ソニーグループの十時裕樹社長COO
ソニーグループは9月28日、十時裕樹社長COO兼CFOが傘下のゲーム事業会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の会長に2023年10月付で就任し、2024年4月1日付でSIEの暫定CEOに就任すると発表した。SIEのジム・ライアン社長兼CEOは3月末で退任する。(経済ジャーナリスト・山田清志)
欧州での生活と米国での仕事の両立が困難に
「今回発表した体制は、ジムの意向を尊重する一方で、ゲーム&ネットワークサービス事業の重要性を踏まえ、多くの時間をかけて深く議論し、決定したものである。この事業におけるさらなる成功を、グループ全体の中長期的な成長につなげていく」とソニーGの吉田憲一郎会長CEOは今回の人事について、こうコメントする。
ライアン氏は1994年にソニー・コンピュータエンタテインメントヨーロッパ(現ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパ(SIEE)に入社以来、SIEE社長、SIEのグローバルセールス&マーケティング統括などの重職を歴任し、2018年1月にSIEの副社長、19年4月に同社長兼CEOを就任した。
「入社から約30年が経ち、2024年3月にSIEを退職することを決断した。このとても特別な会社で、自分が好きな仕事をし、優秀な仲間たち、そして素晴らしいパートナーの皆さまとともに働く機会を心から楽しんできたが、同時に欧州での生活と米国での仕事を両立することが困難にもなってきた」とライアン氏。
ゲーム子会社CEO兼任で変革期を乗り切る
一方、十時氏はSIEのCEO就任にあたり、「SIEが担うプレイステーション事業は、ソニーグループ全体の事業ポートフォリオにおいて非常に重要な事業だ。ジムおよびシニアマネジメントを密に連携し、SIEのこれまでの成功を確実なものにするとともに、一層の成長実現に取り組む」とした。
ゲーム事業の2022年度の売上高は3兆6446億円(前期比33%増)と全体の売上高11兆5398億円の約3割を占めるソニーG最大の事業。しかし、営業利益は2500億円と28%減だった。家庭用ゲーム機「プレイステーション5」(PS5)の増産に伴う費用や、ソフトウェア開発費の増加、買収関連費用の計上で収益性が低下していた。2023年度第1四半期(2023年4月~6月)についても、増収減益だった。
文字通り、ソニーのゲーム事業は踊り場と言っていいだろう。また、ゲーム業界はPS5のような据え置き型の専用機からパソコンやスマートフォンのゲームへと移行が進み、ライバルである米マイクロソフトは米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードの買収手続きを進めるなど大きな変革期にある。
十時氏がソニーG本体の社長とグループで中核事業会社の経営トップを兼ねる経営体制で、踊り場を抜け出し、業界の変革期を乗り切ろうというわけだ。