NEXT MOBILITY

MENU

2023年5月9日【企業・経営】

ローム、自動車向け好調と円安で22年度2ケタの増収増益

山田清志

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

ロームが5月9日に発表した2022年度連結決算は、売上高が前期比12.3%増の5078億円、営業利益が同29.2%増の923億円、当期純利益が同20.3%増の803億円だった。2023年度については、次世代パワー半導体の増産を中心とした設備投資の負担増に加え、為替の円高が影響して、増収を見込むものの、2ケタの減益を予想する。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

売上高は2期連続で過去最高を更新

 

「2022年度について、売上高が自動車、産業機器が伸長し、為替も影響したことによって、12.3%の増収となり、過去最高の売上高を2期連続で更新した。営業利益は売り上げの増収や為替の影響もあって、29.2%の増益で、営業利益率は18.2%と前年度比2.4ポイントアップした。純利益に関しては、過去2番目の数字だった。国別では、欧米、中国など海外が好調で、海外売上比率が43%と前年度比で3ポイント上がった」と松本功社長は2022年度を総括した。

 

 

セグメント別の業績を見ると、LSIは売上高が前期比14.6%増の2337億円で、営業利益が同46.0%増の481億円だった。自動車関連市場向けで、電動車の普及加速に伴いパワートレイン向けに絶縁ゲートドライバーICなどの高付加価値商品の採用が増えたことに加え、ADAS、インフォテインメントやxEV向けの電源ICなどが好調だったことが大きかった。また、産業機器向け市場で、エネルギー関連向けを中心に業績が堅調に推移し、円安効果もあって増収、大幅な増益となった。「LSIは営業利益率で20%を超えるなど、成長を牽引した」と松本社長。

 

半導体素子は売上高が前期比12.8%増の2122億円、営業利益が5.4%増の345億円だった。トランジスタ、ダイオード、パワーデバイスが自動車関連市場のxEV向けを中心に好調に推移したことに加え、産業機器関連市場でも太陽光発電向けなどが堅調に推移した。また、発光ダイオードは、民生機器関連市場向けでアミューズメント関連を中心に売り上げが増加したが、半導体レーザーは民生機器関連市場向けなどで売り上げが減少した。

 

モジュールについては、売上高が前期比4.5%増の343億円、営業利益が3.6%減の42億円だった。プリントヘッドがプリンターなどの事務機向けを中心に売り上げが増加したものの、通信機器向けでセンサーモジュールの売り上げが減少したため、増収減益となった。

 

 

ただ、用途別の売上高を見ると、明暗が大きく分かれている。自動車関連市場向けが前期比23.4%増の2130億円、産業機器関連市場向けが同12.9%増の898億円、コンピュータ&ストレージ市場向けが同14.9%増の708億円だったのに対し、民生市場向けが0.8%減の1124億円、通信市場向けが12.8%減の220億円だった。

 

特に、大きく売上高を伸ばした自動車関連市場向けを詳しく見ると、xEV分野が166億円増、インフォテインメント分野が102億円増、ボディ分野が50億円増、ADAS分野が29億円増、パワートレイン分野が23億円増、その他が35億円増となっている。

 

先行投資が膨らみ、23年度は減益に

 

「2023年度については、特にクルマ関係でわれわれの製品の需要が非常に高いので、ここを大きく伸ばせると考えている。やはり厳しいのが、民生、通信関係、それとコンピュータ&ストレージ関係で、この辺は全体的にまだ市場環境が厳しい見方をしている。特に上期は非常に厳しい状況で、下期に少し回復傾向になると思っているので、少し厳しめに見ている」と松本社長は説明する。

 

そうした背景を踏まえ、2023年度の通期業績見通しは、売上高が前期比6.3%増の5400億円、営業利益が同18.8%減の750億円、当期純利益が同12.9%の700億円を見込む。「売上高が6.3%アップするが、そのほとんどが自動車と産業機器向けとなっている」(松本社長)そうだ。

 

 

ちなみに自動車関連市場向け売上高は、22年度に比べて20.8%増の2573億円で、xEV分野が210億円増、ボディ分野が104億円増、ADAS分野が39億円、パワートレイン分野が27億円、インフォテインメント分野が23億円増、そしてその他が41億円増となっている。

 

また、営業利益が約19%減り、純利益も約13%減るが、これは炭化ケイ素(SiC)を使った次世代パワー半導体の増産を中心とした設備投資の負担増に加え、想定為替レートを1ドル=130円と前期から5円ほど円高方向に想定したことが響いている。

 

今期の設備投資については、前期に比べて27%増の1600億円を予定する。うち5割強がSiCパワー半導体向けで、ロームではSiCパワー半導体の売り上げを25年度1300億円、27年度2700億円以上にする目標を掲げている。

 

松本社長は「生産能力の増強ということで、SiCを中心としたパワーデバイスへの投資が大きくなる。ここは積極的に伸ばすエリアということで投資を続けていく」と話しており、先行投資を行って、市場が大きくなるのを待ち構えようという戦略のようだ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。