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2025年2月25日【人事】

トヨタ、監査等委員会設置会社へ移行 社外取締役の人員拡大

坂上 賢治

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トヨタ・本社外観

 

トヨタ自動車は2月25日開催の取締役会に於いて、現行の〝監査役会設置会社〟から〝監査等委員会設置会社〟に移行するを決議した。なお、この決議は来たる2025年6月開催予定の第121回定時株主総会の承認を条件として正式決定される見込みだ。

 

この経営形態の移行についてトヨタでは、「今移行により、取締役会に於ける議決権を有する〝監査等委員である取締役〟を新たに設置します。また取締役全体では10名中5名、うち監査等委員である取締役の4名中3名が独立社外取締役となり、取締役会を構成するメンバーの半数は独立社外取締役となる予定です。

 

モビリティカンパニーへの変革に向け、商品と地域を軸にした経営を実践する社内取締役と、幅広い視点で助言を行うことができる独立社外取締役により、取締役会の更なる活性化を図ります。

 

トヨタは、ステークホルダーの皆さまからいつまでも選ばれる会社であるために、取締役が知見・専門性を最大限に発揮し、目指す未来に向けて、自動車産業を支えるすべてのステークホルダーの皆様と共に成長していくことに資する取締役会が必要であると考えています。

 

この〝監査等委員会設置会社〟への移行により、取締役会を構成する社内・社外のメンバーが役職に捕らわれずに参加者全員で議論を行い、取締役会の更なる活性化を図ると共に、執行への権限委譲による更なる意思決定の迅速化と、取締役会によるモニタリング機能の強化を進めていきます」と新たな経営形態への移行について説明している。

 

ちなみに会社法上で経営形態は〝(1)監査役会設置会社〟、〝(2)指名委員会等設置会社〟〝(3)監査等委員会設置会社〟の3つの経営の姿があり、日本の上場企業で最も多いのが(1)の〝監査役会設置会社〟だ。これは取締役の業務執行を監査する仕組みを内包しているもの。

 

対して(2)の〝指名委員会等設置会社〟は、取締役会に指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置。取締役と執行役を分離した上で業務執行の権限を執行役に委譲。これにより経営の監督と業務執行を分離させている。

 

今回トヨタが導入する〝(3)の監査等委員会設置会社〟は監査役会に代わり、過半数の社外取締役を含む取締役3名以上で構成される監査等委員会が、取締役の職務執行の組織的監査を担うもの。

 

これは先の通りで取締役会で議決権のある「監査等委員となる取締役」を設置できる。監査等委員は取締役会の中で取締役の業務執行の監査を担うもので、取締役の業務執行や会計が妥当であるかを監督する。それゆえ日本国内で一般的な〝(1)監査役会設置会社〟とは異なり、社外人材による経営監視機能により統治機能が強靱化される仕組みといえる。

 

この時期にトヨタが、〝監査等委員会設置会社〟への移行を示した理由は、2024年の株主総会で米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ社( ISS )などが、トヨタグループ内で相次いだ認証不正の責任が、豊田章男会長にあるとして取締役専任案で反対を推奨。

 

これが一因となったのか、総会に於いて取締役再任案への賛成比率が前年総会から約13ポイント減の71.93%に低下したことに対する施策の一環と考えられる。つまり独立した社外取締役を持つ〝監査等委員会設置会社〟の採択により、取締役の独立性を高めることで自社経営方針への理解を促す狙いがあるのだろう。

 

また併せて米国のトランプ新政権による政治の流動化を受けて、持続的な企業成長を推し進めるために、自己資本利益率( ROE )の向上も示した上で、厳しい要求を突きつける海外投資家達からのトヨタ流経営に対しての支持も得たいという想いもありそうだ。

 

トヨタでは「創業以来、創業メンバーたちが国産の自動車づくりに挑戦し、仕入先・販売店などの働く仲間と共に、自動車産業の基礎を築いて参りました。

 

〝自分以外の誰かのために〟〝誰かの仕事を楽にしよう〟という精神で、人々の暮らしと社会をより良くするために、時代を先取りし、研究と創造に取り組んだ姿勢は、〝トヨタらしさ〟の根幹となっています。

 

その〝トヨタらしさ〟を軸に、トヨタはこれまで仕事の進め方や組織の在り方を変革してきました。〝もっといいクルマづくり〟〝町いちばん〟を軸に、自律的な成長と長期的な企業価値の向上に向けて、現場で働く一人ひとりが、自ら考え、行動してきました。

 

また、コーポレートガバナンス体制を構築するため、取締役・役員数の見直しや、顧問・相談役の廃止等を通じて、意思決定の迅速化及び多様な人材の登用を進めてきました。代表取締役および役付取締役の選定は、株主総会後の取締役会にて正式決定します。

 

変化の激しい正解のない時代において、監督機能を強化し執行への権限委譲を行いながら、意思決定を迅速に行ってまいりたいと考えています。今後も、時代に合わせて、取締役の体制は適材適所で柔軟に見直してまいります」と〝監査等委員会設置会社〟への移行を丁寧に畳み掛けている。

 

 

移行後の体制(監査等委員会設置会社)

 

役職/氏名/属性(敬称略)

役職:代表取締役会長
氏名:豊田 章男
属性:  −−

———————————

役職:代表取締役社長
氏名:佐藤 恒治
属性:  −−

———————————

役職:代表取締役副社長
氏名:中嶋 裕樹
属性:  −−

———————————

役職:代表取締役副社長
氏名:宮崎 洋一
属性:  −−

———————————

役職:取締役・<監査等委員>
氏名:クリストファー・ レイノルズ[新任](トヨタ北北米法人幹部)
属性:  −−

———————————

— 以下は社外取締役 —

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役職:取締役
氏名:岡本 薫明[新任](JT副会長・基財務次官)
属性:独立社外取締役

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役職:取締役
氏名:藤沢 久美[新任](現補欠監査役・国際社会経済研究所理事長)
属性:独立社外取締役

———————————

役職:取締役・<監査等委員>[取締役から変更]
氏名:大島 眞彦[新任](三住友井銀行元副会長)
属性:独立社外取締役

———————————

役職:取締役・<監査等委員>[監査役から変更]
氏名:ジョージ・オルコット(投資銀行出身)
属性:独立社外取締役

———————————

役職:取締役・<監査等委員>[監査役から変更]
氏名:長田 弘己[新任](元中日新聞記者)
属性:独立社外取締役

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※早川茂副会長は退任

※代表取締役および役付取締役の選定は、株主総会後の取締役会にて正式決定

 

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。