ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは2月22日、ノンスタンドアローン(Non Stand Alone)方式による5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク(以下「5G NSA」)の高速自動最適化実証に成功した。
これは商用環境に於いて、基地局外部にある制御装置(サーバー)でネットワークのパフォーマンスデータを1分間隔で取得し、その情報を基に基地局外部からトラフィックを制御することで、ネットワークを高速かつ自動で最適化する機能(以下「高速自動最適化機能」)の実証を行ったもの。
各社の役割は、エリクソン・ジャパンが高速自動最適化機能の開発。対してソフトバンクは、ユースケースの検討、商用ネットワーク環境でのトライアル評価を行った。
両社は、これまでに実施したPoC(Proof of Concept、概念検証)では、トラフィックの変動検知から最適化までの一連の自動制御を5分以内で実施できることを確認していた。その要点は、従来の無線装置に具備される内部制御ではなく、外部から制御を行う次世代ネットワークの実現に向けた最先端事例の一つであることだ。
高速自動最適化機能のイメージ
スタジアムや主要駅など、多くのユーザーが集まる場所では、「バーストトラフィック」と呼ばれる突発的なトラフィック需要が発生しやすく、こういった環境下では従来の無線装置に具備されている各種機能を用いた内部制御だけではなく、外部の制御機能による大きく広いエリアを対象としたトラフィック制御が必要だ。また、従来の方式ではトラフィックの変動を検知するまでに時間を要するという課題があった。
そこでソフトバンクとエリクソン・ジャパンは、こうした課題を解決するために、基地局外部にある制御装置でネットワークのパフォーマンスのデータを1分間隔で取得し、トラフィックの変動を認識できる仕組みを実装すると共に、取得したデータを基に複数の周波数・基地局を含めてパフォーマンス改善のための最適化策を自動的に判断。該当の基地局に対して無線パラメーターの自動制御を行う高速自動最適化機能を構築した。
この技術は、従来の基地局内部制御との大きな違いは、無線装置に具備された従来の基地局内部制御では、基地局のカバレッジエリアとその隣接部を考慮したより高速な最適化の処理が可能である一方、トラフィック制御の対象範囲が限定的なものであることだ。
これに対し、高速自動最適化機能では、クラスター単位でのエリア一帯に対して、外部装置が俯瞰した判断を高速に行うことで、より大きな変動を伴うトラフィック制御が可能となる。そのため、イベント開催時のような短時間での急激なトラフィック変動を伴う制御に於いて大きな効果が期待できるという。
実際、2023年9月に、スポーツの試合が行われたスタジアムの商用ネットワーク環境でPoCを実施し、下記の成果を確認した。
・3時間程度の評価時間において、完全自動化の閉ループで人の介在なく計29回の無線パラメーターの自動制御を実行。
・無線リソースの最適化により、5G NSAにおけるユーザー体感速度が下りで約53%、上りで約10%改善。
スタジアムでのPoCに加え、2023年11月には音楽イベント開催時のドーム球場や、都内主要駅でも商用ネットワーク環境で評価を行い、異なるトラフィックのパターンにおいても高速自動最適化機能が有効であることを確認した。
今後、両社は、高速自動最適化機能の適用エリアを拡大し、全国のスタジアムやイベント会場などで活用すると共に、スタンドアローン(Stand Alone)方式の5Gネットワーク(5G SA)のユースケースにも拡張することで、4Gと5Gで「パケ止まり」のない、より快適なモバイルネットワークの提供を目指す。
結果、将来的には、外部システムとの連携や、AI(人工知能)とML(機械学習)などを利用したRIC※3の導入に加え、従来のネットワークとの協調を考慮した次世代ネットワークの構築につなげていく予定としている。