ステラジアンのレーダ技術により、車載・産業用のセンシングソリューションを拡充
ルネサス エレクトロニクス(ルネサス/本社:東京都江東区、代表取締役社長兼CEO:柴田英利)は8月31日、4Dイメージングレーダ製品を提供するファブレス半導体企業Steradian Semiconductors Private Limited (ステラジアン/本社:インド・ベンガルール、CEO : ギリーシュ・ラジェンドラン)を買収し合併契約を締結した。( 坂上 賢治 )
同買収は一般的な買収手続きを経て、2022年末迄に完了する見込み。これによりルネサスはステラジアンのレーダ技術を獲得。車載及び産業用のセンシングソリューションの拡充を図る。
買収の経緯は、近年の車載分野でADAS(先進運転支援システム)が高度化。これに伴いカメラやレーダ、LiDARなど複数のセンサを組み合わせた高精度なセンサフュージョン技術が求めらている事にある。
特に天候や昼夜など外部環境の制約を受けずに長距離の検出が可能なレーダは、ADASを実現する上での中核デバイスとして今後5年で約3倍に搭載数が増えると予想されている。
そこでルネサスは、車載レーダ市場の成長性を鑑み、ステラジアンを買収し車載レーダ製品を自社のポートフォリオに加えて企業体力の増強を図った。
一方のステラジアンは、2016年の創業以来、常にレーダ技術で高い専門性を有して来た。例えば76~81GHz帯の4Dレーダトランシーバでは、高集積による小型化と電力の高効率化を実現する技術を保有している。ルネサスは今後、こうしたステラジアンの設計資産と専門的知見を活用し、新たな車載レーダ製品を開発。2022年中のサンプル出荷開始を目指す構え。
更に車載レーダ製品とレーダ信号を処理するためのADAS用SoC(System on Chip)やパワーマネジメントIC(PMIC)、タイミング製品、認識用ソフトウェアを組み合わせた車載レーダソリューションも開発していく。これによりレーダシステムの設計の容易化を図り、早期開発に漕ぎ着けていく。
今買収についてルネサスの柴田英利代表取締役社長兼CEOは、「様々なセンサを複合的に利用するADASの実現にはレーダが不可欠です。ステラジアンの優れた技術とエンジニアを獲得する事で、自動車分野に於けるリーディングポジションを更に強固なものに出来ると考えています。ルネサスは今後、このレーダ技術を産業分野でも積極的に活用することにより、中・長期的な事業成長に繋げて参ります」と語った。
対してステラジアンのギリーシュ・ラジェンドランCEOは、「ルネサスの業界をリードする組み込みソリューションのポートフォリオと幅広い顧客層は、ステラジアンのレーダ技術を世界中で活用させる事が出来る最適な場になると期待しています。今後はルネサスの一員として、お客様が切望する高性能かつ小型で低消費電力な先進のレーダソリューションを開発して参ります」と話している。