スマートデータキャプチャ技術を提供するScandit(スキャンディット)は6月18日、トヨタ自動車が、同社製造ラインにスキャンディット・バーコードスキャナSDK(Scandit Barcode Scanner SDK)を採用したことを明らかにした。
上記のスキャンディットとは、スマートデータキャプチャ領域で、安定した性能を強みに導入企業を絶やしており導入産業は、イオンリテール、オーケー、ハンズ、ベルク、U.S.M.H、ヤマト運輸、カルビー、Instacart、Levi’s Strauss、FedEx、DHLなど、小売、輸送・物流、ヘルスケア、製造業など多岐に亘っている。
今回は、トヨタ自動車の製造現場に於ける部品に貼付されたトレーサビリティ用のコード(金属面への刻印や湾曲面に貼られたシールなど)の正確なスキャンに対応。作業遅延を発生させることなく製造ラインでのタブレット内臓カメラによるバーコードおよびQRコードのスムーズなスキャンシステムとして採用されている。
導入に至った経緯は、愛知県のトヨタ自動車田原工場(主にランドクルーザー、レクサスGX、センチュリーなどの大型車を製造)の一部ラインで、主にトヨタ自動車での開発も担う作業者への生産指示アプリ(通称:電子指示ビラ)をタブレットで利用していた。しかし同タブレットと連携させたQRリーダーを使用し、部品のトレーサビリティに関する情報を取得していたものの、以下のような課題が発生していたことが切っ掛けとなった。
- コスト増加:タブレットに加えて高価な専用スキャナーが必要
- 作業効率低下:タブレットと専用スキャナーの両方の操作が必要
- 運用負担:専用スキャナーの充電やBluetoothペアリングなどの管理
上記を踏まえトヨタ自動車は、これらの課題を解決するためタブレットの内蔵カメラで各種コード(バーコード、QRコード、マイクロQR)を読み取ることを検討した。
しかし、汎用タブレットに搭載のカメラアプリやオープンソースのフリーソフトでは、サイズの小さいコード、湾曲面に貼られたコード、また暗い車両内でのコードの読取でスキャンの遅延・失敗といった問題が発生していたため、製造現場での使用には不十分だった。
そこで、同社はScandit Barcode Scanner SDKをテスト・検証し、その結果、タブレットの内蔵カメラを使用しているにも関わらず、QRコードの迅速かつ優れた読み取り精度を実現できることを確認した。
また別のテストでは、Scandit Barcode Scannerが部品に付いているQRコードの読み取り精度を大幅に向上させていることが確認された。なお、これには、金属面に刻印されたり、湾曲した面に貼られたりしたQRコードも含まれる。
トヨタ自動車では、これらのテスト結果を総合的に評価し、Scandit Barcode Scanner SDKの採用を決定。なお同ラインへの導入にあたっては、Scanditのパートナーである日立ソリューションズが事前検証で支援に入ることで、スムーズな導入が実現した。
Scandit Smart Data Captureの導入効果は以下の通り
- Scandit Barcode Scanner SDKの導入により、以下の効果を実現しました。
- コスト削減:専用スキャナーが不要になり、コストを大幅に削減
- 作業効率向上:タブレット1台のみで操作が可能となり、作業効率を大幅に向上
- 運用負担軽減:専用スキャナーの管理が不要になり、運用負担を軽減
- 読み取り精度向上:さまざまな状態のコードを高精度に読み取る
導入に際してトヨタ自動車 田原工場組立部技術室の担当者は、「製造ラインで使用する各部品のトレーサビリティは、法的にも社内のルールとしても必要不可欠です。タブレットの内蔵カメラで当社の作業指示アプリとコードのスキャンが統合できたことは、現場の作業負担軽減とコスト削減に大きく寄与しました」と話している。
更にトヨタ自動車 車両製造技術開発部システム製作課の担当者は、「コードのスキャンによって部品が確認できなければ、製造作業を進めることができません。
そのため、読み取り対象部品はもれなく読み取ることが必要になります。Scandit Barcode Scannerを使ったテストでは、現場作業で想定されるさまざまな条件を設定して読み取り検証を実施しました。
その結果、現場で要求される読取条件下(バーコードサイズ、周囲の照度、読取にかける許容時間)において正確にもれなく読み取ることができました。作業者がストレスを感じないように短時間で正確な読み取りができることも高評価でした」とコメントしている。