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2024年10月31日【事業資源】

ステランティスNV、24年第3四半期の純収益が減少

坂上 賢治

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シトロエン C5 エアクロス コンセプト

 

ステランティス( STELLANTIS,N.V. )は10月31日(オランダ・アムステルダム発)、2024年第3四半期の製品出荷と収益概要を明らかにした。

 

それによると同社は、製品アップグレードと在庫削減措置の移行期間の只中にあるため、2024年第3四半期の純収益が減少すると報告した。純収益は主に出荷数の減少や価格と外国為替の影響により前年比27%減少した。2024年9月30日までの3か月間の連結出荷数1,148千台で、前年比20%の減少となった。

 

今後の製品計画では、2024年に約 20の新製品の発売を計画している。この次世代製品群は、優れたマルチエネルギー柔軟性 (ハイブリッド、全電気、ガソリン パワートレイン) を備えた STLAプラットフォーム ファミリーの最初の製品となる。第3四半期に発売された 3 つの製品は以下の通り。

 

 

アルファ ロメオ ジュニア -この新しいコンパクトカーは、アルファ ロメオのスポーティさとクラス最高のドライビング ダイナミクスを、激しい競争が繰り広げられているヨーロッパ市場に於けるBセグメントで復活させ、あらゆる顧客の要求を満たす最も幅広いパワートレイン ラインナップで提供される。ジュニアは既に10,000 台以上の受注を受けた。

 

シトロエンC3 -完全電気自動車 のë-C3は、シトロエンの最も人気のある B セグメント車の第4世代のラインナップをリードし、発売以来25,000台以上の受注を獲得した。ë-C3 の価格は320kmの電動走行距離版が23,300 ユーロ、近日発売予定の200 km走行距離版が19,900ユーロとなり電気自動車がより身近なものになる。新しいハイブリッドバージョンを備えた新型C3は、現段階で50,000台以上の受注を獲得した。

 

 

シトロエン バサルト -インドで発売されているバサルトは、市場で最も手頃な価格の SUVとして室内スペースとクーペ スタイルを兼ね備え、89,990レアルからの価格帯で南米 (ブラジル) に上陸した。

 

一方、北米では完全電気自動車のダッジ チャージャー デイトナ、完全電気自動車のジープ® ワゴニアS、完全電気自動車のラム1500REV、更にレンジエクステンダー付きEV ピックアップのラム1500ラムチャージャーのプロモーションが開始される。

 

 

対してヨーロッパでは、ステランティス傘下の合弁会社リープモーター インターナショナルが、200を超える販社下に置いて最初の車両の販売を開始した。これは航続距離 420 km (WLTP) のDセグメントSUVのC10と、航続距離265km、価格20,000ユーロ未満の5 ドアA セグメントBEVコンパクトカーのT03となる。なおリープモーターでは、LEAP3.5アーキテクチャをベースとしたBシリーズの最初のモデルにあたるB10 C-SUVがパリ モーター ショーで世界初公開されている。

 

 

併せてステランティスは10月のパリモーターショーで幾つかのニューモデルを披露している。そのひとつはプジョーE-408で、同ブランドのBEVラインナップが12車種に拡大した。上半期に発売された新型プジョー 3008は、約75,000台の受注を受けており、そのうち25%がBEVとなっている。

 

刷新されたシトロエンC4およびC4 X車両 (どちらも完全電気自動車として利用も可能) と、STLAミディアムをベースとしたまったく新しいC5エアクロス コンセプトも披露した。併せてマイクロモビリティのAmiは4周年を迎えて、2025年発売の次世代Amiを披露している。

 

アルファ ロメオのショーモデルとしては、 136馬力、48ボルトのハイブリッド可変ジオメトリーターボを搭載したジュニア イブリダも世界初披露となっている。これはエレトリカの54kWhバッテリーを補完するものであり、156馬力と240馬力で航続距離410kmの最上位モデルであるヴェローチェの2つのパワー バリエーションが用意される。併せて新機能と改良されたインテリアを備えたトナーレMY2025のプレビューも実施された。

 

結果ステランティスは今年、欧州で40種のBEV モデルを発売する。そのほとんどは、革新的で柔軟性の高いマルチエネルギープラットフォームを基盤としている。なかでもSTLA ミディアム プラットフォームを基盤とするプジョーE-3008とE-5008は、WLTP 複合サイクルで最大700kmの航続距離を実現した。

 

パリ自動車サミットでステランティスのカルロス・タバレスCEOは、「当社はBEVに情熱を注いでいます。今年、欧州で40台を販売する予定ですが、その多くは当社の最新鋭のマルチエネルギー プラットフォームをベースにしています。これらのプラットフォームにより、当社は将来のお客様のご要望に応えられる能力だけでなく、世界規模での地域の違いを考慮したビジネスモデルを展開できる機敏性を発揮できることでしょう」と語った。

 

なお欧州に於ける電動化戦略では、次世代バッテリーセルの開発でフランス代替エネルギー・原子力委員会 (CEA) と提携した。このコラボレーションの目的は、高性能で長寿命、かつ二酸化炭素排出量の少ないセルを用意し、将来のBEVで手頃な価格と持続可能性を推し進めることにある。

 

また先の通り米国では、電動化に係る多様なシナリオに適応できるようにするべくミシガン州の3つの施設に4億600万ドルを超える投資を行う。併せて2026年までに、STLA ラージ プラットフォームに基づく新型ダッジ チャージャー デイトナのデモ車両に米・ベンチャー企業Factorial Energyの固体バッテリーを組み込む予定。これは固体バッテリー技術を量産化するための重要なステップとなる。

 

最後にステランティス プロワンは、イタリア・トリノのミラフィオーリ オートモーティブ パーク2030に新しいグローバル商用車ハブを開設。目下のところ商用車事業はステランティスの純収益の3分の1を占める。ステランティス プロワンは9月までの年初来で 29%を超える市場シェアと前年比 1%の販売台数増加により、第3四半期をEU30地域の商用車市場で第1位で終了。BEV部門では32.8%でセグメントリーダーシップを維持した。

 

最後に同社のダグ・オスターマンCFOは、「30億ユーロの自社株買いプログラムは10月に完了し(第3四半期の9億ユーロを含む)、2024年には合計77億ユーロが株主に還元されます。なお2024年第3四半期の業績は、当社の実力を下回ったものとなりましたが、事業運用上の問題についてはその対応が着実に進んでいます。

 

特に米国の在庫は大幅に削減され、年末の目標に向けて順調に進んでおり米国の市場シェアも安定しています。対して欧州では厳格な品質要件もあって特定の大量生産製品の発売が遅れましたが、2025年以降に当社の次世代新製品群がもたらす大幅な市場拡大から、更なる恩恵がもたらされるものと期待しています」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。