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2023年11月1日【企業・経営】

ローム、自動車向けの半導体好調も他が苦戦で大幅な減益

山田清志

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ロームは11月1日、2023年度上期(4~9月期)の連結決算を発表した。それによると、売上高が前年同期比7.9%減の2393億円、営業利益が同40.8%減の298億円、純利益が同28.4%減の373億円だった。自動車向け半導体は好調だったが、民生機器、通信機器など自動車以外が落ち込み、業績の足を引っ張った。通期もその状況は変わらないと見ており、業績予想を期初予想値から下方修正した。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

コンピュータ&ストレージ市場向けが34.4減

 

「われわれが現在、パワー半導体やアナログ半導体を中心とした注力商品は自動車向けが多く、これについてはしっかりと売り上げを伸ばすことができた。ただ、民生機器やPC、サーバー向けのコンピュータ&ストレージの市場が非常に良くないこともあって、この上期においては前年同期比マイナスとなってしまった」と松本功社長は上期決算を振り返った。

 

決算会見の様子

 

セグメント別に業績を見ると、LSIは売上高が前年同期比8.3%(97億円)減の1073億円、利益が52.6%(135億円)減の122億円となった。自動車向けで電動車の普及加速に伴いパワートレイン向けに絶縁ケートドライバICなど高付加価値商品が順調に伸びたことに加え、高性能半導体パワースイッチIPD、車載向けLEDドライバIC、電源ICなどが好調だった。しかし、民生機器市場向けでAV機器や白物家電向けを中心に減少、コンピュータ&ストレージ市場向けではPC関連やSSD向け電源ICなどの売り上げが落ち込んだのが響いた。

 

半導体素子は売上高が前年同期比6.8%(75億円)減の1020億円、利益が31.3%(59億円)減の130億円となった。トランジスタ、ダイオード、パワーデバイスが自動車市場の電動車向けを中心に好調に推移したが、民生機器市場、コンピュータ&ストレージ市場向けで厳しい状況が続いた。また、発光ダイオード、半導体レーザーについても、民生機器市場を中心に低迷した。

 

2023年度上期業績

 

モジュールについては、売上高が前年同期比7.2%(75億円)減の169億円、利益が32.0%(9億円)減の19億円だった。オプティカル・モジュールでスマートフォン向けにセンサーモジュールの売り上げが増加したが、プリントヘッドで決済端末向けを中心に入り上げが減少し、減収減益となった。

 

用途別の売上高では、自動車関連市場向けが前年同月比9.5%増の1120億円だったのに対し、産業機器関連市場向けが11.1%減の413億円、民生機器市場が15.9%減の503億円、通信機器市場向けが18.8%減の102億円、コンピュータ&ストレージ市場向けが34.4%減の255億円だった。

 

特に自動車関連市場向けでは、電動車分野が56億円増、ボディ分野が32億円増、パワートレイン分野が9億円増、ADAS分野が7億円増となっている。また、地域別に見ても、日本が44億円増、中国26億円増、その他アジア20億円増、欧州19億円増、米国12億円減で、米国以外の地域で前年同期を上回っている。

 

2023年度上期セグメント別業績

 

業績下方修正でも設備投資額は変更なし

 

「2023年度について、全体感としては、クルマは伸びるけれども、民生機器、コンピュータ&ストレージが厳しく、産業機器はFA関係が少しずつ回復する傾向にあると見ているが、当面は厳しい状況が続くと考えている」と松本社長は予想する。

 

こうした状況を踏まえ、2023年度の通期業績見通しは売上高が前期比1.6%減の5000億円、営業利益が同42.6%減の530億円、当期純利益が26.6%減の590億円を見込む。期初公表値から売上高で400億円、営業利益で220億円、当期純利益で110億円、それぞれ下方修正した。セグメント別の売上高見通しは、LSIが前期比5.2減の2214億円、半導体素子が同2.4%増の2173億円、モジュールが同0.5%増の344億円、その他が同3.5%減の266億円となっている。

 

2023年度通期業績予想

 

ロームは炭化ケイ素(SiC)製パワー半導体の大手メーカーで、電気自動車向けの需要が伸びるとみて投資を進めている。2022年12月に筑後工場(福岡県)に新工場棟を建設して量産を開始し、宮崎工場でも第二工場を建設して24年に稼働を予定している。そして、生産量を25年に21年比6.5倍、30年には35倍に引き上げる計画だ。今回の下方修正でも、「SiCを中心に1600億円を投資する今期の計画に変更はない」と松本社長は強調した。

 

また、質疑応答で、東芝に普通株と優先株で3000億円を拠出した狙いについて聞かれ、松本社長は「出資に対するリターンがあると考えている。東芝とは生産や技術面で協力できることがあるかもしれない。具体的な話は年末に東芝が非上場化した後に進めていく」と回答した。

 

ロームのパワー半導体の売上高は約1100億円で、自動車向けが中心である。東芝もパワー半導体の売上高は1000億円程度で、うち約3割が自動車向けだが、鉄道向けにも強みがある。協業が実現できれば、ロームにとっては顧客が広がる可能性は大きいだろう。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。