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2025年2月10日【事業資源】

スカイドライブ、国交省から型式証明の適用基準が発行

坂上 賢治

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SKYDRIVE(SD-05型)の飛行試験の様子

 

SkyDriveは2月10日、空飛ぶクルマ( ※ )「SKYDRIVE( SkyDrive式SD-05型 )」の型式証明活動において、国土交通省航空局( Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism Civil Aviation Bureau / 以降、航空局 )から適用基準を発行された。

 

この基準の発行で、同社の空飛ぶクルマ固有の耐空性および環境基準の詳細がおおむね固まったため、今後の開発が更に加速される。そこでこれに併せてスカイドライブは、来たる大阪・関西万博での披露目に向けて飛行試験を重ねている「SkyDrive式SD-05型」の様子を初公開した。

 

そんな空飛ぶクルマは、電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段であるが、諸外国ではAdvanced Air Mobility/アドバンスエアモビリティ( AAM )やUrban Air Mobility/アーバンエアモビリティ( UAM )と呼ばれている。

 

しかし、その多くは電動飛行機体であること、既存の航空機とは異なる環境下での飛行を行うことなど、これまでに存在しなかった乗り物であるため、空飛ぶクルマの開発側も、また認可を行う各国の行政機関も手探りだ。従って型式証明(航空機の場合は航空法に基づき、型式ごとに設計、構造、強度、性能などが所要の安全基準および環境基準に適合していることを証明するもの)に至る所得・認証活動は双方が手探りを重ねる様に進められてきた。※ 国土交通省が定める定義と概念( 令和6年4月付/5.5MB ): https://www.mlit.go.jp/koku/content/001739488.pdf

 

そうしたなかでスカイドライブは、2022年3月に空飛ぶクルマの型式証明審査の適用基準を「耐空性審査要領第 II 部( 第61改正 )」ベースで構築することについて航空局と合意した。この審査要領は、乗客数が19名以下かつ最大離陸重量8,618kg( 1万9,000ポンド )以下の固定翼機の耐空性要件を定めたもので、第61改正は機体の特徴に合わせて安全性を示す方法をメーカーが柔軟に選択できる最新のものとなった。

 

 

このように型式証明の審査基準は、個々の機体毎に広範かつ複雑な作業の集積により策定されるものであることから、特に空飛ぶクルマのような全く新しい新型航空機については、型式証明取得のために必要な全ての基準が事前に用意されているものではなかった。

 

従って航空局とスカイドライブ双方で、型式証明の取得を目指す個々の機種に特化した基準を設定するべく両者が協議を重ねて要件を定めて適用基準が発行された。ちなみに今回のSkyDrive式SD-05型の適用基準には、例えば「バッテリ・セルを監視し、過電圧、電力不足、過電流、過熱といった状況にならないよう保護する措置を取らなければならない」といったような、電動機を備えた機体に特有の要件も含まれるものとなっている。

 

そうしたす摺り合わせから機体に特化した審査基準の詳細がおおむね合意に至ったことから、適用基準が発行される至った。これを受けて今後は同審査基準に基づき、既に航空局と議論を開始した試験の実施時期や内容について合意し証明計画を策定していく。また同社では、その計画に沿って地上試験や飛行試験を実施していく構え。

 

なお同社は日本の航空局と共にアメリカ連邦航空局( FAA / Federal Aviation Administration )に対する型式証明活動に同時に取り組んでおり、日本での型式証明取得後、米国でも速やかに型式証明を取得できるよう進めていく構えという。

 

 SKYDRIVE(SD-05型)を開発・製造するグローバルエンジニアチーム

 

今回の適応基準の発効についてスカイドライブで最高開発責任者を務めるアルノー・コヴィル氏( Arnaud Coville )氏は、「航空局にSkyDriveの機体に特化した適用基準を発行して頂けたことを大変嬉しく思います。

 

私たちはこれまで航空局と建設的な議論を重ね、この重要なマイルストーンを達成することができました。適用基準の発行は、過去1年以上にわたって注ぎ込まれた膨大な努力の結晶です。併せてFAAとの認証プロセスも進展しており、2024年は素晴らしい年となりました。

 

また、試験機は数カ月間飛行試験を行っていて、貴重な開発データを蓄積し続けると共に、万博での飛行に向けて順調に開発が進んでいます。今年は、認証取得に向けた更なる進展に併せ、万博でのお披露目が予定されている2025年は当社にとって重要な年でありますが、良いスタートが切れています」と話している。

 

 

株式会社SkyDrive概要
設立:2018年7月
代表者:代表取締役CEO 福澤知浩
URL:https://skydrive2020.com/
所在地:豊田本社:愛知県豊田市挙母町2-1-1
    豊田開発センター:愛知県豊田市西中山町山ノ田20-2
    豊田テストフィールド:愛知県豊田市足助地区
    名古屋空港オフィス:愛知県西春日井郡豊山町大字豊場 県営名古屋空港2F
    東京オフィス:東京都千代田区平河町1-3-13 平河町フロントビル3F
    大阪オフィス:大阪府大阪市北区梅田1-3-1-800 大阪駅前第一ビル8F
子会社

株式会社Sky Works:静岡県磐田市
SkyDrive America, Inc. :500 Carteret Street, Suite D, Beaufort, South Carolina 29902, U.S.A.

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。