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2023年12月6日【事業資源】

ソフトバンクの野望、コネクティッドカー関連企業を買収

山田清志

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ソフトバンクは12月5日、アイルランドでコネクティッドカー向けシステムを提供しているキュービックテレコムを買収すると発表した。買収金額は約4億7300万ユーロ(約747億円)で、同社株式の51.0%を取得する。両社は今後、キュービックテレコムが提供中のグローバルIoTプラットフォームをさらに成長させ、コネクティッドカーやSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)、IoTモビリティの領域においてグローバル規模で主導していこうと目論んでいる。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

すでに1700万台以上の車両が利用

 

キュービックテレコムは、自動車や交通車両、農業機器向けIoTプラットフォームの世界的なリーディングカンパニーで、2016年にコネクティッドカー向けプラットフォームの提供を開始して以来、急速な成長を遂げている。

 

90以上の移動体通信事業者との契約を通して、現在190カ国・地域以上で累計1700万台以上の車両で同社のプラットフォームが利用されている。しかも、車両数は毎月45万台ずつ増えているという。

 

「今回の発表は、キュービックテレコムのチームとステークホルダーにとって非常に重要なマイルストーンだ。ソフトバンクと協力することで、SDVの未来を切り開くことを大変うれしく思う。ハードウェアのみならずソフトウェアにより注力することで、メーカーは安全性や快適性、性能を向上させる新機能の追加やOTAの活用ができ、自動車やデバイスの価値を高めることができる。これにより、AIがもたらす機会とともに、新たなコラボレーションやビジネスモデルの道が開かれる」

 

キュービックテレコムのバリー・ネーピアCEOはこう話している。同CEOは引き続き経営を牽引し、取締役には現任のフォルクスワーゲングループのカリアド社やクアルコム社などの既存株主からの3人に加えて、ソフトバンクから野崎大地常務執行役員を含む3人が新たに就任する予定だ。

 

 

ソフトバンクは現在、「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代インフラを提供する企業へ」という長期的なビジョンを掲げ、その実現に向けて邁進を続けている。中期的な目標としては、純利益をV字回復させ、2025年度に最高益(5350億円)とすることを目指している。

 

これに向けて、通信事業の持続的成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、「DXソリューション」「ファイナンス」「メディア・EC」「新領域」などの分野で積極的な事業展開を目指す戦略「Beyond Carrier」を進めている。その新領域で有望と考えているのがモビリティ関連だ。なかでもコネクティッドカーに注目している。

 

2030年には新車の95%がコネクティッドカー

 

なにしろ、ある調査によると、2030年までに世界で販売される新車の95%がコネクティッドカーになり、エコシステム全体に年間2500億~4000億米ドル(約37.5兆円~60兆円)の価値の増加をもたらすと予測されているからだ。

 

そのため、ソフトバンクは新たな体験や価値を提供するサービス・ソリューションの研究開発に取り組んでいる。例えば、MaaS事業の検討や5Gなどの最先端通信を活用したコネクティッドカーの実証実験などがそうだ。

 

2019年には、SUBARU(スバル)と自動運転社会の実現に向けて、5Gを活用したユースケースの共同研究を開始した。また、2020年には、米国でパシフィックコンサルタンツとオリエンタルコンサルタンツグローバルの2社と、コネクティッドカーを利用した道路インフラメンテナンス事業を展開するための合弁会社を設立している。

 

そして今回、コネクティッドカー向けIoT業界のリーダーであるキュービックテレコムとの新たな戦略的パートナーシップを締結することで、急成長するコネクティッドカーおよびSDV市場向けのグローバルIoT事業へ本格参入し、新たな収益機会の創出を図っていく。

 

「ソフトバンクは『Beyond Japan』の事業方針の下、キュービックテレコムと提携し、急成長する大容量IoT通信領域のグローバル市場に本格参入できることは大変うれしく思う。業界のグローバルリーダーであるキュービックテレコムは、ソフトバンクの最適なパートナーであると確信している。次世代社会インフラの構築に向け、グローバルIoTプラットフォームの構築にともに取り組むことを楽しみにしている」とソフトバンクの宮川潤一社長兼CEOは話している。

 

ソフトバンクとキュービックテレコムの両社は、新たなサービスの開発とイノベーションを加速させ、コネクティッドカーおよびSDV向けIoT領域のグローバルリーダーを目指していくという大きな野望を抱いている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。