに挑戦する」と述べ、BEV専用工場から革新的な手法を目指す考えを示した。
また、BEVによりスバルらしさが失われるとの懸念に関しては「モーターで駆動するEVは制御がより緻密になる。そこにAWD(四輪駆動)で培われてきたスバルの技術が生かされる」と強調した。
スバルはこうした電動化対策として2030年までに約1・5兆円を投資する計画だ。投資の約半分は電池関連とし、BEV電池は先に公表したパナソニックおよびBEVを共同開発するトヨタから調達する。
同時に発表した2024年3月期第1四半期の連結業績は生産・販売台数が大きく伸びたことなどから売上収益が1兆821億円と前年比29・7%増、営業利益が845億円と同128・4%増の大幅な増収増益となった。通期見通しは前回公表値を据え置いた。