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STマイクロエレクトロニクス( ST )と吉利汽車
は6月13日、SiC( 炭化ケイ素 )製品に関する協力関係を加速させるため、SiCの長期供給契約を締結した。
STは、この複数年契約に基づき、吉利汽車の複数ブランドに対し、ミドルレンジからハイエンドのBEV向けにSiCパワー半導体を供給して、充電の高速化、航続距離の延長を経て吉利汽車によるNEVへの転換戦略に貢献していく構えだ。
また併せて吉利汽車とSTは共同研究ラボも設立。このラボは、車載インフォテインメントやスマート・コックピット・システムといった自動車のE/E( 電子 / 電気 )アーキテクチャ、高度運転支援システム( ADAS )、NEVに関連する革新的なソリューションに関する情報交換および探究を目的としている。
ちなみに吉利汽車は、STの第3世代SiC MOSFETをトラクション・インバータに採用している。トラクション・インバータは、電動パワートレインの主要コンポーネントで、SiC MOSFETによって効率を最大化することができる。先進的なインバータ設計とSiCのような高効率パワー半導体の組み合わせは、EVの性能向上の鍵となる。
こうした両社の取り組みについて吉利汽車中央研究所( Geely Automotive Central Research Institute )の電子・電気センター長であるLi Chuanhai氏は、「私たちは、STと互いの能力を強化し、両社の優位性とリソースを最大限に活用できるウィン・ウィンの協力関係を築けたことを非常に喜ばしく思います。
イノベーション・ジョイント・ラボの設立を通じて、吉利汽車とSTは協力関係を深め、相互利益を得ることができます。そして、吉利汽車における革新的な技術の開発および実装を加速できると信じています」と述べた。
更に吉利汽車中央研究所の電子・電気センター ディレクターであるFu Zhaohui氏は、「私たちは、車載用半導体の世界的リーダーであるSTと密接に協力し、革新的な共同研究ラボを設立できたことを嬉しく思います。
スマート・ドライビングなどの分野において長期的に協力関係を深め、顧客のニーズに両社共同でフォーカスし、新たな製品・ソリューションの普及を加速させるとともに、効率的な協力体制を構築していきます。
この協力関係は、スマート・カーや電気自動車、コネクテッド・カーといった開発トレンドに基づき、より未来志向の技術研究を進める両社に利益をもたらすと信じています。
STがリードする車載ビジネスのソリューションを活用することで、製品性能やシステム統合、および総合的な市場競争力に関して、吉利汽車が優位性を得られることをとても嬉しく思います」と語っている。
これを受けてSTの中国地区セールス & マーケティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのHenry Cao氏は、「中国において自動車のイノベーションで著しい成果を上げている吉利汽車は、自動車の電動化とデジタル化で急速な進歩を達成すると同時に、グローバル市場での存在感を高めています。
今回のSiCの長期供給契約と共同研究ラボの設立は、両社の長年にわたる協力関係をさらに前進させる大きな一歩となります。中国は、世界最大のNEV市場であり、世界をリードするイノベータでもあります。
STは、車載機器のバリュー・チェーン全体にわたる当社のローカル・コンピテンス・センターおよび顧客との共同研究ラボにより、中国における自動車のイノベーションと転換をより的確にサポートすることができます」とコメントした。
中国のトップ・ブランドでもある吉利汽車は、2023年に合計168万台の自動車を販売した。このうちNEVの販売台数は48万台に達し、同社の年間販売台数の28%を占めている。このNEVの販売台数は前年比で48%の増加を示しており、吉利汽車がNEVへの移行に成功し、業界への影響力を高めていることを示している。