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2024年12月11日【事業資源】

日産自動車、経営再建を視野に役員の異動を実施

坂上 賢治

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日産自動車は12月10日に取締役会を実施。翌11日に2025年1月1日付けの役員人事を発表した。同社では、その目的を〝より効率的で、強靭な事業構造への変革を目指すターンアラウンドに向けた取り組みを推進させる〟としているが、詰まるところ、経営陣の意思決定の遅れによる業績不振が深刻化していることを踏まえ、経営再建を進める姿勢を広くステークホルダーに対して明確に示すことが今人事の本来の目的と考えられる。

 

より具体的な同方策は、CFO( チーフ・パフォーマンス・オフィサー / 最高財務責任者 )などの一部の担当分野を入れ替えたり、海外子会社のトップを交代させる。併せて、経営風土の見直しにも取り組む。なお、来たる2025年4月には経営体制の更なる変更を行い、ビジネス環境の変化に柔軟・機敏に対応できるスリムでフラットな経営体制の構築を目指すともしている。

 

さて今回、その筆頭に挙がったのはスティーブン・マーCFOの移動で、マー氏は中国事業の統括責任者( 中国マネジメントコミッティ議長に就任 )に異動する。その理由としては、同氏の中国に係る豊富な経験と知見。グローバルなリーダーシップの資質を活かし、中国の将来戦略の策定、並びにオペレーションの強化に重点的に取り組んで貰うとしている。

 

マー氏が抜けた後の後任のCFOには、アメリカズマネジメントコミッティ議長のジェレミー・パパン北米日産社長が就く。同氏は、日産及びアライアンス領域で財務、戦略、事業開発畑で長期に経験を積んできた。また、グローバルな自動車業界に重点を置いた投資銀行業務でも10年以上の経歴を有していることから移動を決めたとしている。

 

パパン氏が抜けた後のアメリカズマネジメントコミッティ議長には、日産OBで欧州自動車大手ステランティスの幹部( ジープのCEOとステランティスのエグゼクティブ・コミッティのメンバー )を務めてきたクリスチャン・ムニエ氏を起用する。

 

そもそも同氏は、かつて日産時代に米国、カナダ、ブラジル、そしてインフィニティをリードする役割を担ってきたことから、そうした豊富なマーケティングと販売の経験を以て日産に戻る形となる。

 

なお現在、中国マネジメントコミッティ議長を務めてきた山﨑庄平氏は、日本 ‐ アセアンマネジメントコミッティ議長に就任する。同氏は、競争の激しい中国市場での知見を活かし、日本 ‐ アセアン地域の日産のプレゼンス強化に務めるとしている。

 

チーフブランド&カスタマーオフィサー( CBCO )兼 日本 ‐ アセアンマネジメントコミッティ議長の星野朝子氏は、日本 ‐ アセアン地域の担当を離れる一方で、引き続きCBCOとしてブランドと顧客体験の向上に重点的に取り組む。

 

最後に、CEO就任( 2019年12月1日 )5年を数える内田誠氏は、「今回の役員体制の変更は、会社を再び軌道に戻すための取り組みに必要とされる経験や緊急性を鑑みて行いました。日産は今後も将来の成長に焦点を当て、持続可能な収益を確保するために、これらのターンアラウンドの取り組みを着実に実行していきます」と述べている。

 

ちなみに先の11月2日産が発表した2024年4 – 9月期の連結決算は、純利益が前年同期比93.5%減の192億円となり、世界規模で生産能力を2割、人員を9000人削減するリストラ策。加えて当初は2025年1月と4月に段階的な経営体制の刷新を示すとしていた。

 

そうしたなかで今人事は、見た目の刷新感が薄いことと、見方を誤ると業績低迷の責任を負うべき対象がマーCFOの中国担当への異動となったようにも見え、責任の所在が明確になったとは見え難いようにも映る。

 

また現段階で少なくとも日産に係る大きな課題のひとつは〝稼げるクルマが少ない〟現状であり、主戦場のひとつの米国市場で、在庫解消のための販売奨励金が膨らんでいることも気掛かりだ。当面は、ハードウエアとしての商品力の強化だけではなく、サービス戦略も含めて短期間で、日産ブランドの実質的な競争力をどう強化していけるかに期待したい。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。